農薬について、農業現場から考える
農薬について少し掘り下げたいと思います。
「化学的なものを使わないモノは安心である」というニーズについて先日書きましたが、農業における「化学的なもの」には主に「農薬」と「化学肥料」とがあります。
上記の心理的ニーズを受けて、農薬や化学肥料を使わない有機栽培、無農薬栽培、あるいは肥料そのもの(有機肥料を含む)を使わない自然栽培などの手法を使った農産物が存在しています。
個人的には、農薬はやはり使わないほうが良いと考えています。農薬の有効成分(虫や病気をやっつける為の、農薬に含まれる物質を有効成分といいます)は人体に対して明らかに有毒であると証明されている為、農産物に残留している農薬は「ゼロのほうが良いに決まっている」わけです。当然、取り扱いに細心の注意を払うべきものの為、農薬取締法が制定され、それに準じた使用方法の制限等が設けられています。
http://www.maff.go.jp/…/…/tokutei_noyaku/02/pdf/data11_1.pdf
ちなみに、日本における農薬の使用ガイドラインは、人体に対して農薬有効成分の「1日摂取許容量」を基準に慢性毒性試験(毒性の影響を中長期の視点から試験するもの)を通じて決められている為、残留農薬をゼロにする為の観点から設計されたガイドラインではなく、どれだけ残っていても大丈夫かという観点から設計されたものです。
農薬を使いたいという生産者はいないと思います。では、何故農薬を使うのかというと、仕事として農業を営むにあたり、病虫害によって収穫量や品質、作業効率が低下する事は生産者の生活リスクにダイレクトに影響するからです。
僕は生産者の立場にいる人間ではあるのですが、野菜を買って食べるお客さまからすると、そんな事ははっきり言って関係ないと思っています。良いものを出来る限り求めやすい値段で買いたいというのは当たり前の要求であり、生産者としては(生産者から見れば一見お客さまの自分勝手に見えるかもしれませんが)しっかりとその要求に向き合うべきだと考えています。
何故なら、病虫害は確実に「栽培技術」によって低減が可能だからです。生産者は、人の口に入るモノを作る立場として、もっとこのポイントに向き合う必要があると思います。お客さまからすれば「農薬を使うということは、栽培技術が未熟なのですよ」というぐらいに生産者を(良い意味で)突き上げる事もあって良いかなと考えます。
栽培技術についても、基本的な部分は今後どんどんオープンにしていければと思います。
また、現在「無農薬栽培」「減農薬栽培」という表記は使えないルールになっています。農林水産省が農産物表示に関するガイドラインを設けています。
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/tokusai_03.pdf
特に露地栽培の場合は、仮にその生産者が農薬を使わない栽培をしていても、近隣の生産者が農薬を散布している場合は風などによる飛散リスクがあり、一概に当該農産物の残留農薬がないとは言えないです。さらに、畑の土を使っている場合には、その土における残留農薬、あるいは近隣の農地から地下水を経由して農薬が浸み出してくる可能性もあり、やはり定期的に農産物の残留農薬を試験する必要があります。
以上を踏まえて、当方のゆる野菜ではとにかく農薬を使わないことにこだわっています。また、(ビニールハウスの閉鎖空間で、かつ畑の土を使わない栽培ではありますが)定期的に食品分析をかけて残留農薬の試験も行います。