りんごのサラダ(ぜんぶ夢)
なんでも、遅刻している最中である。
バイトが始まる時間なのに、まだ家を出る準備が出来ていないことはよくある。こういう時は、気付いたときにすぐ用意に取り掛かるのが最善で、肝心である。
遅刻しているときは忘れ物もするのがセオリーであるから、スケジュール帳を開いて今日の予定を確認する。
今日が何月何日なのかはわからないけど、確認は大事だからね。
今日の日付の欄には、「11:15」という時刻と「りんごサラダ」という文字が書いてあった。
ちなみに昨日のところにも何か予定が書いてあったけれど、昨日その用事をこなした記憶が無い。すっぽかしてしまったようで、胃の底を冷やしながら、とにかく今は今日の予定の方に注目した。
りんごのサラダというのは、あまりメジャーでは無いのかもしれないが、まぁ美味しい。
千切りにしたキャベツや人参なんかにコールスロー系の味付けをして、皮ごと薄く櫛形に切ったりんごを混ぜる。
そうすると、りんごの甘酸っぱいのがアクセントになるし、彩りも良くなる。少し特別な日のためのおしゃれなサラダである。
個人的には、食感のしゃくしゃくとした感じも好きだ。
りんごは特に紅玉を使うと良い。
紅玉といえば、酸味が強いのが特徴で、多くはレーズンと一緒に煮たりコンポートにしたりして、加熱してお菓子に使われる。
で、紅玉は生のままでサラダに入れても美味しい。特徴的な酸味が映えて、ミルキーなコールスローがさっぱりとした味わいになる。
……というりんごのサラダの話を以前バイト先でしたところ、ぜひ食べてみたいと言われて、今度会う日に作っていくことになっていた。
それが今日の予定「りんごサラダ」の概要である。
スケジュール帳を見るまで、そんな約束をしていたことをすっかり忘れてしまっていた。最低。
既にバイトには遅刻しているのだが、りんごサラダも作らなければならなくなってしまった。
いや、でも今優先するべきはバイトなのであって、りんごサラダのことは後日にするべきではないか?
そうだ、とにかくバイトに行こう。そうしよう。
服を着替えてリビングに行くと、テーブルの上にタッパーが置かれている。中身を見る。
りんごサラダが作ってあった。そういえば昨日作ったのだった。しかも昨日の予定はりんごサラダを作ることだったよ。なんだ、よかったね。
なんでこんなにも忘れっぽいのかなぁと思いながら、タッパーをかばんに入れて家を出発した。
(後書き : りんごのサラダを食べたことはありません。りんごサラダに関する内容は全て想像です。)