ある朝の夢うつつ
朝は6時半に一度目が覚めたけれど、急ぐ用事も無いので二度寝をした。
起きてからリビングに行くと、今日は休みだと言っていたはずの母が出掛けているようである。
どこに出かけたのだろう、と思っていると、ちょうど携帯がメッセージの受信を知らせる。
母は、今日と明日、北海道へ行っているのだった。これから回る予定の場所のことと、写真が送られてきている。
すっかり忘れていた。
今日は雨が降っている。
夕方、小学生を相手に算数を教えるバイトのあと、窓の外の雨を見ているときに気が付いたのだけれど。
母が北海道にいるのはおかしい。
これは夢だ、と思うと、急に頭の後ろにある枕の感触が戻った。
目が覚めた。
二度寝したので、さすがに起きなければならない。顔を洗いに行こうと部屋を出る。
キッチンには母がいて、やっぱり旅行には行っていなかった。
青いモザイクタイルが敷かれた洗面台の前に立つ。
顔を洗って拭いてからすぐそこの歯ブラシを手に取ると、ブラシの毛が全て抜けている。あらまぁ。
長いこと使っていたから、寿命か。
新しいものを取り出すことを考えてふと気がついたのだけれど。
ここはうちの洗面台じゃない。
あぁ、これは夢なのか。
起きなければならないと思って起きたところなのに、もう一度目を覚まさなければいけないのか。
仕方が無いので、今の立っている姿勢は幻覚だと、本当は仰向けになっているのだと思い込んで、背中にマットレスの感触を取り戻した。
今度こそ目を開けたと思う。
戻ってきた安堵感に瞼が重くなり、草原に身を投じた。