左利き彫金あるある(後編)リューター、ノギス
左利き彫金あるある(前編)単目ヤスリの続きです。
リューターの回転が逆になる
リューターとは一般的にハンドグラインダーと呼ばれ、先端工具(ビット)を取り付け、回転させて削ったり磨いたりする道具です。
反時計回りに回転します。
右手で使った場合、横から見るとこうなります。
職人の手の動きはこうです。手前に引きながら削ったり磨いたりします。
先端工具の回転=自転車のタイヤの回転
職人の手の力=後ろから自転車を引っ張る手の力
に置き換えて考えてみましょう。
タイヤが回転する方向と、引っ張る方向が逆ですね。
2つの力はお互い反発し、道とタイヤの間には大きな摩擦が起きます。
摩擦が大きいほど金属に強い負荷がかかり、ガリガリ削れたり磨けたりします。
では左手で使った場合を考えます。
リューターは反時計回りです。
手の動きも、手前に引きながら作業します。
ここで問題が起きます。
右手で作業する時とは異なり、タイヤが回転する方向と引っ張る方向が同じです。
2つの力は反発することなく、スムーズに動きます。
摩擦がないということは、金属に負担がかからない=金属が削れないということです。
実際には手で押し付ける負荷がかかっているので、全然削れないという訳ではないのですが、やっぱり効率は悪くなります…
リューターには逆回転機能が付いているものがあります。
いえいえ。
シリコンポリッシュや砥石ならそれで解決なのですが、ロータリーバーや超硬カッターのように刃の向きがあるものは、逆回転させちゃうと全く削れなくなってしまいます。
また、同じリューターを複数の職人が使う場合、逆回転設定のまま右利きの方が使うと先端工具がすべって思わぬミスが起きる可能性があるのです。
なので職人W氏は、正回転のままリューターを使っています。
ガリガリ削りたい時は手を上に向かって動かして、摩擦を強めるようにするそうです。
なんと不便な…そして器用な。
おまけ★ノギス
個人的に、これに対しては急須と同じ種類の怒りを感じます。
これは右手で使うとすごく便利なのですが、左手で使うと文字が逆さまになるし、そもそも左手ではスライドもしづらいんです。
右手:スライドもスムーズで目盛りも読めます。
左手:スライドしづらいし目盛りが逆さまに…
左利きだけどノギスは右手で使うっていう方、多いんじゃないでしょうか?
ということで、彫金工具というちょっとマニアックな視点から左利きあるあるをお送りいたしました!
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