【豊かな海のまもり方⑥】 東京サステナブルシーフード・サミット(TSSS)2024を開催して
みなさま、こんにちは。
シーフードレガシー創立者CEOの花岡和佳男です。
先日、東京国際フォーラムにて、第10回目の東京サステナブルシーフード・サミット(TSSS)を開催しました。
まずは何よりも、このムーブメントの主役であり立役者であるステークホルダーの皆様、TSSS2024にご登壇・ご参加・ご支援いただき、誠に有難うございました!
おかげさまで史上最高の大盛況となり、のべ約1000人で埋め尽くされた会場は、2030年へ向けた活気と熱気に包まれました。
プログラムやスピーカーなどはこちらから。
今年のTSSSでは、最初は「魚から考える日本の挑戦」という小さな灯火から始まったこのムーブメントが、この10年で「サステナブルシーフードを主流に」を目指せるほど大きく骨太なものに成長したことを、皆様と共に確認しました。
そしてこのテーマのもと、水産分野におけるネイチャーポジティブ、食料安全保障、衡平性を追求する動きが、この先、日本を中心にアジア圏でますます活性化していくことを、皆様と共に確信しました。
閉幕してから3週間が過ぎますが、今でも皆様からたくさんの嬉しいご連絡や、新たな出会いの機会を次々といただいています。有難うございます!
TSSS2024のハイライト
HIGHLIGHT 1: ムーブメントの10年年表
10回目の節目開催となった今回のTSSS2024では、大きな会場の中心に、日本のサステナブルシーフード・ムーブメントのこれまでの10年の軌跡を辿る、巨大年表を建てました。
環境持続性や社会的責任を追求する企業数が増え、認証商品取扱量の増加のみからデューデリジェンスやディスクロージャーの充実へと、アプローチが広がってきたことが読み取れます。
また、70年ぶりとなる漁業法の大改正や、本邦初となる水産物の流通を管理する法律の成立など、この10年で政策面で起きたかつてないパラダイムシフトと、その波及効果についても記されています。
さらに近年では、過剰漁業、IUU漁業、人権侵害において改善が見られない事業への投融資を中止する方針を日本のメガバンクが発表するなど、金融セクターでも大きなうねりが起きてきています。
10年の軌跡はこちらでもご覧いただけます。
HIGHLIGHT 2: スクリプトなしの生セッション
3日間開催のTSSS2024はこの10年史を基礎に、初日は市場流通、中日は政策、最終日は金融の切り口から、過剰漁業、IUU(違法、無報告、無規制)漁業、人権侵害の問題に切り込みました。
あるセッションでは、初登壇の国内業界団体の会長が、事前準備のスクリプトを読み上げることを途中でやめて、自分の意見と生の言葉で議論に参加してくださりました。霧を晴らす力強い言葉で、会場全体が、現在(現状)と未来(理想)との間でスムーズに重心移動できるようになりました。
別のセッションでは、市民組織の登壇者と政府関係者が、会場を巻き込んでバチバチの応酬を展開されました。言うべきことは言って、でもお互いへのリスペクトは欠かずに、マルチステークホルダーが本気で足跡を重ね道を固めてゆく姿が、聴衆を前のめりにさせました。
HIGHLIGHT 3: 2030年GOAL
シーフードレガシーが掲げるセオリーオブチェンジの中核は、創立以来一貫して、「水産市場のバイイングパワーを生産現場における改善のインセンティブに」というものです。私達が2030年目標として掲げ、今年のTSSSのテーマにも設定した「サステナブルシーフードを主流に」は、このセオリーが実現した理想社会の姿をイメージしています。
その理想社会では、すべての生活者が毎日の食事で、未来世代への負荷を気にせず、豊かな水産物を安心して味わうことができています。また、大規模漁業だけでなく、多魚種多漁法を特徴とする家族経営規模の沿岸漁業にも後継希望者が列をなし、津々浦々の漁村地域社会が活気に満ちています。
TSSS2024の会場には、この2030年目標への賛同を募るパネルも設置しました。「一つ一つの力は小さくても協働することで大きな目標を達成できる」ということを表現したくてスイミーになぞらえたデザインにし、来場者のほぼ全員から賛同表明をいただきました。
TSSS終了後、このパネルはシーフードレガシーのオフィスに運ばれ、私たちの仕事空間を鮮やかな未来色に彩っています。皆様、もしTSSSの時の興奮を思い出したくなったり、皆様のお仲間にも賛同表明いただきたい際は、ぜひ弊社オフィスにお越しください!
TSSS2024のネクストフェーズ
私は毎年、TSSSのトータルプロデュースをしています。今年のTSSSでは、この10年間の皆様の努力と成果をワンフェーズにまとめました。そしてもう一つ。次フェーズにおける幾つかの狼煙を皆様と共に上げることにも成功しました。
NEXT PHASE 1. アカウンタビリティの確保
生活者が未来世代への負荷を気にせずに水産物を購入できる市場にするには、関連企業が過剰漁業、IUU漁業、人権侵害への関与をなくし、それを証明するアカウンタビリティを確保していくことが必要です。
このムーブメントの次のフェーズでは、取り扱う全ての水産物のアカウンタビリティを確保する手段である、トレーサビリティ、デューデリジェンス、ディスクロージャーのパッケージに、今以上に注目が集まります。
NEXT PHASE 2. アジア圏でのマーケットトランスフォーメーション
例え日本市場が過剰漁業、IUU漁業、人権侵害由来の水産物を完全に排除しても、それを近隣市場が無責任に調達するようでは、生産現場での問題解決には至りません。
そこで、このムーブメントの次のフェーズでは、東アジアや東南アジアにおける振興水産市場でも、この10年で日本市場で起きたようなマーケットトランスフォーメーションが展開されます。
日本市場は、「アジア圏で最もサステナブルでエクイタブルかつアカウンタブルな水産市場」として、アジア圏における責任市場の成長を牽引する役割を担わなくては、その衰退化に歯止めをかける術をいよいよ失います。
NEXT PHASE 3. 生産現場のシステムチェンジ
日本の生産現場に必要なのはシステムチェンジであり、そのための水産予算の再配分。それを本当に実現させるには、生産現場のステークホルダーがビジョンを共有し、協働体制を強化させることが欠かせません。
このムーブメントの次のフェーズでは、特に、漁業法改正時に導入された小規模沿岸漁業の自主管理の形である「資源管理協定」の成果が問われます。
数値目標、行動計画、その進捗における透明性を確保し、成果が認められたものだけに国が補助金をつける形を徹底して構築していけば、津々浦々の漁村地域社会に夢や志を持つ担い手が増えていくでしょう。
TSSS2024の開催後記
TSSS2024の閉幕時に、来年は万博とリンクする形で大阪で開催することを発表しました。それから3週間が過ぎましたが、早速、万博でパビリオンを持つ複数の政府や企業等から、コラボレーションのご相談をいただいています。
またこの3週間、シーフードレガシーは、メキシコのカンクン、スコットランドのセントアンドリューズ、中国の青島で開催された関連イベントにご招待いただき、登壇したりネットワーキングイベントに参加したりして、TSSS2024の結果を海外ステークホルダーの皆様に共有してきました。
日本で想像するよりも何倍も多い海外のステークホルダーが、日本のこのムーブメントに注目しています。この国際的な期待も、今後ますます向かい風として活かしていきたいですね。まだ課題山積ですが、皆様と歩みを共にしていくことで、ご賛同いただいた2030GOALを必ず実現できると、シーフードレガシー一同は確信しています!
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