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黄金バットのストーリー
黄金バットのストーリー
兄が2020年、コロナ禍で迎えた高校野球最後の年に使っていたバット。手術明けの身体でリハビリもままならないままに迎えた夏の代替大会。甲子園はない、その中で仲間と1日でも長く野球をしたいという一念で過ごした夏。
初戦、強豪との試合で放った左中間最深部への同点ホームラン、大逆転のその試合を最後はリリーフでその試合を締めて勝利を手にした。
そしてベスト8で敗れ、彼の高校野球は甲子園を目指せずに終わった。誰もこんな終わりを想像しなかった。
翌々年、入れ替わるように弟が同じ高校に入学。主将になり迎えた2年の秋。この大会で金属バットの規格が変わることを受けて、弟は兄のバットをケースに入れて春の選抜を目指した。
4年前に兄が使い倒したバットなのでいつ割れるかわからないと、2回戦から1試合1打席だけそのバットを使っていた。勝負どころでケースからそのバットを出して打席に臨んだ。
2回戦、得点圏にランナーを置いてヒット。
3回戦、大逆転の試合に勢いをつけるセンターオーバーのタイムリー2ベース。
準々決勝、またも大逆転の試合の貴重なセンターオーバータイムリー2ベース。この3試合は兄がホームランを打った球場、その時と同じようにセンター最深部に打球が次々飛んでいった。
準決勝、舞台を神宮球場に移し、試合は負けたが、最後の打席、敗色濃厚な中で放った意地のホームラン、このバットが最後に放ったのは兄と同じような高々と放物線を描くホームランだった。
野球には色んな不思議な出来事が起こる。このバットは間違いなく思いを乗せる効能があった。
弟のこのバットの秋季大会の成績。
4打数4安打。
2塁打2本、本塁打1本。
打点3。
打率10割。
得点圏打率10割
長打率 2.250(22割5分)
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