【談話】出入国管理及び難民認定法改正案の取り下げを歓迎する
2021年5月18日 社会民主党幹事長 服部 良一
⒈5月18日、政府・与党は衆議院法務委員会で審査中だった「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」を取り下げる方針を固めた。5月14日までの修正協議が決裂し、採決強行を警戒する立民、共産、社民3党が義家弘介衆院法務委員長の解任決議案を衆院に提出していた。18日の衆議院本会議でこれを否決したうえ、法案の採決を強行するものと見られていた。
⒉同法案は、①収容に代わる監理措置制度の創設、②難民申請者に対する送還停止の効力を2回目までに限る、③送還に応じなかった者に対する退去命令と送還忌避者への刑事罰の創設など、多くの内容を含むものとなっている。庇護を求める人を迫害の危険の及ぶ地域へ送還してはならないという国際ルール(ノン・ルフールマン原則)に反し、人権擁護の観点から極めて問題が多いものであった。
⒊本年3月、名古屋出入国在留管理局施設でスリランカ人女性が死亡した事件について、真相究明が求める声が高まるなか、このまま法案の成立をはかることは野党や市民の理解が得られないとの判断から、今国会における成立を断念したものと思われる。もともと問題の多い日本の入国管理制度をさらに改悪する無理筋の改正であったが、野党・市民の批判を受け入れた法案の取り下げを社民党として歓迎したい。
⒋今回の改正案については、国連人権理事会の特別報告者から「人権保護の観点から国際的な基準を複数の点で満たしていない」と指摘されており、憲法及び国際法の研究者ら124名からも「日本の入管収容の在り方を改善するどころか、さらに悪化させる」とする反対声明(5月11日)も発出されていた。今後、出入国管理・難民認定制度の見直すにあたっては、国際社会や専門家の声に真摯に耳を傾け、収容の決定に司法を関与させるなど人権軽視との疑念を持たれないような内容とするべきである。
⒌現に収容施設で死亡事案が相次いでいるなかで、本改正案の採決を強行することは許されることではなかった。法案の取り下げで幕引きすることは許されない。スリランカ人女性の死亡事案の真相解明を行ない、難民条約等の国際人権法や憲法の理念に適った入国管理・難民認知制度の改正を行なうことを強く求めたい。
以上