科学雑誌を素人が読む[490]
『ネイチャー』には「私の仕事場」(Where I Work)と題する、研究者が自らの研究について、研究環境の中に収まった写真付きで一人称で語るページがある。1ページもので、プロテクトもかかっていないことから、多くの読者に読んでもらいたい企画なのだろう。
研究者は自らの研究の価値を一般の人たちにいかに語りうるのだろう? という興味からいろいろ学びがある。小難しい専門的な話は最低限――というかページ面の半分が写真なので、必然的にテクストの文字数は限られる。使われている英語も平易。
2021-10-28号の同ページでは、理論物理学者――視力障害をもつ――が語っている。物理学の最先端、量子世界の概念は素人には想像することがとても難しい。イメージが浮かばない。あらゆる感覚の「王様」と言われる視覚に障害のある研究者なら、むしろ晴眼者(目の見える人)には想像できない物理学的イメージを提出してくれるのではないか? などと期待してしまう。
パンデミックによってバーチャル会議に切り替わったことが研究者の彼女にとってはプラスに作用した面があるとの記述がある。なぜなら、リアル会議ではスクリーンに投影されるプレゼンのスライドを、手元のモニタで拡大しつつ見ることができるから。なるほど。
「水素原子の電子と陽子が量子レベルで絡み合っていることを示す論文を共著で発表した」と最後に書かれている*¹。え? どういうこと。そちらも気になる。■
【追記】
✅『ネイチャー』2021-10-28号[URL]
✅「私の仕事場」(Where I Work)ページ[URL]
✅氏が運営する、学術界における視力障害者のためのヒントやリソースを提供するサイト[URL]
✅視覚障害者は英語で「visually impaired person」、略して「VIP」というらしいことを知る。
✅*¹[原文]In 2020, I co-authored a paper showing that electrons and protons in hydrogen atoms are entangled at a quantum level (S. Qvarfort et al. New J. Phys. 22, 093062; 2020).
✅論文「水素におけるエンタングルメント」(Hydrogenic entanglement)[URL]がその論文のもよう。