科学雑誌を素人が読む[493]
米国先住民(アメリカン・インディアン)が受けた強制移住の歴史に関する論文が『サイエンス』2021-10-29号に掲載されている。科学は科学でも社会科学の研究。この雑誌は「アメリカ科学振興協会(AAAS)」の機関誌でもあるからこういう論文も掲載されるのだろう。
論文のタイトルは「北米先住民に土地収用および強制移住が与えた影響」。まずは解説記事「先住民族の強制移住を記述する」を読んでみる。
人々の「移動の歴史」と聞いて、ゲノム塩基配列を読み取って比較を行ったりしたのか? と思ったらそうではないらしい。引用――
追放された個々の部族がどのようにしてある地域から別の地域に移されたのかについて多くのことを教えてくれる、過去に類を見ない大規模なデータセットを著者たちは記述・分析している。長年にわたって知られていたものの、膨大な作業のために統合されていなかった情報源が今回活用された。*¹
「大規模なデータセット」という表現に注目する。データではなくデータセット――さまざまなデータを組み合わせて分析したということと推察する。例えば具体的にはどんなデータが使われたのか気になる。
社会科学系の研究というのは「一回きり」の出来事を対象とすることが多いガクモンであるという印象を持っていて、多くの自然科学の研究のように、繰り返し現れる現象を対象とするわけではないので、その論文の結論(というか解釈)を読み手としていかに面白がれるのかというチャレンジのしがいがある。再現性・普遍性は度外視してどれだけ興味をもって読めるか、と素人の科学ファンの一人としては思ったりする。■
【追記】
✅『サイエンス』2021-10-29号[URL]
✅論文「北米先住民に土地収用および強制移住が与えた影響」(Effects of land dispossession and forced migration on Indigenous peoples in North America)[URL]
✅解説記事「先住民族の強制移住を記述する」(Documenting Indigenous dispossession)[URL]
✅*¹[原文]On page 578 of this issue, Farrell et al. describe and analyze a first-of-its-kind large dataset that can tell us much about how each displaced tribe was removed from one area to another. The authors drew on sources of information that have been known for many years but that had not been integrated because of the enormous task involved.