
科学雑誌を素人が読む[455]
一昨日 手元に届いた『サイエンス』2021-09-10号の冊子をブラウズしていく。注目論文を短く紹介する「リサーチ」のページに「賢いタコの発生」(Brainy octopus development)という文章が掲載されている。ん? タコの仲間に賢いモノとそうでないモノがいるのかと思ったらそうではない。タコという種がそもそも賢い種であるということらしい。動物好きとしてはこの記事を素通りするわけにはいかぬ。
紹介文には、タコは「並外れた知性を進化させてきた」(...have evolved extraordinary intelligence)とある。論文の要旨にも、「頭足類はニューロン(神経細胞)の数や行動出力の豊かさの点で、哺乳類の脳の複雑さに匹敵する神経系を進化させてきた。」*¹と書かれている。興味深い。
今回の報告は、タコ脳の初期発生を分子レベルで追った研究のようだ。遺伝子やタンパク質の名前が論文には見える。
やはりまずは、タコにみられる実際の「驚くべき」知性のありかたをまずおさえておきたい。タコの知性については、いろいろな本が出ていることがわかった:
●『タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物』(太田出版2014)[URL]
●『愛しのオクトパス 海の賢者が誘う意識と生命の神秘の世界』(亜紀書房2017)[URL]
●『タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源』(みすず書房2018)[URL]
●『タコは海のスーパーインテリジェンス 海底の賢者が見せる驚異の知性』(化学同人2020)[URL]
海中に生息するタコは無脊椎動物でもあるし、霊長類(脊椎動物)の神経系とはそもそものところからして「つくり」が違う――神経細胞の3分の2が腕にあるとか(どういうこと?)。上記の本を読んで、基礎知識を仕入れたい。それから再び今回のミクロ系の論文に戻ってこよう。そのときにはさらに興味深く読めるようになっているだろう。個人的には、環境の違いによる「知性の進化」のとりうるルートに興味がある。■
[追記]
✅*¹[原文]Cephalopods have evolved nervous systems that parallel the complexity of mammalian brains in terms of neuronal numbers and richness in behavioral output.
✅今回の論文が掲載された『eLife』は最近存在感を増しつつある学術誌のようだ。いろんなところで掲載論文が紹介されている。どこに秘密があるのか探ってみたい。
✅タコについて短い動画を見つけた。ロンドンの自然史博物館制作のもの。