科学雑誌を素人が読む[487]
『ネイチャー』のホームページを眺めていたら「世界中の研究論文を網羅する巨大かつ無料で利用できるインデックスをオンラインで公開」(Giant, free index to world's research papers released online)というニュース記事に遭遇した。科学と言葉に関心を寄せる者としては大いに興味をそそられる。
どういうプロジェクトかというと、検索ウィンドウに調べたいフレーズ(英語)を打ち込むと、そのフレーズを含む科学系の文献(論文および書籍) 、TVニュースの字幕、ラジオ放送の書き起こし、などのアーカイブにヒットがあれば出力が返ってくるというもののもよう。その名も「ジェネラル・インデックス」(General Index)。例えば引用文の出所が判明する。
特筆すべき点は、対象となる文献について「有料ジャーナルに掲載された論文も対象となる」あたりか。Google検索にはない強みといえる。学術機関に所属していない科学ファンにはとてもありがたい。
なにはともあれ実際に使ってみる。アーカイブされているテクストは現時点で2000年代初頭あたりまでのようなので(詳しくはわからない)。手元にある紙媒体の英文の科学テクストで古めのものを探してみる。
そういえば『ネイチャー』の創刊号のレプリカを以前入手したことを思い出す――1869-11-04号。適当にフレーズをひろってみよう。p.23に三畳紀の恐竜(TRIASSIC DINOSAURIA)に関する論文(らしき)テクストがあって、その冒頭の文 "It will probably interest geologists"を検索窓に入れて、[text contents]を選択して[GO]を押すと確かに該当誌がヒットする――成功。でもまあ『ネイチャー』ほどになると創刊以来の全テクストがデジタル化されているわけで、どうしても調べたければ『ネイチャー』のサイトの検索窓を使えばいいことになる。それでも、引用文の出所が不明な場合、このサイトは大いに役立つことになる。
他にいい例がないかなと思ってなおも書棚の英語テクストを漁っていたら、昨年入手した、英国の中学生が昔使っていた理科教科書の古本『GCSE Science』(2006)がある。そのp.101に掲載されたインフルエンザに関する単元の冒頭文「Tom is weighing up the pros and cons」をまずGoogleで検索したところヒットしなかった。まあ教科書だからな。ところが「ジェネラル・インデックス」の検索窓に入れて検索してみるとヒットした。おお、すごい[出力結果]。これはいろいろ遊べそうだ。■
【追記】
上記のほか、書棚の洋書を引っ張り出していろいろ試しつつある。本文中のフレーズをたどることのできたものとして、✅雑誌『National Geographic』(ナショナル・ジオグラフィック)1988-08号、✅1985年刊のペーパーバック『Surely You're Joking, Mr. Feynman!』(ご冗談でしょう、ファインマンさん)、✅1995年刊の趣味系の本『Making the most of work spaces』(仕事空間の作り方)、✅2007年刊の写真集『The nature of photographs』(写真の本質)などの一節がヒットした。アーカイブされているテクストデータは科学系ばかりではないようだ。