科学雑誌を素人が読む[486]
「モノが浮くことの」科学――
『サイエンス』2021-10-08号には、総説論文「浮揚系力学――真空中における微小物体の浮上と制御」(Levitodynamics: Levitation and control of microscopic objects in vacuum)が掲載されてる。〈Levitodynamics〉というのは未だ確立途上にある学問ジャンルとみた(検索してもあまりヒットしない)。「levitation」という語が「空中浮揚/浮遊」といった意味なので「浮揚系力学」という訳語をあててみた。
要旨を読んでみると、現時点での浮揚系力学の範囲は「真空中におけるマイクロ粒子やナノ粒子を光学的手法でコントロールする」あたりにあるもよう――未だ微小な世界の話。光のほかに電気や磁気によってモノを浮かび上がらせる試みも進んでいるとのこと。
この「物を浮かべる」というところに注目して素人なりに勝手に想像を膨らませてみる。ミクロの研究の先の先に、マクロの物体を空気中で容易に浮かべることができる技術が発展したら、そこには例えば、スーツケースやスケートボードへの応用が考えられないか?(卑近な例だけど) 地面との摩擦によって耳障りな音を立てるこれらの器具を、例えば金属を練り込んだ通路などにおいて、空中に数マイクロメートルでも浮かせることができれば世界はささやかに静かになるはずだ。■