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科学雑誌を素人が読む[463]

週刊科学雑誌『ネイチャー』2021-09-30号に掲載された論文のラインアップを眺める。全17本。掲載順序をシャッフルしたタイトルを並べてカード化した(訳は『ネイチャー』 日本語ページから引用、B7用紙に出力可能):

【ピックアップ】
✅④極めて異方性の高いファンデルワールス熱伝導体論文]➣〈異方性〉という語に注目する。ナノスケールという極微の世界において、熱の伝わり方に方向性があるという話らしい。興味深いではないか。

✅②一般化された二次元ウィグナー結晶の画像化論文]➣〈画像化〉という語は、物理学でも生物学でも論文のタイトル中によく見かける。なぜ画像化する必要があるのか? と考えてみるに、注目現象のふるまいが未だよくわかっていないという状況があるのではないか?とにらむ。その場合、まずは対象の存在様式というか「あり方」をはっきりさせる/目に見えるようにする/画像化する/ことで、手を加えうるスキマを見つけたい、とか、対象現象の従うメカニズムを大枠で眺めたい、とかいった欲望が背後にあるのではないか? などと素人は考える。逆に言えば「画像化」という語がタイトルに含まれるような研究は未だ揺籃期ようらんきにあると考えてみてもよいかもしれぬ。

✅⑨花粉媒介者は顕花植物の多様性維持に寄与する論文]➣生態学の論文。動詞「寄与する」は肯定的な印象を受ける。ダイバーシティ礼賛。同じ「媒介者」でも、ウイルスの媒介者なんか(コウモリとか?)は否定的な/忌み嫌われるニュアンスをもって語られるのとは大違いだなあと思ったり。

✅⑩皮質介在ニューロンの発生におけるゲノムとエピゲノムの協調論文]➣そもそもどうして〈介在〉ニューロンが存在するのだろうなあと考えることがある。細胞Aと細胞Bのあいだに割って入る/介在する/細胞はどうして必要なのだろう(=進化の過程で残ってきたのだろう)? その存在意義を考えてみるに、介在することで、細胞集団間を走る情報の流れを遅らせたり、エフェクトをかけたりしているのかなあとか。敢えてシグナルの流れを遅くすることで、その「余計な」プロセスにおいていろいろな調整が効きそうではある。

✅⑥レーダーの深層生成モデルを用いた巧みな降水ナウキャスティング論文]➣気象現象という複雑系の展開を予測する新手法の紹介として読めるか。〈生成的〉(generative)という語のニュアンスが気になる。ここが理解の要のような気がする。そして「ナウ」予測があるのなら「ファー」予測への取り組みもありそうだ。➣エントリ[460]で言及。オープン論文。

✅①初期の火星における渓谷の切り込みに対する湖の決壊による洪水の重要性論文]➣エントリ[460]で言及。関連してアタマによぎるのは、現在火星上で展開中の探査機「パーサヴィアランス」は、かつて湖であったと考えられているクレーターに着陸し、周辺の岩石サンプルをせっせと集めているはずということ。なぜ湖の跡地かというと、そこには生命体が過去に生息していた可能性があるから。その痕跡が得られるかもしれぬ。➣エントリ[427][437]で言及。■

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