科学雑誌を素人が読む[453]
『ネイチャー』2021-09-23号の目次が公開された。カバーストーリーは、超小型の飛行体を作製したという報告。論文タイトルは「風散布種子から着想を得た三次元電子微小飛行体」(Three-dimensional electronic microfliers inspired by wind-dispersed seeds)というもので、「~に着想を得た」(inspired by...)という文言から、なんだか寺田寅彦の科学っぽいなと思って興味を抱いた。「風散布種子」とはここではカエデのタネなどを指すもよう。
YouTubeに関連動画がある。まずはこれを眺めるのがよさそうだ。
あわせて解説記事のPDFを日本語ページからダウンロードしてB4サイズに印刷して手元に広げる。動画をリピート再生しつつテクストに目を滑らせていく。
作製された微小飛行体の略図に目が止まる。上空から風を受けてひらひらと舞い落ちてくる植物の種に発想を得た形状というのはこれか。この微小飛行体が空中を「飛ぶ」――というか(広範囲に)「散らばる」というのが眼目のもよう。飛行体の中心にはセンサーやら、コントローラーや、ワイヤレスの測定デバイスなどを積み込めるとある。そして電池不要で動作する(その仕組みが気になる)。
論文要旨には、小型化された無線電子機器が使われる場として、環境モニタリング、人口監視、疾病管理などが挙げられている。今回の微小飛行体の場合、具体的には「環境測定用の電池を使用しない無線デバイス」などとしての利用を著者らは想定しているおうだ。なるほど――結構。
けれども、Q氏のアタマには別の応用例が浮かぶ。この技術は「兵器として使われる」のではないか? 観測機器の代わりに超小型爆弾を積めば、空から(例えばドローンから)広範囲に散布される”地雷”のような兵器となるのではないかと推察する。爆発物/有毒物質の投下以外にも、戦場の環境/状況モニタリングに使えたりもするだろう。解説記事(あるいは論文本文)にその旨の言及があるだろうか?――ないだろうな。
まずは解説記事を詳しく読み込んでみたい。新しい技術に関する論文は、その著者も想定していない応用分野を想像しつつ読むのが楽しい。もし今回の技術が軍事転用の可能性があるのなら、それを無力化する方法についても考える。■
[追記]
✅「~に着想を得た」系の研究については、エントリ[133]でも軽く言及していた。
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