車両電装2
今回のスーパーダイアグレッスンは、車両電装2をお届けします。
内容は7つのレッスンに分けて進めていきます。
レッスン 1 回路構成およびパワー・サプライ方式
レッスン 2 パワー・ディストリビューションの基本
レッスン 3 プラットフォーム専用のパワー・ディストリビューションおよびシステム制御
レッスン 4 ドライバー・ディスプレイ
レッスン 5 ドライバー・インプット
レッスン 6 ビークル・エントリ&セキュリティ・システム
レッスン 7 ドアシステム
レッスン 1 回路構成およびパワーサプライ方式
電気信号を伝送して最終的に各種デバイスを作動させるため、特徴的な2種類のアーキテクチャであるスタンドアロンシステムと分散システムが採用されています。
スタンドアロン・システムとはどんなシステムでしょうか
スタンドアロン・システムは、標準的というより例外的なシステムになりつつありますが、現在でも採用されていますが、単純な電気回路のようにコントロールモジュールを全く持たない機器、または1つのコントロールモジュールを使用して1つのコンポーネントまたはシステムを制御する機器です。
モジュールがバス・システムに接続されていることもありますが、その目的は診断機能に限られます。
最も使われている、スタンドアロン・システムの例はフューエル・フィラ・リッドです。
フューエル・フィラ・リッドは、コントローラを持たないスタンドアロン・システムの典型的な例で、回路構成では、ヒューズを介したバッテリ電源がフューエル・フィラ・リッド・スイッチに接続されています。
このスイッチが押されると、バッテリ電源がフューエル・フィラ・リッド・ソレノイドに供給された後、アースに接続されるので、リレーまたはモジュールがリッドの開動作を制御することはありません。
分散システム
分散システムとは、冗長回路を削減し車両アッセンブリを簡素化しながら、システム間の情報共有を可能にします。
そのため、複数のモジュールを利用してモジュール間でバス通信を行うことで、車両には個別の回路を追加することなく様々な機能をサポートすることができるのです。
分散システムを使った、ウインドシールド・ワイパおよびヘッドランプ・システムを紹介します。
分散システムを使った、ヘッドランプおよびウインドシール・ドワイパ回路では、ドライバーが、ワイパースイッチやウィンカースイッチなどの、マルチファンクションスイッチを操作して希望のウインドシールドワイパポジションを選択します。
このスイッチは、内部にあるステアリング・コントロール・モジュール (SCM) に配線で接続されていて、SCMはローカルインターコネクトネットワーク(LIN)バスメッセージ信号をキャビンコンパートメントノード(CCN)に送信します。
キャビン・コンパートメント・ノード(CCN)とは、通常メ-ターを指します。システムによって経路は異なります。
次に、CCNがCAN経由でメッセージをボディー・コントロール・ユニットに送り、それを受けてウインドシールド・ワイパを作動させます。
ヘッドランプ・システムも同様のプロセスで作動しますが、ダッシュボードのヘッドランプ・スイッチはMUX入力信号でCCNにハードワイヤードされている車両もあります。
CCNは、ハード・ワイヤード・スイッチからヘッドランプスイッチポジション信号を受信します。
一方、LINバス上ではマルチファンクションスイッチおよびSCMからのハイ/ロービーム選択信号がCCNに提供されます。
次に、CCNはCANバス経由でボディーコントロールユニットに適切なランプドライバを作動させる要求信号を送ります。
マルチファンクション・スイッチ・レバーから送られる、ヘッドランプ・スイッチ入力信号は、主として(LINまたはCAN)バス経由で伝送されます。
このような分散システムを使用している車両では、複数のモジュールを使用して最終的なタスクを実行しますが、コンポーネントや回路は多数のシステムで共有されています。
そのため、マルチファンクション・スイッチなどの1つのコンポーネントが1本のワイヤを介して複数のデバイスを制御することができます。
この制御は、LINまたはMUX信号をCCNに送ることによって行われますが、受信した各デジタル信号(LIN)または明確な電圧値(MUX)を判別し、その要求をバスメッセージとして適切なモジュール(この場合はボディーコントロールユニット)に伝達します。
また、分散システムでは、多種多様な入力信号に基づいて同じ出力デバイスにコマンドを送ることができます。
たとえば、通常のヘッドランプの作動に加えて、車両ロック時、アラーム作動時のヘッドランプ点滅などは、分散システムではシンプルなプロセスで行われます。
スイッチに作用する電流負荷が軽減されるため、スイッチ接点、配線、およびコネクタの小型化が可能になっています。
診断を実施するときは、不具合を検証した後、関連する症状がないか確認します。
スキャン・ツールを接続し、入力信号として、ワイパ作動要求を受信していないか確認します。
信号を受信していない場合は、マルチファンクションスイッチとCCN間に通信エラーが生じている可能性があります。
信号を受信している場合は、原因と思われるマルチファンクション・スイッチを排除し、ボディー・コントロール・ユニットを表示させてそのモジュールが信号を受信しているかチェックします。
信号を受信している場合は、アクチュエータの診断に進み出力回路が機能しているか確認します。
暗電流
暗電流は、イグニッション・スイッチOFF位置の状態でもバッテリか少量流れている電流で、正常な状態を示します。
イグニッション・スイッチがOFF位置で、すべての非イグニッション制御回路が適切に作動している状態で、正常な車両の電気システムに流れる一般的な暗電流の値は、5~35mA(0.005~0.035A)の範囲内です。
エンジン・コントロール・モジュール、デジタル・クロック、デジタル・チューニング・ラジオ、その他のモジュールのメモリ機能を維持するには、最大35mAの暗電流が必要です。
車両を約20日間使用しなかった場合、バッテリが放電され容量が過度に低下する場合があります。
車両を20日以上駐車する(保管する)場合は、バッテリの放電を防ぐため、バッテリ・マイナス・ケーブルの接続を外してください。
暗電流が過剰な場合、次の原因が考えられます。
・ 電装品のスイッチの切り忘れ
・ スイッチの作動不良または調整不良
・ 電子モジュールまたはコンポーネントの作動不良または短絡
・ オルタネータの内部短絡
・ 配線の間欠的な短絡
暗電流が35mAを超える場合、バッテリを交換する前に、原因を突き止めて是正してください。
多くの場合、暗電流が過剰になる不具合を解消すれば、バッテリを充電して正常な状態に復帰させることができます。
特定の車両に関する具体的な暗電流テスト方法については、適切なサービス・インフォメーションをご覧ください。
モジュールのスリープ
イグニッション・スイッチをOFFにした直後は、CANバス上のモジュールの多くがウェイクアップした状態でバスの動作を監視しているため、暗電流は比較的高くなります。
さまざまなロジックに基づいて、各モジュールは最終的にスリープモードに入っていきます。
バスが動作していない状態で規定時間が経過すると自動的にスリープ状態になるモジュールもあります。
一般的には、イグニッション・スイッチをOFFにし、全ドアを閉じ、ライトを消灯した後20~40分以内に全モジュールがスリープモードに移行します。
モジュールのスリープ状態に関する知識は、次の2つの理由から重要になります。
・ まず、20分以上経過してから暗電流テストを行ってください。それまでにテストを行うと、モジュールがまだウェイクアップ状態の可能性があります。
・ 第二に、モジュールが暗電流測定中(約20分経過後に)まだウェイクアップしている場合、診断作業では、モジュールの不良を特定するよりも、なぜモジュールがまだウェイクアップ状態であるのか明確にする必要があります。
キーOFF時の負荷遮断
負荷遮断には、キーOFF時の負荷遮断とキーON時つまりアクティブ負荷遮断の2つのタイプがあります。
キーOFF時の負荷遮断は、モジュールにより制御されるライトやアクセサリーなどの負荷デバイスがキーOFF後もスイッチが入った状態になっている場合に実行されます。
これには、半ドア、バニティミラーの消し忘れ、ヘッドランプの消し忘れが含まれています。
これらの出力デバイスを制御するモジュールは、各デバイスの電源を遮断し、過剰な暗電流を防止します。
出力デバイスは通常、入力信号が再び送られるまでオフのままになります。
たとえば、インテリアライトが負荷遮断によって消灯した場合、ドア開閉サイクルまたはキーON/OFFサイクルが実行されると再び点灯します。
ボディー・コントロール・ユニットによるキーON時のアクティブ負荷遮断
負荷遮断第1段階および第2段階:ボディー・コントロール・ユニットは、インテグレーテッド・パワー・モジュール(IPM)の電圧を測定します。
電圧測定値が30秒以上11.75V以下になると、IPMは第1段階の負荷遮断状態をバスネットワークに伝送します。
このレベル1第1段階の状態が10秒間継続すると、第2段階の状態になり、メッセージが伝送されます。
車両によっては、バス経由でバッテリ電圧メッセージを受信します。
バッテリ電圧が30秒以上12.2V以下になると、ダイン2段階のメッセージを伝送します。
プラット・フォームに応じて、シート・ヒータやフォグ・ランプなどの車載システムの機能は第1段階または第2段階のときに解除されますが、それぞれの表示灯は点灯し続けます。
それ以降の作動要求は無視されます。
エレクトリック・バック・ライト(EBL)は、ヒーテッド・ドア・ミラーとともに最高5分間作動を継続し、その後これらの機能は表示灯とともに解除されます。
ドライバーが意図的にこれらの負荷を再度オンにすると、その機能はさらに5分間作動した後で停止します。
IPMは、電圧測定値が30秒以上13Vを超えると第1段階または第2段階の負荷遮断状態を終了することができます。
このとき、前に解除されたすべてのシート・ヒータおよびフロント・フォグ・ランプが再び作動します。
EBLおよびヒーテッド・ドア・ミラーは直前の作動状態に復帰します。
負荷遮断第3段階:IPMが充電システム故障メッセージを受信し、充電システムの故障および充電電圧の低下を認識すると、第3段階の負荷遮断状態が伝送されますが、負荷遮断アクションは実行されません。
第3段階の負荷遮断状態が10秒間続くと、第4段階の状態になり、第4段階のメッセージが伝送されます。
負荷遮断第4段階:この負荷遮断状態では、すべてのシート・ヒータおよびフロント・フォグ・ランプが解除され、その表示灯も消灯します。
EBLはヒーテッド・ドア・ミラーとともにその機能に関連するタイマを直ちに無効にします。
これらの機能の表示灯も同時に消灯します。
ドライバーが意図的にこれらの負荷のいずれかを再びオンにすると、その機能は60秒間作動した後で停止します。
IPMは、充電システム故障メッセージが10秒間消えると、第3段階または第4段階の負荷遮断状態を終了することができます。
このとき、前に解除されたすべてのシート・ヒータおよびフロント・フォグ・ランプが再び作動します。
EBL およびヒーテッド・ドア・ミラーは直前の作動状態に復帰します。
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