SDGs×USPインタビューvol.1 フードバンクひこね代表 森恵生さん
滋賀県で行われている様々なSDGsに関する活動を紹介するSDGs×USP。
この企画は滋賀県立大学の学生のみなさんに、SDGsをより身近に感じてもらうために始まりました。
記念すべき第1回目は「フードバンクひこね」をピックアップ!
フードバンクひこねの活動
フードバンクとは、まだ食べられるのに様々な理由で処分されてしまう食品を、必要とする施設や人々に届ける活動のことを言います。
フードバンクひこねは「食品の“もったいない”の削減」および「困ったときは“おたがいさん”の地域づくり」を掲げて活動されています。彦根市のスーパーなどと連携しながら食材を届けることで、助け合いの輪を広げています。
今回はフードバンクひこねの代表を務める、森恵生さんにインタビューをおこないました。
ーーーフードバンクを⽴ち上げたきっかけはなんでしょうか
森:もともと彦根市内で⼦ども⾷堂をされていた団体さんが、⾷材の寄付の量に偏りができてしまうので食材の仲介をしてほしいという希望の声があり、スタートしました。立ち上げ当初は、彦根市社会福祉協議会がフードバンクの事務局という形でしたが、今はボランティアのスタッフもたくさんいるので、社協はサポートするけれども、あくまで⾃主活動、ボランタリーな活動としてやっています。
ーーー森さんは、どういったきかっけでフードバンクへ参加されているのですか
森:実は、私自身は社協の職員で、フードバンクの⽴ち上げの時から発起⼈の⼀⼈として関わっています。また、滋賀県⽴⼤学の環境科学部の卒業⽣でもあり、⾷品ロス削減に繋がる、そういった環境問題への取り組みにもなるフードバンクはいい仕組みだなと思ったからです。私も⽴場上は職員としてではなく、ボランティアとして参加しています。
⾷材などを必要としているけれどもなかなか⾃分の⼒で⼿に⼊れることが難しい⽅など必要な⼈に必要なものが届いて、さらに⾷品ロス削減にもつながるということで、フードバンクはみなさんに共感していただきやすいというのがいい取り組みだと思います。
ーーーボランティアの⽅達はどうやって参加されているのですか
森:フードバンク⽴ち上げの時に「⼀緒にやりませんか?」と知り合いなどへ呼びかけて集まったメンバーが発起⼈となっています。その当時はまだ規模が⼩さく、10 ⼈や15 ⼈くらいのメンバーでした。
現在は、毎回40人くらいのボランティアが参加していますが、知り合いからの声かけやFacebookなどを見てきている人のほか、食材を受け取りに来られる人にも声かけしています。
ーーー「フードバンクポスト」という取り組みをされているとお聞きしました。どのように始まったのですか
森:彦根市のスーパーで最初に声をかけてくださったのはベルロードにあるパリヤさんです。徳島県のスーパーで「フードバンクポスト」という取り組みをやっているのを知っておられて、彦根でもやりたいと思っていたそうです。
彦根でのフードバンクの活動に対し、こんな良い活動をしているなら⾃分のお店にフードバンク⽤の回収ポストを置き、お客さんが家で使っていない⾷材をそこへ⼊れてもらう。こういう取り組みが広がるのだったらぜひやりたいと、第⼀号でやっていただいたところ、本当にたくさんの食材が集まりました。そして、せっかくだから他にも声かけしようってことで、平和堂さんに声をかけてくださいました。今はビバシティと彦根駅前のアルプラザ、もう⼀つ⼩泉町にある丸善さん、全部で4箇所のスーパーにポストが設置されています。
今ダンボールから食材を出して作業しているのは、ポストで集まった⾷材の賞味期限のチェックや安全管理のためのラベル貼りなどをしていて、仕分けをしてから持ち帰りコーナーへ並べるというのをやっています。
ーーー連携がすごいですね
森:そうですね、本当にありがたいです。全国規模のフードバンク組織があって、そこに登録すると全く⾒知らぬ企業から⾷材が届くという仕組みが出来上がっているのですが、彦根はあえてそこまでしていません。⾷品ロスの削減は⼤事なことだけど、企業さんの都合に合わせてするのは違うのではないかなと思います。企業からすると廃棄になる⾷材をフードバンクに寄付したら⽬の前の課題は解決しますが、受け取った側がもらった⾷材をなんとか廃棄しないようにするのは、違う気がします。彦根はあえて企業さんにこちらからお願いするのではなく、集まってきた⾷材の中でやろうということにしています。
多くの食材の寄付が集まっていますが、どこに⾏くかわからない状態で寄付するのではなく、⾃分たちが住む街の誰かの元に届くということが大切ではないかと。コロナ禍の関係もあると思いますが、「困っている⼈がいるのだったら助けになりたい」と思ってくれている⼈はいて、そんな助け合い、⽀え合いの受け⽫の⼀つにフードバンクがなれているというのも意義としてあると思っています。
ーーーやっていてよかった瞬間はありますか
森:スタッフとしてこれだけの⼈が来てくれていることにやりがいを感じます。ここにはいろんなスタッフさんがいて、年配のスタッフさんは学⽣さんとお話しができて楽しいとおっしゃっていますし、ご近所付き合いがない⼈もここに来ればいろんな⼈と会話しながら楽しまれていると感じます。ルールをかっちり決めるより、みんなでアイデアを出し合いながらやれる雰囲気づくりは⼤事にしています。
また、フードバンクは「もったいないをありがとうへ」をコンセプトにしているのですが、捨てられるかもしれなかった⾷材を持って帰っていただくことも「ありがとう」だし、もらった⽅も「ありがとう」という気持ちになります。今回、⻑浜の農家さんから頂いたキャベツもこのままだったら捨てるはずだったものを⾷べてもらえるっていうのは、⽣産者としては「もらってくれてありがとう」だし、今⽇のフジテックの災害備蓄品も、休みの⽇にわざわざ社員さんがトラックに積んで持って来てくれて「休みの⽇なのにすみません」と⾔ったら「受け取ってもらえてうちもありがたいです」と⾔ってくれました。寄付してもらって感謝してもらえる。やっていてよかったなと思います。
ーーー今後の展望はありますか
森:この場所が唯⼀のフードバンクになるのではなくて、いろんな所でフードバンクが⾏われるようになったらいいなと思っています。⾷材を捨てる前に「もったいない」と思って、「そういえばフードバンクっていうところがあるからそこに寄付しよか」と考えることが当たり前になったら⼀番いいなと思っています。⼩学校や大学なんかでプチフードバンクが⾏われたりしたらいいですね。
■フードバンクひこね
滋賀県彦根市で活動し、規格外食材など不要となった食材を回収・保管し、必要とする人や団体へ届けている。
主に彦根総合地方卸売市場内・特設スペースなどで食材の配布を行っている。
取材・構成・撮影/吉見奈那子
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