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SDGsビジネスの実施事例の分析 ーワークシフト・ソリューションズ株式会社様の事例ー

まず初めに、筆者はSDGsを個人・企業問わずビジネスに活かすことを大いに推奨しています。

近年は、特に企業のSDGsに対する取り組みが加速しており、自社の経営にSDGsを反映させたり、SDGsに関連した商品やサービスを提供する企業も増えています。

一方で、SDGsと自社事業を結び付けるのは中々難しく、他社の実際の取り組み事例を見ても、その事業がどのようにSDGsに貢献しているのかについては、ぱっと見では分かりにくいかと思います。


今回は、実際にSDGsビジネスを行っている企業を取り上げ、SDGsビジネスに関連した事業内容や、どのようにSDGsに貢献しているのかについて分析することで、SDGsビジネスの導入をよりイメージしやすくなって欲しいという意図の下、本書を執筆しています。

企業のSDGs担当者の方はもちろん、企業の取り組み事例を知ることで個人ビジネスにおけるSDGsの導入のヒントになれば幸いです。


なお、筆者は本書に登場する企業のSDGsビジネスには一切携わっておりません。そのため、推測可能な範囲でSDGsビジネスを分析していることをご了承ください。


企業概要:ワークシフト・ソリューションズ株式会社

今回取り上げる企業は、ワークシフト・ソリューションズ株式会社様です。

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詳しい企業情報はこちらの企業ホームページをご覧ください。

軽く企業説明をすると、海外に強いクラウドソーシング事業を運営している企業であり、海外現地調査、多言語翻訳、デザイン、現地ブログ掲載、現地アテンドなど、様々な海外展開をサポートしています。


SDGsビジネス

注目したSDGsビジネスは、クラウドソーシングです。クラウドソーシングとは、Crowd(群衆)とSourcing(業務委託)を組み合わせた造語であり、仕事を発注したい個人や企業が、インターネットを通じて不特定多数の人々に仕事を依頼したり、アイデアやデザインを募集したりするためのWebサービスの名称として使われます。

ワークシフト・ソリューションズ株式会社では、クラウドソーシングプラットフォームである「Workshift」を運営しています。

「Workshift」の概要としては、インターネット経由で国内外の専門スキルを持つフリーランスに仕事を依頼できるプラットフォームとなっており、時間や場所を問わず人々が活躍できる場を提供しています。現在では、このプラットフォームに世界210の地域の、のべ12万人以上が登録しています。



選定理由

ワークシフト・ソリューションズ株式会社を選定した理由はいくつかありますが、最も大きな理由が、SDGsビジネスの内容がSDG8に関連したものだったからです。

SDG8は「働きがいも 経済成長も」という目標であり、具体的には「包摂的かつ持続可能な経済成長、及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働き甲斐のある人間らしい雇用(ディーセントワーク)を促進する」という内容となっています。

SDG8は、基本的に人々の理解が進んでいない目標であり、筆者が最も注目すべき目標領域であるとも考えています。

SDGsの中でも認知度の差があるという筆者の考察については、以下の記事を合わせてご覧ください。



今回SDG8に関するSDGSビジネスを取り上げることで、皆様のSDG8に対する見方や、SDG8を達成するための具体的な行動を知るきっかけになればと思い、ワークシフト・ソリューションズ株式会社様の行っているSDGsビジネスを採用することにしました。



サービス概要

同社は、具体的には下図のようなサービスモデルを採用しています。

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①まず、依頼主がクラウドソーシングのプラットフォームである「workshift」に、仕事の依頼を投稿します。

②同時に仕事受注希望者は、自身の持つスキルや専門性について「workshift」に投稿します。

③ワークシフト・ソリューションズ社が、両者のプロフィールや過去の評価等から発注先を決定・確定します。ここでポイントとなるのは、サイト内の翻訳機能により、海外への発注も容易であることです。

④仕事受注希望者が依頼主にサービスを提供することで、マッチングが完了します。


以上が、簡単なワークシフト・ソリューションズ株式会社のサービス内容の説明となっています。

基本的には、よくあるクラウドサービスのモデルを採用していますが、やはり特筆すべきなのは海外へのサービス提供です。

SDG8には「生産的な雇用」とありますが、海外との協働作業は、そうした生産性を確保することに繋がります。

例えば、日本では真夜中の時間帯であっても、外国では真昼なんてことはよくあります。そしてこの時差を利用して、日本国内では働けない時間に、海外へ仕事をアウトソーシングすることで、24時間を有効活用することも可能です。

このように、サービスの範囲が広がれば、その収益性や選択肢の幅も大きく広がることになります。

「workshift」は、そうした可能性を広げてくれるプラットフォームであると言えるでしょう。



SDGsへの貢献

では、ワークシフト・ソリューションズ株式会社の取り組みは、どのようにSDGsに貢献しているのでしょうか。

前提として、SDGsの貢献には大きく「製品」「サービス」「プラットフォーム」の3つの観点からのアプローチが可能とされており、それがBtoCなのか、BtoBなのかでも分類することができます。

SDG8を例に挙げると、バリアフリー関連の商品を開発・販売することは「製造」の、オンラインでの簡易的な司法サービスを提供することは「サービス」の観点からのSDG8への貢献となります。

そして、同社のような雇用マッチングを行うことが「プラットフォーム」の観点からの貢献となっているのです。


あまり知られていないのですが、SDGsビジネスには、商品・サービスの提供の他に、プラットフォームの運営や設立も含まれています。

プラットフォームは、SDGsに関連したアクションを起こすための機会を提供する場として、SDGsの達成に貢献しています。

一般的には、環境に配慮した製品の開発・販売や、人権に配慮したサービスが目立っているため、プラットフォームに関しては注目されにくい分野でもあります。

ですが、プラットフォームもきちんと雇用創出の機会や、それに伴う働きがいの促進、そして経済成長へと貢献しているのです。


加えて、「workshift」は個人と法人の両者を結ぶためのプラットフォームを提供している点から、toCにもtoBにも対応していると言うことができます(オンラインでの簡易的な司法サービスだとtoC、バリアフリー関連製品だとtoC、toBの両対応)。


また、海外では違法な労働賃金で働かされる人たちも存在するので、プラットフォーム内での適切な価格交渉が行われることは、SDG8以外にもSDG5(ジェンダーの平等を達成し、全ての女性と女児のエンパワーメントを図る)や、SDG10(国内および国家間の格差を是正する)などとも関連・貢献することになります。

ワークシフト・ソリューションズ社は、直接的にSDG8へ貢献しつつ、間接的にSDG5やSDG10に貢献していることになり、より企業価値や雇用機会の正しい創出に繋がっているのです。


以上のように、ワークシフト・ソリューションズ社はtoC、toBの両面で雇用機会を創出するためのプラットフォームを運営し、時間や場所に問わず人々が活躍できる場を提供することで、SDG8「包摂的かつ持続可能な経済成長、及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働き甲斐のある人間らしい雇用(ディーセントワーク)を促進する」に貢献していると言うことができるのです。

また同社は、海外へのサービス提供にも強みを持っている点から、地域、人種、性別、年齢などに限定されない、より広範囲でのサービスの提供と、SDGs(特にSDG5やSDG10)への貢献を行っているとも言えます。


SDGsビジネスの抱えるリスク

では、同社は完璧なSDGs貢献を行っており、それは今後も問題なく持続的に実施することができるのでしょうか?実際はそんなことはなく、常にリスクとの戦いとなります。

ここからは、同社が抱えるSDGsにおけるリスクについて分析していきます。


一番代表的なリスクマネジメントは、労働者の働く環境のチェックです。

つまり、依頼主が受注者に対して違法な労働賃金を提示していないか、仕事内容は適切なものか、過度な労働を強いるものではないか、といった項目を常に監視し、二者間のやり取りにおいて生じるリスクを排除しなくてはいけません。

SDG8は、仕事の受注者に関する項目を多く設けています。

そのためプラットフォームの提供者には、労働機会の提供と言うポジティブな側面だけでなく、労働環境の悪化というネガティブな側面へのリスクマネジメント能力も問われることになります。

他にも、障害を持つ受注者にどのように対応するのか、20代~40代のサービス利用者は多いが、その年齢以上の労働者に対してどうリーチをかけるか、「全てネット対応」によって発生する金銭的トラブルにどう対応するのか、といった項目が上げられます。


このように、SDG8に貢献しようとすることで、逆に新たな労働におけるリスクを生じさせてしまう可能性を含んでいることが、プラットフォームサービス及び同社の抱えるリスクです。

SDGsだけでなくESG投資といった概念も広がっている現在、上記のようなリスクが顕在化すると、単に企業の利益だけでなく、企業イメージや投資先としての魅力の損失に繋がります。

多くのユーザーや企業を顧客として抱える以上は、やはり「人」と「労働環境」に特化したリスクマネジメントを行い、企業の財政的な持続可能性の向上と、SDGsへの貢献の両面に取り組んでいく必要があるのです。


以下は、169のターゲットに焦点を当てたものです。SDG8に関連するターゲットには、やはり労働環境の整備や賃金の公平化が目標とされています。

流し読み程度で結構ですので、SDG8が持つイメージを理解して頂ければと思います。


8.5

「2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。」

8.7

強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。」

8.8

移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。」




まとめ

今回は、実際にSDGsビジネスを行っている企業様を取り上げ、その実施例やビジネスモデルについて分析してきました。

ワークシフト・ソリューションズ株式会社様は、単なるプラットフォームの提供だけでなく、そのサービス提供範囲を世界に広げることで、他のサービスとの差別化を図りつつ、よりSDGsへの貢献度を高めていることが分かりました。

一方で、今後はプラットフォームのユーザーとその労働環境に対してどのようなマネジメントを行っていくのか、そしてリスクが顕在化した際にどのような対処を行っていくについての条件を定めていくことが、より高い持続可能性の確保と、SDGsへの貢献度を高めることになるのではないでしょうか。


私自身も、企業様の実際の事業内容とビジネスモデルが、どのようにSDGsと関連し、そしてSDGsへの貢献と利益を両立させているのかについて改めて学ぶことができ、勉強になりました。

また、他に解説して欲しい企業や団体などがある場合は、ぜひコメントやTwitterにてお知らせください。


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