年収の壁、壊すんじゃないんですね
今日はSDGsでいうところの「目標5 ジェンダー平等を実現しよう」の話です。
以前、こんな記事を書きました。
2022年10月、法改正により扶養の範囲が狭まりました。社会保険加入になって「働き損」になってしまう短時間雇用の方々が、シフトを減らすなどして「何とか壁を越えない工夫」をしているため、働き手が減って企業も困っているよ、という話をしたのですが、国も「これはまずい」と思ったんでしょうね。
ただ、ニュースを見た感じでは、「年収の壁を壊す」んじゃなくて
「年収の壁の向こうにちょっとスロープつけるよ」って感じなんだね。
助成金というスロープをつける。まぁ、現状はこうするしかないのかな、という感想です。
企業側の「パートさんがシフト減らして人手が足りません!」という状況はいったん解消できそうですね。
本当の壁は「16時の壁」
しかし、「社会保険に入ってもいいですが、16時までしか働けません」という女性の数は減りません。
毎年、私の勤務先では、1月ごろから春にかけて、4月に子供を保育園に入れて働きたいという女性の対応が増えるのですが、昨年に比べて「扶養内希望」という方は減りました。社保拡大の認知は意外に広まっているのかもしれません。ただ「16時までしか働けない」という女性がとても多い。皆さん判で押したように「16時」というので、私は勝手に「16時の壁」と名付けました。
パート求人の多い飲食業・販売業だと、土日祝休みが難しい。そのため、子育て世代の方はオフィスワークを希望することが多いです。
オフィスワークだと、17時台終業ならご紹介できる仕事はあるのですが、16時までのオフィスワークというのは、実は非常に希少です。
16時の壁。この壁はなぜ生まれてしまうのか。
帰宅後の家事育児(お迎えに行き、夕食を作り、子供に食べさせ、お風呂に入れ、洗濯をして、歯を磨かせて寝かしつけて…)を一人で担っている女性は、17-18時台までの勤務がなぜ難しいのか。
16時か、17時か。たった1時間の差ですが、これが「子供を21時に寝かせるか22時に寝かせるか」に直結すると思うと、大きな1時間です。
子供を寝かせるまで(お迎えに行き、夕食を作り、子供に食べさせ、お風呂に入れ、洗濯をして、歯を磨かせて寝かしつけて…)を逆算して、「16時」という時間が出てくるんでしょうね。
子供が寝るまでが母の「勤務時間」
ここでSDGsに立ち戻ります。
母が16時に退社してから21時に子供を寝かしつけるまでの5時間は、「無報酬の育児・介護や家事労働」です。つまり、5時間分の無償労働。母は会社で6時間勤務したあと5時間勤務しています。夜の分だけで5時間です。朝の出勤前も含めると、母は1日12時間以上「労働」しているといえます。
例えば、母の退社後の無償労働「5時間」のうち、父が「1~2時間」を分担すれば。
母はもっと身軽に、「16時の壁」を乗り越えられるわけです。
私は、SDGsのターゲットに、この「女性の無償労働」の項目が含まれていること(=私が夜中に洗濯物を干しながら感じたあの感情を、国連が問題視してくれたこと)に感動しました。そして、全世界で同じように感じている女性がたくさんいるんだということを実感しました。
いろんな壁がありますけれど、乗り越えていくか、壊していくか。
一人で立ちすくんでいるわけじゃない、みんな同じ壁を見上げているなら、なにかできそうだな、そんな勇気をくれるSDGsのターゲットだと思います。
コメントやスキをいただけるとうれしいです! いつか、金沢市を拠点に、SDGsの観点からキャリア支援できるような活動をしていきたいと思っています。