認知症は誰にとっても身近なものへ
認知症は長年誤解と偏見にさらされてきた!
認知症の歴史をひも解くと「痴呆」「呆け」などと呼ばれていた時代があった。その時代には、認知症の人を縛り付けたり、部屋に閉じ込めたりすることがありました。
現在ではそうした状態はかなり改善されたものの、依然として「認知症になったら何にもわからなくなる」と考える人は少なくありません。
確かに、脳の働きが低下して認知症になると生活にさまざまな不便が生じます。ただし、認知症になったからといって何もかもわからなくなるわけではないのです。
最近は、認知症の方が講演や手記を通じ、自身の心の内や体験を発信するようになりました。そうした活動を通じて、認知症の人が将来への不安や孤独、周囲の無理解に苦しみながらも、豊かな感情を持って生きている事が知られるようになってきています。
2022年の日本の高齢者人口は3627万人
人口割合29.1%
2021年の高齢者人口は3621万人だったことから、2022年になり高齢者人口は2021年の発表より6万人増えたことになります。現在、高齢化とともに日本の認知症の患者数は右肩上がりに増加しています。
厚生労働省の発表によればその数は2025年には700万人に達し、このまま増え続ければ2050年には患者数が1000万人を超える事が予想されています。認知症は誰にとっても身近なものになっていくと予想されています。
社会全体で認知症の人の生活を支える「地域包括ケアシステム」
このような時代の中で、2019年に政府は「認知症施策推進大網」を発表しました。この指針では認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせる「共生」と、認知症の発症や進行を遅らせる「予防」の2つを柱としています。
私はこれからの社会に向け、介護職は専門職だけでなく、家族や地域の方々にも、認知症に対する正しい知識を身につけてほしいと願っています。「不安」や「孤独」に苦しむ認知症の患者さんにとって、共に寄り添い、必要な時には手を差し伸べてくれる人がいれば、どれほど幸せで安心でしょうか。身近な人が支えとなれば、認知症の人でも希望と尊厳を持って、生涯、幸せに生活をすることができるはずです。
認知症になったら人生が終わり!?
我が国の認知症研究の第一人者をご存知でしょうか。認知症診断に広く用いられる「長谷川式簡易知能評価スケール」の開発者である長谷川和夫先生。2017年に認知症を発症したことを公表しました。長谷川先生が認知症になったことはとてもショックでしたが、先生は認知症になったあとも、テレビ番組を通じてご自身の状態や体験を当事者の言葉で発信し続けています。「認知症になったら人生が終わり」という考えは、今や過去のものにすべきです。