Vol.65 罠!罠!罠!
『なんだよ!この話』と憤ったのは、昨年 M・ナイト・シャマラン監督による映画「ノック 終末の訪問者」を観た時の話。
サブタイトル通り「終末論」に絡んだ、ある一家に訪れる災難を描いた話なのですが、まるで「 ” 聖なる犠牲 ” の差出し」を全肯定した様な語り口に、私はすっかりと辟易してしまった訳です。
さて、そんな私の憤りとはお構いなしに(←当たり前か)、今年もM・ナイト・シャマラン監督の新作『トラップ』が、割とひっそりと劇場公開されていたので、「前作よりも公開規模が小さいとはどういうことだろう?」と気になったこともあり、初日に鑑賞してきました。
※ちなみにこんなあらすじです。
(注:予告編で開示される程度のネタバレは含みます。)
子煩悩な中年男性 ” クーパー ” は、思春期に差し掛かった娘 ” ライリー ” へのご褒美として、人気歌手 ” レディ・レイブン ” のアリーナライブのチケットを入手し、娘と共に会場に向かうが、会場入りした ” クーパー ” の目に映ったのは、異様な人数で編成された警護担当の警官たち。
異変を覚えた ” クーパー ” が、さりげなく 売店スタッフに探りを入れると、『実は、このライブ会場全体が「連続殺人鬼 ” ブッチャー ” を捕らえる為の罠(トラップ)」』なのだという。
思いがけない話に肩をすくめてみせる ” クーパー ” だったが、実は「彼こそが ” ブッチャー ” の正体」だったのだ…
※下記は約1分間の予告編です。
『様々な「駆け引き」を描いた作品』はありますが、本作は犯人視点という点がユニークで、更には、「出来る限り ” 娘と共に ” ” 自然な形で ” 脱出するタイミングを伺う」辺りが、スリリングさを増す ” ひとアクセント ” になっていました。
そして、会場からの脱出を探る過程で徐々に明らかになる ” クーパー ” の「頭の回転の速さ」や「特性」、そして「異常性」。
そんな ” クーパー ” の「(目的の為とはいえ)手段を選ばない ” 異常性 ” 」を認識しつつも、いつの間にか観ているこちら側も「どうやったら脱出できるのか?」と ” クーパー視点 ” で考えてしまうのは、まさに巧みな作劇の賜物!
それだけでも十分見応えがあるのですが、その後 ” 意外な人物 ” との「駆け引き」や「対決」も繰り広げられ、場面によっては「感情移入するキャラクターが180度変わる」怒涛の展開に、観ているこちらはハラハラするやら、びっくりするやら。
正直、終盤は やや冗長に感じる瞬間もありましたが、終始「罠(トラップ)」をキーワードに繰り広げられる、エンターテイメント作品でした。
前作のこともあり、「今作の内容によっては、今後はM・ナイト・シャマラン監督作品は避けようかな?」と思っていましたが、次の作品も心置きなく観られそうです(笑)
では今週の締めの吃音短歌(注1)を…
胸の内 怒りが化けた 言の葉を 吐き出そうにも ままならぬ口
※私が、劇中の様な厳重警戒下で職務質問されたら「(発話の障害に起因する)たどたどしい喋り方をするので、とても怪しまれるだろうな」…と思ったり(笑)
【注釈】
注1)吃音短歌
筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注2)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。
注2)吃音(きつおん)
かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。