【Look back that day-5F】

その後、何事もなかったようにバイトは続けた。職場であっても彼女には軽く会釈をする程度でこちらから積極的に話をすることはなかった。記念すべき初詣から何日たったのだろうか、あの先輩からまた悪魔のメッセージが届けられた。彼女の友達2人と飲みに行こうという誘い(先輩は参加しないので、3対3の合コンのお誘いというところ。)

 なぜか断りづらく安請け合いをしてしまった。翌日、大学で比較的気の合う友人+サークルの後輩を【合コン】に誘った。私のような人間から合コンというものに誘われた二人は勝手にテンションを上げ、勝手に出会うであろう女性のハードルを上げた。その年代の男性には仕方のないことであろう。

 いきなりだったか、2次会だったか〇宿にある【ディスコ】に6人で入った。入る前に3人の女の子を見た男性二人の落胆した表情は何となく覚えている。非常に申し訳なくそして軽くではあるが初詣の女性を恨んだ。合コンには自分よりも美人の友人は連れてはこないというのは、その昔から鉄板の常識だったのだ。もはや普遍化し法則となっているかもしれない。

 大音響の暗闇の中、私はひたすらに不機嫌だった。彼女たちが悪いわけではない。落胆された自分に腹を立てていたのだ。できるだけ早く解散したかった私は、その彼女に何度も終電の時間を確認した。

 そしてしばらくたって彼女の口から衝撃のセリフが飛び出した。「終電が無くなった。」今にして思えば良い意味での甘えだったのかもしれない。笑ってやり過ごし、朝まで飲めば済んだのだろう。

 だが、私は激高した。自分でも驚くほどに。まずは友人の1人をタクシーで自宅に返し、残り5名をタクシーに押し込んで自宅に向かった。

 自宅に着くやいなや、家人に声を掛けることもなく家の車を車庫からだし後輩に運転を任せ、その彼女にナビをさせながら彼女たちの家を目指して車を走らせた。(後輩は飲酒運転だったのかもしれないが、私の怒りに圧倒されてそれすら言い出せなかったようだ。)

彼女たちは〇玉に住んでいた。自宅から1時間以上車を走らせたことになる。全く見知らぬ街で車を止めたとき私はとどめのセリフを放った。

「タクシー代を払え」 彼女たちが財布から数枚の札を取り出したのは覚えているが、それは自分の物にはならなかった。後輩に全て渡したと思う。

 あの時、なぜ私はそこまで狭両だったのだろう。嘘でも笑顔でごまかすことは出来なかったのだろうか。あの怒りの情動は何だったのか。あの時、噴き出した情動が心に広い道を作ってしまったのかもしれない。あの時の情動はやり過ごせなかったのか。


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