FGAを取得した理由
FGA(英国宝石学)のDiploma合格通知を受け取って早3週間。
書きたいことはたくさんあるのに
あっという間に日々が過ぎて行ってしまって驚きっぱなしです。
私が取得した宝石学の資格とは、
宝石鑑別士として仕事ができるようになる資格。
宝石鑑別とは、「何かわからない石を、何の石か特定すること」
これができるようになったおかげで、買い付けの時のみならず、
その石自体の性質を正確に理解したうえでのデザインやモノづくりが
できようになったこと、本当に大きいです。
なぜFGAの資格をとろうと思ったのか。
私は2つ理由があります。
一つ目の理由。
3年前に、自分でやりたいことをやる!共感してくださる方に提案したい!と決めてジュエリーブランドを立ち上げて。
それまでは、外資のラグジュアリーファッションのPRを20年ほどやってきたとこから結構違うことをやりはじめました。当然20年間のAD/PRの知見は充分に生かせるけど、近いようで全く遠いファッションとジュエリーの世界。
コンセプトづくりやブランディング、イメージは得意だけど、石の仕入れや、デザイン画を描くこと、それを実際に落とし込むときに必要なあれこれ。
特に石に関して、とても親身になってくださる職人さんに出会えたから思わぬ事故にならずにすんだことが、実はあった。(これに関しての詳しくはまた別の機会に)
「あ、こうやって、石のこと、私が知らなかったことを助けてくれるひとがいて、今回は助かったけど、本来は、自分で回避できる専門知識をつけなくては」と痛感した。
そこで、宝飾業界で意味のある資格ってなんだろう、と調べ始めた。
名刺に書けるレベルの資格は、宝飾業界では2つだけ。イギリスのFGAとアメリカのGIA。これだけは、グローバルで通用する資格。
違いは、イギリスのFGAは歴史が古く、すべての宝石種を等しく扱う。すなわち、ダイヤモンドも数ある宝石種のうちのひとつ。より学問ぽい。
アメリカのGIAは、マーケットの力関係からもわかりやすいんだけどダイヤモンド超大事。そして、ルビー、サファイア、エメラルドも大事だよ。の感じ。より商業的な観点あり。(ざっくりですみません)
そして、一番大きかったのは、言語。
FGAは、日本で日本語で授業を受けられるところがあった。GIAは、日本からならオンラインで英語のみ。そして実技試験は海外の校舎に受けに行かなくてはならない。(数十年前にGIAの日本語での教育機関は日本から撤退していたんですね。)
日本語でないと無理~って思ってFGAに即決したけど、実際のところ、私のブランドはカジュアルな宝石種をメインに扱っているから、むしろFGAの、すべての宝石種は等しく大事だよねのコンセプトがとっても性に合っていた。
で、早速入学したいと思ったけど、その時には既にその年度の入学受付を閉め切っていたタイミング。で、翌年の入学まで待ったのでした。
合格までに順当に行っても2年間かかり、私は通学クラスを選択。週一で日本語で授業をしてくれる専門学校に通う。大人になってからの週一の通学もなかなかに大変だったけど、それ以上に大変だったのは、暗記の量の多さ。というか、言ってみれば、教科書全部を丸暗記すべし、という。
FGAの難易度は、私の当初の予想を遥かに超えていて。1年目のFoundationの試験が合格出来たら2年目に進学でき。2年目のDiplomaの試験にパスするのに本当に本当に2年間勉強した。人生で初めて、勉強、というものを知った。(高校、大学受験を普通受験で合格してますが、当時、マジで全然勉強してなかったのを改めて実感・・・あのときここまで勉強してたら、私の人生、また違ったものになってただろうな)
勉強というか暗記。ひたすらテキストを読み返し、暗記。暗記の内容も、定義や成り立ちから、専用の器材での検査結果のグラフと数値、物理、地学、結晶学、などなど多岐にわたる内容を、全て筆記試験(論述)用に、まずは暗記。ロジック云々、が分かってれば、、、とか言いますが、ロジックの前に暗記。暗記ができてから初めてロジックに移れるんです。
よく、学生時代の勉強って、大人や社会人になってから役に立たないよね。暗記が多いし。って言いますよね。私もそう思ってました。
でも、全くの真逆。
FGAの試験用に暗記した教科書の内容ぜーんぶ。暗記できてるからこそ、それをベースにお取引先の方々と話ができる。それ(暗記しているデータの裏付け)があるから自信をもってお客様にご説明できる。暗記なくして、ロジックは成り立たないのです。
そういえば、会社員の時、とりたてて、「これを暗記しなさい」とは言われたことはないけど、よく考えれば、長年その仕事に携わっていたおかげで
基本となることは全て頭に入っていて、いちいち調べなくても知っていた。だからそのうえで戦略的に、より効果的に、って企画やプランを考えたりしていた。(学生の時だって、ちゃんと勉強してたら、全然役に立ってたことばっかりだったよ~ 遠い目)
この2年間は、それと同じことを、短期間で猛ダッシュで暗記して実践(鑑別士)の仕事ができるようにする、って仕組みだと改めて実感した。
今となっては、あんなにつらかった暗記、本当に頑張ってよかったし、ものすごく役に立っています。
あと、声を大にして言わせてください。
暗記って、年齢重ねるとできなくなる、とか言いますよね。これも、私も最初はそう言ってました。でも、違うんです。
暗記できなのは、年齢のせいではなく、単にやり足りてないだけ。全然足りてないんです。勉強が。勉強時間も努力量も。圧倒的に足りてないだけ。自分の努力不足。ごくシンプルな話。それを年齢のせいにしてはいけません。自分の足りないことをちゃんと見つめて、暗記に向きあいました。
で。
暗記できました。マジで。
この膨大な、途方に暮れていた、ボリュームの文章から数値まで。最初は途方もなくて絶望的で、毎回吐く、って思いながらやっていたことが継続していると、2週間後とかに、しっかり記憶できてることに気づけたときの嬉しさ。自分も出来る、という自己効力感。できてる!できてる!って自分に言い聞かせながら勉強し続けました。
1個目の理由の暗記のクダリで熱くなり過ぎ失礼しました。
で、2つめの理由。
それは、信用を得る手段だと思ったから。
それまでの会社員人生、私はとても幸運なことに、新卒のときから知名度の高い会社に入社していた。そして、転職先も、同じく知名度のある会社。私が仕事をするうえで、知名度のある会社名というのは初めての方と接するときになにかとスムーズにしてくれた。
そんな恩恵にあずかり続けた20数年間。私の肩書だけを見てるだけのひとと、そこじゃなくて、私との仕事としてもきちんと取り組んでくれるひとと、ずっとその違いを見てきたからこそ、こうやって、個人でブランドを立ち上げる、なんて、海のものとも山のものともわからないもの、どうやって
初めましてのひとに、信用してもらい、はなしを聞いてもらえるんだろう、と最初から考えていた。
そこで、業界で認知度のある、かつ誰しもが持っているわけではなく、権威ある資格を得ることができたら、少しは私自身への信頼に繋がるのではないかと、思った。
この2つの理由により、FGAのGemologistの資格をとろう、と思い立った。
あれから3年間、全然あっという間じゃなかったし、勉強期間の2年間は特に、四六時中、試験勉強のことがどこかにうっすらあって。
もちろん1年間通して勉強だけではないから、日常生活があり、仕事があり。遊んでても飲みに行っても、そんな時こそ気分転換というより「あ、勉強しなくちゃいけないのに」なんてうっすら思い続けていた2年間。
だから6月末の最終試験が終わって、2週間ほど、ぽかんとしてしまってました。あんなに生活の大部分を占めていた勉強のスペースがぽっかり空いて
試験勉強ロスみたいな。極限まで根詰めてたので、最終試験後は体調も崩して寝込み、ほんとに回復するまで1ヶ月くらいかかったかも。
それくらい全力で勉強をやりきった自信があったので、これでもしも落ちたら再受験はしない。だって、あんな勉強、二度とできないから。と胸を張ってみんなに言い切れるくらいやり切れたこと、そこにも大きな糧を得ることができました。
結果として、無事に合格出来、そして、まあまあよい出来であったことも努力は裏切らないなあと、更に自分をほめてあげられたこと、ほんとうに全力でやりきるこができて、よかったです。
で、今は、どうしてるか。
まさかの、また1日10時間以上も勉強する日々なんですよ(;´Д`) 実は、FGA1年目から、アメリカのGIAも同時進行してたんですねぇ。あんなに英語無理、って言ってたのにね。
先にFGA始めてたことで、GIAが英語であっても、理解度、全然違ったので、なんとかやれてます。だからFGA(日本語)→ GIA(英語)で始めて、よかったなと。FGA試験前の半年間、GIAのカリキュラムを中断していたので、今また猛ダッシュでGIAを再開してる、というわけ。でも、FGAとGIAは、同じGemologistの資格でも内容、かなり違うんです。面白い~。と同時に方向性違うしで結構どっちも大変><;
これも詳しくはまた別の機会に。