自分の機嫌は自分でとる。

例えば自分の得意分野に関してヒトから質問されるとき、質問者が自分事として、あるいは自分事にしたいかも、という気持ちで興味をもって質問されるときは、こちらもその期待に応えたいし、相手が求めている最適と思われるお答えを返したいと思っています。

そして、質問者が、そもそも他人事（どうでもいいこと）として捉えていて、今後自分事にするつもりも無い感じでの薄っぺらい質問とかは、やっぱり対応もそれなりになったりするのです。

なんですが、あまりに的外れで頓珍漢なことを聞かれたり言われたりすると、いくら他人事とか冷やかしっぽい質問の仕方であっても、力いっぱい正しい情報をお伝えしようとしてしまう、という青臭いところが私にはあります。

というのは。
先月バンコクでのGIAの実技講習で3週間の滞在中、２回あった週末は観光に出かけてしっかり気分転換をしておりました。

バンコク市内の寺院巡りの観光の際に、日本語のできるガイドさんとドライバーさんを頼んでいて、「バンコクは何回目ですか？どれくらい滞在しますか？」の問いに、「バンコクは２回目で、今回は３週間います」と答え、「３週間という長期滞在は何のためですか？」という質問に私も「宝石の鑑別の学校に通ってるんですよ。」なんていう、とても一般的な会話を繰り広げておりました。

すると、宝石という言葉に反応されたのは嬉しかったのですが、「今一番売れている宝石はなんですか？」という、なかなかに大味な質問をされ、「うーん、本当にそれは場合によりますが、大きな視点で見たときに、世界的に、取引額的なことでいえばやはりダイヤモンドでしょうか」とお答えをしました。

すると、彼から驚愕な質問が続いたんです。

「悪いダイヤモンドは全部ロシア産の偽物だ、って聞きました。自分の周りで詳しいひとはそう言っています。それは本当のことですか？」と。

？！？！？！

一体全体これは何を言っているのか、恐ろしいにも程がある誤解、食い違い、あるいは無知。

でも、おそらく、私が全くの門外漢な分野の専門家の方に何かを質問するときって、きっとこのレベルで私が頓珍漢なのかも、と思い直しまして。

私が順を追って話したのは以下の通り。

• ダイヤモンドに良い、悪い、という判断基準は存在しないこと

• 事実として、天然ダイヤモンドの産地におけるロシアは非常に大きなウエイトを占めていること

• 偽物、本物、という言葉は、その定義も含めて属人的であり、大きな誤解を招くので、私たちの業界内では使用しないこと

• もし、天然か、合成か、ということを言いたいのであれば、それぞれ同じ結晶構造をもつ炭素で構成された硬度10の鉱物である点では同じでも、その価値は比較にならないということ

• 合成ダイヤモンドの製造拠点という点では、ロシアではなく最近は中国をよく聞くよ、ということ

ここまでお伝えしたところ、彼は驚いて、「とても勉強になりました」という言葉をくださって。
それを素直に私は受け取り、少なくとも、これからダイヤモンドを言及するときには、悪いとか良いとか、本物とか偽物とかは言わなくなってくれたらいいなあなどと、余計なことを思ったりして。

そして私自身は、この会話の後、正直どっと疲れてしまって無口に。（せっかく貴重な週末にリフレッシュするためにお寺さんや遺跡めぐりしてるのに。少しでも私自身のストレスを排除するために、ホテル送迎付きの個人ガイドにしているのに。）

質問者の彼は悪気はないし、単にそのことについて知らなかっただけ。
そのシンプルな質問と、ネガティブではないフィードバック。
何の問題もない。
なのに私がこんなに疲れを感じてしまったのは、なぜだろう。

きっと。

『響いてなさそ～』って一連の彼のリアクションから勝手に感じてしまったことに、私が虚無感をさらに勝手に乗っけただけ。

自分で自分を疲れさせちゃっただけなのでした。

結局足早に回って、最短でホテルの部屋に帰り、日本から持参した緑茶を入れて、気に入ってスーパーで買ってあった八朔みたいなやつを食べて、回復。

結論、自分の部屋でゆっくりできたのが一番のリカバリーなのでした♡