ニコラス・カルペパーの窓｜金田アツ子《1》｜心に写す植物

｜SCRIPTORIUM｜菫色の写字室

2024年10月14日 15:19

　ニコラス・カルペパーがその著に記した、惑星と植物の対応関係。
　金田アツ子は各惑星が支配する植物と向き合い、その個性的な姿を摯実な筆で描き上げた。
　金田アツ子だけが伝えることのできる、見る者の心に写す、世界でひとつだけの植物標本。

　月の視線をあびている。

　明るい色の花びらを持つ罌粟は可憐な見た目に反して、その妖しげな実からはアヘンを生み出す。白薔薇は静かに場を制し高みから見守り、控えめに佇む睡蓮はあたりの熱をしずめて眠りを誘う。美しい白百合が毒を取り除き、落ち着いた存在感を示す菖がリラックスの魔法をかける。

　月が従える、八角形の額に収められた5種類の植物標本はクールに、そして凛とした美しさを見せている。

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　金星が輝きをもたらしている。

　愛らしい花を咲かせた雛菊は優しく傷を癒し、赤々とした実をつけ可憐な花を咲かせた苺は快方をもたらす。淡紅色の薔薇が華やかな存在感を示しながら、優雅な香りで見る者をゆったりと確実に引き寄せる。葵はその静謐な魅力で呼吸を穏やかにし、菫が少しずつ興奮を取り除き、癒しをもたらす。　

　金星が見つめる5種類の植物標本は、鮮やかに、誇りをもってその姿を見せている。　　

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　太陽の香りをまとっている。

　ふわりとした魅力を見せる西洋当帰が見るものの視界をクリアにし鮮やかな音をもたらす。美しい造形を持つ宿木が神聖な力で見る者を包み、目を奪われるほどの存在感を持つ芍薬が、悪い夢をそっと吹き飛ばす。優しく控える蕃紅花は鼓動に働きかけ、あどけない姿をみせる金盞花が心を穏やかにする。

　太陽が見つめる5種類の植物標本は、個性豊かな光を放ち、唯一無二の姿で魅了する。

　惑星は植物を支配するが、植物は時に惑星に抵抗し、時に共鳴しながら、絶妙な均衡を保って互いに影響し合っている。
　そんな植物の個性と惑星とのつながりに真摯に寄りそった、金田アツ子が見る者の心に写す、植物たちの息づかい。

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金田アツ子｜画家　→X
絵を描いて、個展やグループ展などで時々発表しています。静かな喫茶店とピアノの音が好きです。

熊谷めぐみ｜ヴィクトリア朝文学研究者　→Blog
子供の頃『名探偵コナン』からシャーロック・ホームズにたどり着き、大学でチャールズ・ディケンズの『互いの友』と運命の出会い。ヴィクトリア朝文学を中心としたイギリス文学の面白さに魅了される。会社員を経て大学院へ進み、現在はディケンズを研究する傍ら、その魅力を伝えるべく布教活動に励む。モーヴ街5番地、チャールズ・ディケンズ＆ヴィクトリア朝文化研究室「サティス荘」の管理人の一人。
X｜@lond_me

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作品販売期間
【10月20日（日）21時～22日（火）21時】
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