ニコラス・カルペパーの窓|marship《1》|石の中に夢見る
かつて、繰り返し見ていた夢がありました。
旅をしています。
雪煙の立ちこめる、林の中の道を、馬で進んでおりました。
銀鼠の空を背に、重たく垂れる冬木の枝。
あるいは、白く霞む遠くの常緑樹。
そんな風景がどこまでも続きます。
遠い異国のような、けれど不思議に懐かしいような、気がいたしました。
覚えているのはそれだけ。
どこから来て、どこへ向かうところなのか――夢から醒めたあとでは、どうしても思い出せません。
一人であったのか、それとも誰かが共にいたのかも。
手に――持っていた花は、毎回違っていたような。たとえば物思いに沈む三色菫。
もうその夢を見ることも絶えてありません。
けれどあの光景だけは忘れ難く、この泉を訪ったのはそういうわけでした。
夢で見た景色が水面に映るという、泉を。
水を掬うと、雫が凝って水晶になりました。
それが、この。
そう話してくれた人はもうおらず、形見としてその石を受け取ってからというもの、私も同じ夢を見るようになった。
夢の中で旅をしているのが私なのかあの人なのか、それは些細な問題であるように思われる。
私たちは石の見る夢の中に閉じ込められた、インクルージョンなのではあるまいか。
その人とは泉のほとりで出会った。
夢で見た景色が映るという泉をそのとき私が訪れたのは、物心ついてから一度として、夢で見たものを覚えていられたためしがなかったからで、自分がどんな夢を見ているのだろうと覗き込んだ水面にも何も映らなかった。
しかしその泉から持ち帰った雫に、近頃、景色が浮かび上がってきて、それは夢で見る景色なのだった。
そう記された手紙は、鈴蘭の印章を捺した封蝋で留めてあった。
鈴蘭は毒のある花。
それゆえに、「秘密を守る」という意味を持ち、機密事項の伝達に、また秘められた手紙のやり取りに、鈴蘭の印章が用いられたという。
しかしこの手紙にどんな秘密が隠されているというのだろう?
そんな、とりとめもない話を幼いわたしに聞かせてくれた人は誰であったのでしょう。
思い出すことはできないけれど、その日摘んだ花はいまもわたしの指を飾っています。
勿忘草の花の上で約束をすると、花はたちまちしろがねに変わり、約束が果たされるその日までを見届けるのだと、教えてくれたのもその人であったはずです。
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作品販売期間
【10月20日(日)21時~22日(火)21時】
BASE【15%OFFクーポン】利用可能(*諸条件あり)
作家名|marship
作品名|デンドリティッククォーツのペンダント
silver925・デンドリティッククォーツ
作品サイズ|40cm
制作年|2024年(新作)
*オンラインショップに別ショット画像掲載
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作家名|marship
作品名|デンドリティックアゲートのリング
silver925・デンドリティックアゲート
作品サイズ|9号・11号・13号
制作年|2024年(新作)
*オンラインショップに別ショット画像掲載
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作家名|marship
作品名|すずらんのフォブシール
silver925
作品サイズ|45cm
制作年|2024年(新作)
*オンラインショップに別ショット画像掲載
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作家名|marship
作品名|勿忘草のピンキーリング
silver925
作品サイズ|1号~10号対応(ご自身で調整してご使用ください)
制作年|2024年(新作)
*オンラインショップに別ショット画像掲載
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