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ニコラス・カルペパーの窓|古典技法 KANESEI 《1》|星を仕舞う

 星を、収めるための函ですよ。

 昔からその地方では時々、落ちている星を拾うことがあるそうです。
 いつ落ちてきたものかはわかりません。
 昨夜落ちたばかりの流星なのか、それとも何万年も土の中に埋まっていたものか……。
 落ちてくるところを見たものはないそうです。

 ですからそこでは、函造りがさかんなのだそうです。
 なぜって、拾った星を仕舞うためですよ。
 星をそのへんの空き箱に仕舞うわけにはいかないでしょう?

 たとえば、こういった。

 夜空のような紺青色の布で内張りしてあります。玉座にいます少年皇帝のように、この布の上に大事に座らせるのですよ。
 蓋には金泥で星を描き、金箔が貼られています。これもすべて、地上に落ちた星を歓迎するため。

 ほら、これも星の装飾がほどこされているでしょう?

 まるでまばゆい黄金色の星空のような――
 星は本来、星空にいるものですもの。
 星がいま空にいるものと勘違いして、長く留まってくれるようにと、函をうつくしく飾るのだそうです。

 これはだいぶん古いものですね。

 金色のリボンを十字にかけたようなこの意匠は、函が勝手に開いてしまわぬようにとほどこされるものだそうです。
 この函に収められていた星は、あまりにまばゆいので厳重に仕舞っておかなくてはならなかったと聞きます。
 蓋を開けて中を見られる者は限られていた、と。

 草花が描かれたものもありますね。

 地上にもこんなに美しいものがあるのだと知ってもらえれば、星はこの地に憩うてくれるだろうと考えたそうです。
 植物は天体の親類のようなものですから。

 祖父がその地方を旅した時に手に入れたものと聞いております。
 
 でも、その地方の外の者には、中に入っているという星の姿は見えないのだそうです。  

古典技法 KANESEI|古典技法額縁制作・修復・小箱制作室 →HP
イタリア・フィレンツェで額縁制作と修復を学ぶ。中世ヨーロッパより伝わる古典技法をベースに、フル・オーダーメイドの額縁、純金箔やオーナメントなどで装飾した小箱を制作。 
横浜の古典技法アトリエ「Atelier LAPIS」にて額縁制作と卵黄テンペラ画模写の指導も行っている。 

川野芽生|小説家・歌人・文学研究者 →Linktree 
1991年神奈川県生まれ。2018年に連作「Lilith」で第29回歌壇賞、21年に歌集『Lilith』で第65回現代歌人協会賞受賞。24年に第170回芥川賞候補作『Blue』を刊行。他の著書に、短篇小説集『無垢なる花たちのためのユートピア』、掌篇小説集『月面文字翻刻一例』、長篇小説『奇病庭園』、エッセイ集『かわいいピンクの竜になる』、評論集『幻象録』、歌集『人形歌集 羽あるいは骨』『人形歌集II 骨ならびにボネ』がある。2024年7月、第二歌集『星の嵌め殺し』刊行。



作品販売期間
【10月20日(日)21時~22日(火)21時】
BASE【15%OFFクーポン】利用可能
(*諸条件あり)

作家名|古典技法 KANESEI
作品名|stelle-1

桐木地小箱にボローニャ石膏・赤色ボーロに純金箔水押し・メノウ磨き・アクリルガッシュで彩色・アンティーク仕上げ 
作品サイズ(外寸)|縦8cm×横8cm×高さ2.4cm 
作品サイズ(内寸)|縦6.1cm×横6.1cm×高さ1.3cm 
制作年|2024年(新作)

作家名|古典技法 KANESEI 
作品名|stelle-2
 
桐木地小箱にボローニャ石膏・赤色ボーロに純金箔水押し・メノウ磨き・ 点打ちで星模様装飾・アンティーク仕上げ
作品サイズ(外寸)|縦5.5cm×横5.5cm×高さ2.5cm 
作品サイズ(内寸)|縦3.6cm×横3.6cm×高さ1.4cm 
制作年|2024年(新作) 

作家名|古典技法 KANESEI 
作品名|croce-1
 
桐木地小箱にボローニャ石膏・赤色ボーロに純金箔水押し・メノウ磨き・パスティリアと線刻で装飾・アクリルガッシュで彩色・アンティーク仕上げ
作品サイズ(外寸)|縦5.5cm×横5.5cm×高さ2.7cm 
作品サイズ(内寸)|縦 3.6cm×横3.6cm×高さ1.4cm 
制作年|2024年(新作) 

作家名|古典技法 KANESEI 
作品名|ghirlande-1
 
桐木地小箱にボローニャ石膏・アクリルガッシュで彩色・アンティーク仕上げ
作品サイズ(外寸)|縦5.6cm×横7.8cm×高さ4cm 
作品サイズ(内寸)|縦3.7cm×横5.8cm×高さ2cm 
制作年|2024年(新作) 

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