【声劇台本】035「あまやどり」

同窓会。みなさんは行く派?行かない派?

私はすっかり行かない派。

でも、今日のお話は、同窓会に参加した女性のドラマです。どうぞ!

■配役
山本紗代ちゃん(20)大学生
木村くん(20)大学生
男子(20)大学生

■本編
紗代のMO「中学の思い出は思い出のまましまっておくのがいいんだって。本当はわかってる。でも、やっぱり木村君に会いたくて。おしゃれして5年ぶりの同窓会に来てしまった。でも木村君の姿は見えなかった」

男子「きれいになったな。ええと……」
紗代「山本です……」
男子「そう。山本な! あー。俺、見る目なかったわー。あのころのお前、クラス隅で堅物メガネの読書女子だったじゃん。超暗くて怖かったっていうか」
紗代「そ、そうかもね……」

紗代のMO「この酔っぱらい男子なんなんだろ! 君は私の名前を覚えていなかった。でもね、私も君の名前は覚えていないからおあいこなのだよ。私が覚えているのは、木村君の名前だけ」

紗代「私、明日朝一で大学の授業だから帰るね!」
男子「もう? なんだよ。あー、名前……」
紗代「山本だよ。またね!」

紗代のMO「綺麗になった私を木村君に見てもらう作戦は失敗に終わった。会場をでると、急な雨が降ってきていた。こんな時に、傘なんて忘れたよ……私はとりあえず雨宿りすることにした。すると隣で雨宿りしている男性がいた。それは」

紗代「き、木村君!」
木村「え?」

紗代のMO「彼は全然変わっていなかった。というか、私の想像していたとおりの大人になっていた」

紗代「わ、わたし……」
木村「あぁ……山本さん?」
紗代「そ。そうだよ! よくわかったね」
木村「え? ふつうじゃん? 同窓会楽しかった?」
紗代「あ。うん。まあまあかな」
木村「帰えるの?」
紗代「うん……」
木村「そっか……」
紗代「木村君は? まだ来てなかったよね? 入らないの?」
木村「俺は、いいかなって。特に会いたい奴いるわけでもないし。でも、雨降ってきて足止め」
紗代「なんか、昔も、こんなことあったよね」
木村「え?」
紗代「雨宿り」
木村「あー、あった。雨宿りするときは、いつも山本が隣にいたよな。それでずっと一緒に空見上げて。しりとりとかしたよな」
紗代「そうそう」
木村「今日もしりとりするか?」
紗代「久しぶりに?」
   笑い会う二人。

紗代のMO「二人で見上げる雨の夜空は、あのころの私たちに続いている。そんな気がした」

(おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。