UGSF的ネビュラスレイ
A.D.2325年、UGは植民星であったアウストラル7星系の諸惑星の独立を承認。諸惑星は統一して連邦政府を設立し、UG加盟国の一員となる。
そして連邦内惑星国は軍の放棄を決議。各惑星軍の間には決議に対する賛否があったものの、軍は連邦政府の元に統合軍として再編された。
資源は比較的豊富であった為に、中央からの積極的な投資が続き、新興国として順調に経済は発展。独立から60年、連邦は豊かさと平和を享受する。
だが新興国特有の問題であるインフラなどの社会資本の乏しさや人的資産、労働力の不足を、それらが揃っている軍に頼った為に、中央からの投資の受け皿となった国営企業は軍組織に組み込まれていった。
軍は投資された富を、防衛費として中央に環流。UGSFのドクトリン変更によって仕事を失った独立系企業のみならず、2大コングロマリットまでなだれ込み、アウストラル7統合軍は、UGSF一個艦隊レベルにまで膨れ上がる。
A.D.2385、UG及びUGSFはアウストラル7の状況を憂慮、かねてから進めていた戦力の再編という名目でアウストラル7星系統合軍をUGSF直隷下に置く事を決定、星系連邦政府もUGの方針を支持し、具体的作業を詰める交渉に入った。この頃になると軍内部で賄賂、横領が横行し、経済成長が鈍化し始め、政府も現状を是正する必要に迫られていたのである。
統合軍は当然UGの決定に反意を唱える。星系連邦議会は、暴走気味の軍への危惧とUGの内政干渉への反発とで二分。星系政府は困難な舵取りの末、7年の経過措置と星系内へのUGSF部隊の駐留で交渉を妥結。議会も僅差ながらも過半数でUGとの条約を批准し、軍もまた議会の決定に従うかに見えた。
翌A.D.2386、惑星サンドヴァンで星系政府とUGに対する不平から、惑星駐留軍が決起しサンドヴァンを制圧する。星系連邦政府は事態の収拾を図り、統合軍に反乱の鎮圧を下命。統合軍は首都星駐留軍を中心とした制圧軍を編成、サンドヴァンに急派した。
ところが空になった首都星に、周辺惑星から駐留軍が殺到。軍は主要施設を制圧すると、政府の効力停止と議会の解散を宣言、独立維持評議会を発足させると全権を掌握した。これこそは統合軍が作り出した状況、罠であった
一方、釣り出された形になった首都星駐留軍はクーデターに反対する勢力を結集し、同じくクーデターに参加しなかった惑星マリナーク駐留軍と合流、抵抗軍を組織する。だが独立派統合軍はいち早くマリナークに派兵、激しい戦いの末、戦力差で劣る抵抗軍を敗走させるとマリナークを破壊するという暴挙に及ぶ。戦死者は双方合わせ15000名、最後まで避難民の指示誘導をしていた民間人の殉職者240名。惨劇は「ロストマリナーク」の名で人々の記憶に刻まれる事となった。
辛うじて首都星を脱出できた政府要人は、抵抗軍と共に星系最外縁の惑星エヴァグレネスに撤退。UGに援助を求めた。
UG政府は民間人の犠牲を伴う可住惑星の破壊に衝撃を受け、UGSFの派兵を検討。だが議会は統合軍に軍事供与を行っていた企業によるロビー活動により、むしろアウストラル7の権利を侵害した政府の方策を非難する声が上がり政府は対応に苦慮。UGSFとしても、問題となっていた統合軍のリスクが、独立派と連邦派という対立する勢力に二分された事で、アウストラル7に関与する動機を失っていた。
さらにUG、UGSFともに、同年に発動したイーリック計画にソフト、ハードの全資源を集中しており、アウストラル7の問題は優先順位が大幅に落ちていたのである。
結果、UGは条約で定めた経過措置7年を遵守し、エヴァグレネスの連邦政府に軍事援助を行うに対応をとどめる事となった。
星系連邦政府がUGから資金や兵器、軍事顧問の派遣と援助を受ける一方で、独立派統合軍もイーリック計画からはじき出された企業からの軍事供与を受け続ける。アウストラル7の内戦はUGの兵器が相打つ「コンペ」と化し、いくつかの新技術と引き換えに、多くの命が失われた。平穏の時代に飽いた獣に差し出された、それは生け贄であった。
A.D.2393、7年の経過措置期間が過ぎ、星系両勢力に条約に基づくUGSF艦隊の派兵が通告される。内戦の間に戦力を摩耗させた独立派統合軍は、エヴァグレネスの連邦政府を覆滅する事で条約の破棄を目論み、軍の精鋭を抽出し制圧軍としてエヴァグレネスへ送る。
一方エヴァグレネス抵抗軍はこれを好機と捉え、スコードロンアサルト戦術により敵前衛となる制圧軍を航宙機で突破、独立派統合軍中枢、機動要塞を急襲する『オペレーション・ネビュラスレイ』を発動させるのであった。