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人事トラブル相談所⑩「プラダを着た悪魔とセクハラ、怖いのはどっち?!~近年のハラスメント事情と過熱ぶり~」
こんにちは。
彼女と同棲している時、帰宅してリビングに「ゼクシィ」が置かれていたら、「ゼクハラだ」と言う気がしてやまないプラダを着た悪魔の人事です。(同棲はしていませんが・・・)
海外ブランドもここ数年で高くなりましたよね・・・汗汗
ところで・・・
最近、TVドラマでドラゴン桜が再開されましたが・・・
「バカとブスこそ東大に行け!」
これって・・・人事目線で見た時、ハラスメントになりませんかね?笑
バカ=過度な人格否定
ブス=容姿を全面的に侮辱
まぁ、ドラマなので1つのキャッチーなネタとして通っているんでしょうけど、今のご時世職場でこれを言いすぎるとちょっと危険な臭いがしてきますよねー( ゚Д゚)
「自分、バカだから東大行きたいです!」
「私、ブスなので東大行かなきゃダメなんです!」
とか、こういう返しが普通になされてるなら、お互い空気読んで上手いことプロレスやってるなー!と、ニタニタ笑って人事も鼻ほじってられるんでしょうけどねーー(*'▽')
最近、ハラスメント研修の依頼とかも増えてますし、会社側の危機感も以前に比べて上がっているような気がします。
いつからか、世の中がこんなにハラスメント大国(地獄?)になってしまったんでしょうか・・・管理職からは「これじゃコミュニケーションが取れないよ」と嘆きがよく聞かれますね。
今のご時世ハラスメントが許されるのは、ダウンタウンの浜ちゃんくらいじゃないでしょうか?!
昨今のハラスメント事情
と、勢いよく書きはじめたものの・・・
結構ハラスメントのネタって、鉄板なんですよね・・・。
男性が卑猥なことを言った、やった!
女性が訴えた!
セクハラ認定!
賠償!
懲戒!
勝訴!(パチパチ)
以上、終了。(チーン・・・orz)
と、一般的な事例や判例を並べてもつまらないので、いつものようにそういうお話は弁護士先生あたりにお任せしておきましょう!(∩´∀`)∩
少し会社側の視点に立って、きちんと考察をしてみたいと思います!
(いつもそうなんですけどねw)
令和3年にハラスメントを受けた経験について厚労省より発表された報告によればパワハラ、セクハラおよび顧客等からの著しい迷惑行為について、過去3年間での勤務先で各ハラスメントを一度以上経験した者の割合は下記の通りになっているようです。
※一般サンプル調査(調査対象:全国の 20~64 歳の男女労働者 8,000 名)
パワハラ 31.4%
顧客等からの著しい迷惑行為 15.0%
セクハラ 10.2%
セクハラについては、やや減少傾向にあるようですが、結構パワハラの割合が高いなと感じます。
特にパワハラは業務上での線引きがかなり難しいので、上司としては「指導の範疇」であっても、部下からは「威圧的な言動」と取られるなど温度感が正直つかめないこともありますね。
ハラスメントは「受け手がすべて」というロジックがあるので、過敏になっている方もいるとすれば、多少のブレはあるのかなと思いますが、世の中で結構問題になり、罰が重いのはパワハラよりもセクハラです。
場合によっては、一発で懲戒解雇レベルの事件も多発しております。
(通常レベルのパワハラ訴訟について和解金相場は概ね100~200万程度)
余談ですが・・・人事界隈では・・・
セクハラをする人を「セ・リーグ」、パワハラをする人を「パ・リーグ」
両方ともコンプリートした人を「日本シリーズ」など揶揄します(*´з`)
プラダ事件(前編)
というわけで、今回はタイトルにもあるように、ひと昔前に起こったプラダジャパン社で起った事件をもとにハラスメントの境界線を見て行きたいと思います。
事件概要をザックリとまとめると・・・
人事本部部長Aが、シニアリテールマネージャー(店舗統括みたいなイメージでしょうかね)である原告女性Bに対しセクハラ発言をしたとして損害賠償を求めた事案。
問題となったAの発言は・・・
①他のブランドとわかるような服は着ずに、自社らしい恰好をしろ
②ブランドイメージにあった髪形をしろ
③痩せる努力をしろ
これについての裁判所の見解は・・・
①毎シーズン70万円(年間140万円)の衣装手当が支給される労働契約になっている中で、複数回CHANELの商品を身に付けて店舗に出勤することを注意するのは妥当(=社会通念上不相当ではない)
②店舗従業員には、服装、ヘアスタイル等のガイドラインがあり、店舗従業員の服装指導業務等を行う立場の者が業務において髪を含めて配慮の行き届いた身なりが必要と注意することは妥当(=社会通念上不相当ではない)
③体形に係る部分については、業務と直接関係があるとは言い難く、一般的にはそのようなことを従業員に伝える必要が生じる場面は想定し難く、配慮を欠いたことは否定できないが、他の経緯を考えれば精神的損害(慰謝料)を発生させるほどとは認められない(=違法性まではないがややグレー)
というように、Aの発言だけを切り取ると、秒でハラスメント決定!
と言いたくなるところですが、よくよく労働条件や社内ガイドライン、世界的に有名なファッションブランドなどを鑑みれば、これだけをもってハラスメントとは認定されないという妥当な判断と思いますね。
これは業界や職種の特殊性も考慮されるので、どの会社でも通用する理屈ではないですが、最近のなんでもかんでもハラスメント。という流れに飲まれないようにするためには非常に参考となる事例なのかと感じました。
プラダ事件(後編)
と、これだけで話が終わるなら、ふーん。なんですが・・・
これで終わらないのが天下無双のプラダさん。
ここからが本題でしょうか・・・
この事件、Bがプラダに対して仕掛けた事が何よりも問題。
Bは、下記の事項を外部に情報提供し、結果としてその内容がジャパンタイムズの記事として採用され、原告の実名を挙げて報道されました・・・
①社長が「年をとっている、太っている、醜い、不細工、プラダルックでない」として約15人の女性店長と副店長を排除するよう指示したと発言
②店舗スタッフが自費でハンドバッグの購入を強制されていると発言
➂社長が原告に対し「髪型を変え、やせることを求めている」と発言
そして、プラダから懲戒解雇を言い渡され・・裁判所の見解は下記です。
会社の信用、体面を傷つけることは明らかであるから、懲戒事由に該当するとしたうえで、原告のマスメディアに対する情報提供の主たる目的が、会社の業務改善等の公益目的であったと認めることはできず、むしろ、自己の立場を有利にするため世論を味方に付けようという目的であったとし、原告の情報提供には、根幹的な部分で真実性ないし真実と信ずるにつき相当な理由が認められないとして、懲戒解雇を解雇権濫用と評価することはできない
というわけで・・・懲戒解雇妥当です!
色々あったんでしょうけど、マスコミを使って貶めようとした魂胆があったのはまずかったですよね。。
そして、結果的にプラダジャパン及びプラダ本社から訴訟を起こされ・・・
情報提供行為とプラダジャパンの名誉を毀損し、商標価値を毀損する記事が掲載されたこととの間に相当因果関係があるなどとして、プラダジャパンに220万円、プラダ本社に110万円の損害賠償支払を命じられたとさ。
確かに、情報操作や民意の暴走については、ドラマ「リーガルハイ」で古美門先生(堺雅人)も強く言ってますからね・・・
本当の悪魔とは、巨大に膨れ上がったときの民意だよ。
自分を善人だと信じて疑わず、うすぎたない野良犬がドブに落ちると一斉に集まって袋叩きにしてしまう。そんな善良な市民たちだ・・・(後略)
これ、今のご時世・・・特にハラスメントの話になるとあるんじゃないですかねぇ。SNSの炎上もそうですし、タレントの不祥事から徹底的にやられるフルボッコ系に似てますよねー。
注)本プラダ事件は下記の判例をもとに記載しております。
東京地判平24・10・26LEX/DB25483355
東京地判平25・11・12判タ1418 号252頁
考察
プラダ事件は、逆に刺されたレアなケースではありますが、男女の縺れから発展するハラスメントや、言った言わない論争、本件のように話を大きくしちゃう盛りガールさん。などなど、会社も管理職もいつ刺されるかわからない時代になってきたのは事実です。
もちろん、ハラスメント行為は許されるものではないですし、日々のコミュニケーションの取り方にも十分注意をしておくことは言うまでもないですが・・・
労使関係ってあくまでも対等で進めるべきですし、労働者が騒いだら何でも引き下がってしまうのもやはり違うと感じますね。プラダのように時には徹底的に戦うことも手段として持っておく方がいいのかなと思いました。
長くなったので、そろそろ終わりになりますが・・・
本当に怖かったのは
「プラダを着た悪魔」でも「ハラスメント」でもなく・・・
プラダでしたね・・・・(;´・ω・
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