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不幸な国になんてさせない

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S.C.P. Japanの井上です。
今回は最近話題になりました「子どもの幸福度」について書きたいと思います。

ユニセフは日本を含む先進国や新興国など38カ国を対象に各国のさまざまなデータをもとに子どもの幸福度をはかる調査を7年ぶりに実施し、9月3日にその結果を発表しました。

【前回2013年に実施された「子どもの幸福度」についての調査報告書(日本語)】

【今回実施された「子どもの幸福度」についての調査報告書(英語)】

今回のユニセフの調査では、身体的健康・精神的健康・スキルの3つの観点でそれぞれまず順位がつけられ、それら個別の順位を合わせて総合的に「子どもの幸福度」ランキングがつけられました。

日本は総合評価は38カ国中20位でした。報告書には総合順位の根拠となる各項目(身体的健康・精神的健康・スキル)の内容も細かく書いてありましたので紹介したいと思います。

身体的健康(日本38カ国中1位)

先日この報告書の発表を受けて、国内のニュースでは「日本の子ども達は不幸な子ども達」のように大きく取り上げられてしまいましたが、実は身体的健康の部分では堂々の1位でした。身体的健康では、子どもの肥満率や、死亡率が評価の基準となりました。日本は他国と比べて肥満の子や亡くなってしまう子が少なく、身体は健康である子が多いようです。
まだまだ子どもの運動頻度の低下は国内で問題ではありますが、この結果は、日々子どもと運動に関わる体育の先生やグラスルーツ分野で健闘されているスポーツ関係の方々の努力の賜物だと思います。
また、報告書内の別の調査(Most rich countries対象)では外で遊ぶ頻度が高い子は、低い子に比べて幸福度が高まるという結果も出ており、運動やスポーツの推進は「子どもの幸福度」という観点からも引き続きとても大切な要素となります。

精神的健康(日本38カ国中37位)

一方、精神的健康の部分はなぜこれほどまで順位が低いのでしょうか。精神的健康は「生活に対する満足度」と「子どもの自殺率」に焦点が当てられました。日本は、生活に対する満足度が高い子が全体の62%で、最下位のトルコに続き下から2番目でした。
イギリスのある研究では、この「生活に対する満足度」の低い子どもは、満足度の高い子どもよりも高い確率で、家族間で争いが起きていたり、自分を表現することができないと感じていたり、いじめにあっていたりすることがあると言われています。この「生活に対する満足度」というかなり主観的な指標が、実は内在する別の問題を明らかにする可能性があり、決して軽視してはいけない指標の一つのようです。
ただ、日本の子は、「生活に満足しているか?」と聞かれると、「そうでもない」と答える子が単に多いのでは?という考え方もあると思います。その点も踏まえて、次の自殺率をみてみましょう。
自殺率については、日本の15~19歳の青少年10万人当たり7.5人が自殺を試みているという結果がでました。最も自殺の少ないギリシャは10万人当たり1.4人でしたので、明らかな差があります。自殺の少なさでいうと日本は30位でした。一方、先ほど生活の満足度で最下位だったトルコはどうでしょう?トルコは10万人当たり2.4人という結果で、自殺の少なさで言うと全体の4位でした。トルコは子どもの生活満足度は低いけれど、自殺者は少ないのです。日本は生活満足度が低く、自殺者も多い。
やはり深刻に考えなければいけない問題であることは明らかなのです。

これら2つの観点を総合して、日本の子ども達の精神的健康は38カ国中37位という結果になりました。

スキル(日本38カ国中27位)

スキルの部分は「学力」と「社会スキル」を基準に評価がされました。「学力」では15歳の時点で基礎的な「読む力」と「計算力」が身についている子の割合をみます。日本は全体の73%が基礎的学力を身につけることができており、順位も上から5番目でした。もちろん他国と比べて満足するのではなく、すべての子どもが基礎的な学力を身につけ、個々人のもつ可能性を最大限発揮できるよう、引き続き努力が必要なことは言うまでもありません。

社会スキルの方では、「気軽に友達を作ることができる」と感じている15歳の子の割合が評価基準となりました。学力では高い順位を取っていた日本ですが、約3割の子ども達が「気軽に友達を作れない」と答え、他国と比べても人間関係を築くことに自信のない子が多い印象です。
日本の青少年の自信や自己肯定感の低さは、以前より課題としてありました。日米中韓研究機関による「高校生の心と体の健康に関する調査報告書(2018)」のアンケート調査では、自分を価値ある人間だと思うか尋ねたところ、「はい」と答えたのはたったの44.9%でした。アメリカ、韓国、中国の高校生はこちらの質問に80%以上が「はい」と答えています。

話が少し逸れましたが、これら学力と社会スキルを総合し、スキル分野では日本は37カ国中27位という結果になりました。

総合順位(日本38カ国中20位)

上記3つの観点から総合して、「子どもの幸福度」において日本は38カ国中20位という結果になりました。前回2013年の報告書では、物質的豊かさ・ 健康と安全・教育・日常生活上のリスク・住居と環境、という5つの項目で総合評価されたので今回とは少し異なりますが、日本は前回31先進国中6位でした。(オランダは前回も今回もトップです。)順位は重要ではありませんが、この報告書の内容については重く受け止めなければならない点も多くあると思います。

本報告書はコロナ以前に取られたデータをまとめたものです。日本国内はコロナの拡大によって、これまで見て見ぬふりをしてきた問題が様々な形で浮き彫りになり、格差は広がるばかりのように見えます。今年の8月日本では自殺者数が1800人を越え、昨年の同じ時期と比べると246人も増えています。コロナとの因果関係について国は早急に分析にかかるそうですが、同様に子ども達が置かれている状況も、悪化している可能性が十分にあるのです。

しかし、一方で、コロナをきっかけに子ども達の周りで良い変化も起きています。学校閉鎖期間や分散登校期間があったことをきっかけに、改めて少人数学級やオンライン学習の必要性に注目が集まり、教育現場ではすべての子ども達の学習の充実のため、新たな取組が生まれているということもあります。

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