立川志の輔殺人未遂事件
先日のこと、
落語を聞きに行ってきた。
立川志の輔独演会。
コアでやる気のあるファンが多いのだろう、コロナ対策で客席が市松模様になり、
半分の人数の時もあったが、会場は常に活気が満ちている。
今回はもう制限はなく、会場は満員に入っていた。
お弟子さんの落語を2席聞いて、志の輔さんの新作落語。
中入りを挟んで古典落語。演目は「唐茄子屋政談」だった。
40〜50分ほどの人情噺で、落語ファンにはメジャーかもしれないけど、
初めて聞く人も少なくないだろう。
ちなみに唐茄子とはカボチャのこと。
話は進んでクライマックスへ。
物語のあらすじは端折るけど、若旦那が唐茄子を売る行き先で、たまたま助けた子供連れのおかみさんを、因業な大家が苦しめる。
絶望したおかみさんは、夕暮れ時梁に紐をかけて首を括る。
(おかみさんは長屋のみんなの助けと医者の腕で一命を取り留めてハッピーエンド、念の為)
会場全体が呼吸を忘れたような静寂の中、
プルルルまさかの携帯電話の着信。
その客は前列、多分2列目とか3列目くらいか。
ただ、今回の私達(会場のお客さんみんな)はエラかった。
着信・・と思ったものの、ここで集中力を途切れさせたくない!!
という気概があった。
着信は一旦なかったことにして、意識は話だけに向けるのだ。
ところが、数分後再びプルルルル。
1回目で電源を切ることが出来なかったのだろう。
会場全体が涙をのむ場面で、なんとなんと3回目のプルルルル。
しかも長めのプルルル。
カーテンコールで志の輔さんが見解を述べていた。
見解とともに苦言を呈していた、と私は感じた。
地方では良くあるらしく、公演が終わる時間を見計らって迎えに来た家族が電話してくるのだと。
だから落語のオチ寸前、静まり返ったところで鳴る事が多いのだと。
最前列に席をとり、演者の真前で携帯を、涙が溢れようとするその瞬間に3度鳴らす。こんな事があるのだとしたら、落語家を狙ったテロリストに思える。
まあまあ、おそらくは携帯の操作に慣れていない年配の方だろう。
着信の音量が若者の音量ではなかった。
会場では、再三に渡り、場内アナウンスで注意をしていた。
始まる前はもちろん、休憩後にも、
「休憩中に携帯を使用した人は、電源切るの忘れてる可能性があるから、もう一度電源の確認をして、ちゃんと切ってくれ」この内容を丁寧な言葉で。
春風亭一之輔さんが以前新聞かな?書いていたのは
「噺家殺すにゃ刃物は要らぬ、スマホ一発鳴らしゃいい」だった。
NHKホールはじめ、ホール全体を圏外にする装置を導入している所が増えているそうな。それは電波法も問題なくクリアできるのだ。
そもそも、全員が電源を切るのだから、ホールを圏外にするのと結果は同じではないだろうか。
あとはアラームを設定している場合は鳴ってしまわないように気をつければ良い。
何百人もの客:噺家1人。
全身全霊をかけた芸を、一体何だと思っているのか、
私は会場に対して憤りを感じる。
クライマックスでそこそこの音量で、目の前で3度も携帯鳴らされて、
それでも話から逸らさずに最後まで持っていけたのは志の輔さんだからに他ならない。
ホール側も、着信の人も、お客さんみんなも、志の輔さんに救われたのだ。
生半可な落語家(具体的な人はわからないけど)だったら、とうにやられている。
今回のようなことをいつまでも繰り返していないで、早急に装置を導入してほしい、と切に願う一般市民であった。