【マンガ感想】松本先生の実力がバケモノ級とか【怪獣8号/松本直也】
たまたま1巻を読んだらめちゃ面白くて5巻までkindleで購入してみたので感想を書きます。
また、どうして面白いのかにも焦点を当てていきます。
ザックリ評価
ストーリー★★★★★
画力 ★★★★
マンガ技術★★★★
この評価はジャンプ本誌の連載陣と同じ感覚で評価しました。
つまり本誌に載っていても全く遜色ないと思っています。
星の目安は以下。
星1:下手い。
星2:悪くはない。このレベルなら満足。
星3:良い。このレベルなら嬉しい。
星4:非常に上手い。
星5:神。
ストーリー★★★★★
素晴らしいです。
内容自体はどこにでもある怪獣・変身ヒーローものですが、しっかりしています。
これはドロンドロロンの1話の感想記事でも書いたことなのですが、パクりとか無粋な事を言うつもりはありません。しっかり作り込んでいるので印象が良いです。
そしてやはり二項対立ものなので、東京グールや進撃の巨人のような対立とドラマを期待できます。
東京グールでカネキ君が正体バレしても物語が終わらないように、こちらも正体バレしてからが本番みたいなところもあると思います。
実は星4と迷いました。でも読み返しても悪い点が見つからなかったので甘く星5にしました。
おそらく一読した時点ではオリジナリティとかそういう部分に強いインパクトを感じなかったから迷ったんだと思います。
今回は面白かった!という気持ちが記事を書くスタートになっているのでそのご祝儀とでも思ってください。
あと、1巻の作話の上手さがとんでもないので、その辺を加味しています。
下の『スピード感と作話』で触れます。
第一話について
ちなみにジャンプ本誌の感想記事でも新連載や打ち切り作品に対して記事に書く事があります。
それは第一話で主人公の目標や目的を示せたかどうかです。
本作はしっかりと「防衛隊員になりたい」、「亜白よりも格好良い隊員になる」という目標が示せています。素晴らしいですね。
さらに上で書いたようにそれを補強するカフカの性格も立てられていますから、相乗効果でより良いものになっています。
第1話では主人公カフカと後輩市川くんのキャラ立てをしました。
特に自分の能力を超えた状況でも他人を助ける選択をする『主人公らしさ』を演出することで、後に来る怪獣化のインパクトを上げつつ主人公のポジション(人間側)を自然に補強しています。
個人的にこの展開を「ヒロアカスキーム」と呼びたいです。
というのもヒロアカの第一話の完成度がヤバいからです。
その事を記事にしておきました。
こちらもぜひ。
本作の第一話の構成も自分の能力を超えた状況でも他人を助ける選択をする『主人公らしさ』を強調していて良かったという話です。
そしてその行動が防衛隊員になるという目標(夢)にマッチしていて素晴らしいですね。
スピード感と作話
第一話から敵に立ち向かって変身。
第二話では怪獣に変身して相手の怪獣を倒して人助けをしています。
第六話では人型の超強そうな敵がいきなり出てきています。
このようにスピード感がエグイです。
そしてそれを実現しているのはギャグ要素です。
というのも、序盤にシリアスになりそうな雰囲気だったり設定説明をしないといけない状況になった場合に、ギャグで誤魔化してどんどん進んでいきます。
これが妙手で、読者にあまりストレスを与えずにスピード感を出せていると思います。
このようにいきなり怪獣に変身した時もギャグで押し切ってます。
真面目にやろうとするとシリアスになったり、なぜ怪獣化したのか?みたいなミステリー要素が出てきてしまいます。
そうすると、まずは
市川くんに信じてもらう所から
なぜ怪獣化したのか?の疑問を考えたりして
怪獣化を制御する話をやります
この3要素だけで何話かかるでしょうか?
下手とすると2~5話くらいかかりそうです。
こうなってしまったらもう本誌の打ち切りマンガと遜色ないですねw。
これを回避する作戦として本作ではギャグで押し切っています。
そして制御する話の前にそのままこのページに繋がります。
絵的に格好良いです。
そして、それ以上にギャグで押し切ってこの展開に繋げて、怪獣を退治して第二話を終わらせたことが凄い。上手い。
第三話からは、しれっと生活に戻っている話から始まるところも省略の仕方が良いですし、ふいに変身してしまっている事をギャグにして乗り切っています。
ある程度面白くないと通用しない方法ですが、本作では面白く上手くいっています。
これが本当に凄くて、この大胆なプロットや作話は誰にでも出来る事ではありません。
そしてこの選択(どこを描写してどこを省くか、どこをギャグにして後回しにするか。)に先生の個性が出ています。
つまり、表面的な設定以外の作話にオリジナリティがにじみ出ていると私は思いました。
キャラクタの掘り下げ
敢えて一度下げてから上げる展開が上手で、何度か使用しています。
こんなの好きになるやろ!!
市川可愛いやつめとか思って読んでいました。
これ以降、嫌な奴ムーブは出てきません。完全に狙ってやっていますね。
格好良いやん。定番のパターン。
ゲーム好きやオタク要素は定番ですが、途中からなあなあになる事も多い設定。
キャラクタ全てにやるのではなく選んでやっている印象です。
ここでは上げませんでしたが、キコルも若干下げから入っています。
一度下げる事でキャラ立ての話に緩急が出来て見せ場と合わせて上手く読者のコントロールが出来ていると思います。
こんなの分かってたって好きになっちゃうんだから。
画力 ★★★★
怪獣の描写が良いですね。
迫力があってデカいのも小さいのも良いです。
読者がびっくりする展開でしっかり作中のキャラクタもビックリするのも良いです。
こういう読者の感情に合わせたリアクションも少年マンガには重要です。
中にはどういう感情になって良いかまだ分からない小中学生も居て、読んだ時にその感情で良いんだと安心しながら読むことが出来ます。
簡単に言うと分かりやすい。
デカい怪獣が良いという話をしましたけど、デカいと言えばおっぱい。
デカければ良いわけではないかもしれませんが、良いモノがデカかっただけである。
水が溜まっている描写があまりにもマンガ的で素晴らしい。
あまりにも下品なので言及はしませんが、良いのは上半身だけでは無いですよね。
やはり、少年マンガなので小中学生はこういう描写があると継続して読んでくれます。2話の冒頭に入れている点からもそういう意味でしょう。
たぶん世の小中学生は20秒くらいガン見したはずです。
私は60秒くらいガン見しました。
こういう絵を描く意味、入れる意味を理解していると感じられたので好印象です。星4にした理由です。
破廉恥な描写が苦手な方は不快になったかもしれませんね。
少し話を戻すと特殊なアングルでもキャラクタの骨格がブレないのがとても良いです。
人間も上手い。骨格が触れることもほぼ無いし、色々なアングルで描けるのが良い。
こういうアングルで描くのって練習していないと出来ないですよね。そこに人を自然に配置して描くっていうのは凄いです。
キャラクタや人物のクオリティが安定していて素晴らしい。
微妙な点を強いて上げるならライフルの構え方でしょうかね。
この銃が見えている側からの絵があんまり現実的では無いです。
めちゃくちゃ細かいんですが、銃の柄(ストック)は腕ではなく肩にあてます。
こう言うことを書くと、プラネテスを思い出す体になってしまったんですが、ストックを肩に当てないと銃が体から離れてスコープを覗けないはず。
スコープが付いている以上肩に付けてほしいです。
これだけだったら記事には書かないです。
というのも銃の他のアングルの絵はとても自然なんです。
上手なので資料か何かで勉強しているはずです。
体を正面にしたアングルでは資料を参照しない事ってあるでしょうか?
キャラクタの顔が一番良く見えて描きたくなるアングルのはずです。
上でリンクを張ったように検索するだけで写真がたくさん出てきます。
この辺りにめちゃめちゃ違和感があります。
考えられることは大体二つ。
資料を見ているが、その資料が間違っている。
後々、それを使った設定を構想がある。
流石に後者ってことは無いでしょうから、私は先生の使っている資料が間違っている予想です。
マンガ家向けの資料ってちゃんと見たこと無いんですけど、そこから間違っているパターンって実際あるんでしょうかね?
分からないんですけど、ここまでちゃんと描ける先生で肝心の正面の絵で間違っていることに違和感しか無くて記事にも書きました。
グーグルの画像検索にもヒットした本を読んでみましたが、少なくともこの本のポーズは正しそうでした。どういうことなんでしょうね?
ちなみにこの本はポーズ集というより、銃の基礎知識が充実していて面白かったですw。
仕組みとか部品の名前とかが、たくさん載っていてそういう単語も物語に重厚感を出すために参考になるかもしれません。
銃好きな素人の私でも楽しめました。
(でも36ページの⑤は嘘でしょ。弾切れしてホールドオープンしてるのにスライド引いちゃってますけど…。さっそく正しくない部分を見つけてしまいました。)
銃ごとの背景や価格・重さなどの情報もあって、マンガ家がヒントにするには素晴らしい一冊だとは思います。商用トレースもOKらしい。
(例えば、MP5は精度が良いが高価である。そのため特殊部隊のようなキャラクタに持たせると良いが、金欠の主人公やマフィアには向かないなど。)
マンガ技術★★★★
さて、話を戻しまして。
上でもアングルが素晴らしいと書きましたけど、構図やコマ割りもめっちゃ上手いです。
迫力のある大ゴマや見開きが最高で、痺れます。
引用したいコマがいくらでもある。凄い。
それだけでなく、バトルも分かりやすいです。
なぜこんなにも分かりやすいのか考えてみたんですけど、おそらく小さいコマの構図のセンスが抜群に良いからだと思います。
小さいコマに引きの構図で全身や大きな怪獣を入れて位置関係を示したり、ドアップの顔や部位を出して展開を助けたり、
本当にレベルが高いです。
上の画像でも、保科の顔 → 8号(引き) → 8号(ドアップ)と続いています。
保科の顔から保科の目線(8号)へと変わるので引きのコマが来て、8号の意識へと変わるのでドアップになります。
また、引きで描いた後寄るコマを入れることで、迫ってくるような速い動きを予想するので、今回の様な保科が迫ってくる状況にピッタリです。
松本先生やるやん。
さいごに
とにかく面白かったです。
今まで読んでいなかった事を後悔しました。
でもジャンプ本誌でも全く見劣りしない素晴らしい作品だと思います。
ちなみに6巻がもう少しで発売になります。
今週末2/26 9:00からamazonのセールがやるのでそのタイミングで予約しておくとポイントも付いてお得ですね。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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