トビタテ高校留学は何年生で行くのがいい?親の視点で考えてみる
文科省が民間企業と組んで高校生・大学生の海外留学を給付型奨学金で支援する「トビタテ!」。私の子どもは高校2年でトビタテ留学に行った。高校生部門に応募する場合、何年生で行くのがいいのだろうと親の視点で考えてみる。状況は人それぞれなので正解はないが、私の見方を記す。
まず、高校3年。ここを選ぶ場合、受験との兼ね合いが大学進学を考える人には大きな検討事項となる。
私が知るケースでは、冬の時期に留学期間を設定して大学は秋の自己推薦入試に絞るという選択をしたトビタテ生がいる。「自己推薦がダメだったらもう行くところなくなる」と言っていたらしいが、超がつく難関大学に見事合格し、進路を決めてから悠々とトビタテ留学に向かっていった。理想的な事例である。
でも、もしうちの子どもが同じようなスケジュールでトビタテに応募したいと言ったなら、私はそれを受け入れられるだろうか。自信がない。どうしても「もし自己推薦入試が上手く行かなかったらどうなるんだ」と心配してしまうだろう。
高3でのトビタテ留学は、内部進学で確実に系列大学に行けるというような場合はおすすめだ。また、18歳を成人としている国では、18歳になると自分で行える範囲(例えば1人で宿を取って泊まるとか)が広がることがある。これも利点である。
一方で大学受験をする場合は、留学期間によって2週間でも2ヶ月でも、受験勉強は日本にいる時ほど進められないだろう。子どもも親も、よほど自信があるか自己推薦に賭けるか、あるいは場合によって浪人してもいいと割り切るか、覚悟が必要になってくる気がする。
もうひとつ、高3でのトビタテ留学はスケジュールに注意が必要だ。トビタテは留学開始が7月10日から3月31日と指定されている。高校3年の場合、留学終了も3月31日までとなる(高校1, 2年は、3月31日までに現地で留学を開始すれば、留学終了は4月以降という日程も認められる)。このため、もし受入機関の都合だとか参加したいイベント・大会などが4月〜6月に開かれるといった場合は、高校3年生ではそのスケジュールに合わせられない。
このように高校3年生のトビタテ留学は、上手くいけば何の憂いもなく留学を楽しみ尽くせる可能性がある一方で、スケジュールの制約と、進学を考える場合は間近に迫る受験との兼ね合いをどうするかという課題が生じる。
次に高校1年生。トビタテで高校2年、3年のときに留学したい人は1月が応募締切となる。一方、高校1年で留学したい人の応募期間はちょうど今。今月1日に応募が始まり、締め切りが4月22日である。
中高一貫の学校に通っているならば高1での応募もさほど抵抗がないかもしれない。しかし高校入試を経て4月から全く新しい環境で高校生活を始める場合、学校に馴染み新しい人間関係を築くのと並行してトビタテ応募の準備しなければならない。
トビタテの書類は学校を通じて事務局に提出するから、入りたての高校で担当の先生を見つけて話を通す必要もある。ただでさえ応募書類の記載が大変なのに、さらに負荷がかかるということだ。なかなかハードだろう。高1で応募する人は、中学の時からトビタテ応募の決意を固めていることが多いのかもしれない。
私が知る事例では、高1でトビタテの選考を通り、留学には年度終盤に行くという子がいた。応募準備と面接を頑張って乗り切り、あとは新たな高校生活をしっかり送ってからトビタテに行くというスケジュールだ。これは3月〜5月頃の忙しさを乗り越えられるのなら、いい形態かもしれない。
さて、高校に入ったばかりで頑張ってトビタテ応募をすると、選考上の利点はあるのか?試しに、公開されている昨年度のトビタテ選考の結果から、「高校2, 3年」と「高校1年」の倍率を計算してみた。すると高校2, 3年は3.16倍で高校1年は3.15倍。ほとんど同じだった。
この二つのカテゴリーは採用人数も応募・選考スケジュールも全くの別枠だ。だから事後的に倍率が同じになるよう事務局側で調整したことはないと思う。私は「応募の準備が大変な高校1年の方が多少倍率が低いのではないか」と思っていたのだが、予想が外れた。中高一貫校に通っている子の応募が多いのか?それはわからない。
数値をみる限りでは、高校1年でも募集人数に対して高2、高3と同じぐらいの比率で応募する人がいる。高1で応募すれば、もし選に漏れてしまっても高2でまたチャレンジできるという利点もある。
でも自分の立場で考えると、私はもし子どもが高1のときにトビタテに行きたいと言ったなら「トビタテは来年も応募できるから、いまはまず高校生活に馴染むことを優先して」と言ってしまいそうだ。中学の頃からずっと高1でのトビタテ留学を目指して準備してきたといった事情があれば別かもしれないが。
高1での留学は、一貫校でなければ環境が大きく変わったばかりということに加えてもうひとつ気になることがある。自分の子どもがトビタテ留学をした上で感じることだ。それは、高1と高2で子どもの成長具合がかなり違っていたということだ。背の高さなど外面的なものでなく、考え方や行動から子どもっぽさが抜けてきたという意味で。
ここは子ども本人は気づかない部分だと思う。でも日々接している親には明確に感じられる。個人差が大きなところだとは思うが、うちの場合は高1ではなく高2でトビタテ留学することで、周囲への働きかけも含めより現地でより主体的に行動できたのではないかと感じる。
ということで、私の結論は月並みだが「一般的には高校2年がおすすめ」というものだ。ただ、高1や高3でも上手く工夫してトビタテ留学を実現している人もいる。高1、高3それぞれでの応募にも利点があるので、そのあたりの状況と自分たちの環境を考慮して考えるのがよいのだろう。
子どもが高校1年生の家庭は、まさに今、応募書類の準備をしているところもあるだろう。高校という新しい環境が始まったばかりの中でトビタテにも応募しようという覚悟と思いの強さを、応援したいと思う。
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