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仲間の葬式をする動物たち

米ワシントン大学で生物学を研究するカエリ・スウィフト氏によると、カラス、カケス、カササギ、ワタリガラスなどカラス科の鳥は知能が高く、鳴き声で呼び合ったり、集まったり、命を落とした仲間がいることを知らせたりするという。

非常に興味深い実験がある。カラスが巣をつくり、繁殖している場所に、仮面で顔を隠した約25人のボランティアが30分間立った。仮面を着けているのは、表情を隠すため。さらに複数のボランティアを同じ顔の人間に仕立てるためだ。

各ボランティアはカラスの死骸を持っているか、カラスの捕食者であるアカオノスリの死骸の近くに立っているか、カラスの死骸を持ってアカオノスリの死骸の近くに立つかのいずれかの行動をとる。さらに対照実験として、ボランティアがいない、もしくは何も持っていない場所も設定した。

カラスたちはほぼ例外なく、ボランティアと鳥の死骸を見たときに「騒ぐ」という形で反応した。仲間たちに向かって警告を発しているのだ。対照実験を含む4つの状況のうち、アカオノスリとカラス両方の死骸がある場合に最も大きく反応し、何も持たないボランティアには反応しなかった。


カラスが反応したボランティアは6週間の間、定期的に同じ場所に立ったが、何も持たずに立っているだけでも、カラスたちはボランティアが現れると騒ぎ出し、その後数日間にわたって警戒した。カラスの死骸を持った人間を脅威と認識したのだ。

さらに別の実験では、ハトの剥製を持つボランティアを追加したところ、カラスたちの反応ははるかに穏やかだった。カラスたちはほかの鳥よりカラスの死骸に敏感だということになる。

高い知能を持つのはカラスだけではない。ゾウもそうだ。2024年2月26日付けで学術誌「Journal of Threatened Taxa」に発表された研究によると、アジアゾウは死んだ子ゾウを埋葬している可能性があるという。

2022年と2023年にインドのベンガル地方北部で、5つの異なる群れが、死んだ子ゾウを灌漑(かんがい)用の溝まで引きずっていき、そこに埋めた事例が報告されていると、その論文では報告されている。

埋葬という行為は、動物の世界ではほとんど見られない。アフリカゾウ、アジアゾウ、そしてカササギは、死んだ仲間の死骸を草や枝で覆うことが知られているが、今回見つかったゾウの埋葬は独特だと、論文の著者であるインド森林局職員のパルビーン・カスワン氏とインド科学教育研究大学プネー校の上級研究員アカシディープ・ロイ氏は言う。

どの事例でも、子ゾウの脚は地面から突き出し、頭部や鼻、背中は土で覆われていた。このようなゾウの行動について、埋葬を意図的に行ったという十分な証拠はないとする見解もある。

けれども論文によると、ゾウは意図的に場所を選び、夜を待ってから「死んだ子ゾウを人間や肉食動物から離れた孤立した場所に運び、灌漑用の溝やくぼ地を探して埋めた」と考えられるという。

死後の検査では、子ゾウの背中に打撲が見つかっているが、骨折は確認されなかった。そしてその打撲傷は「子ゾウがある程度の距離を引きずられたこと」を示しており、骨折がないのは、子ゾウが溝に落とされたのではなく、注意深く置かれたことを示唆していると研究者たちは述べている。

脚が土の外に出ていることに関しては、特別な意味はなさそうだというのが研究者たちの見解だ。もし埋めた場所がもっと深かったら、ゾウたちは死骸を脚まで土で覆っただろうというのがその根拠だ。

打撲傷は子ゾウが引きずられた証拠である点には研究者たちは同意しているが、骨折がないのは必ずしも注意深く置かれたことを示しているわけではないという意見もある。

子ゾウが引きずられ、上下逆さまに置かれ、ほかのゾウが土を踏み固めたのだという仮説が立てられているが、詳しい事実については判断が難しく、さまざまな論議がなされているようだ。

ただ動物が仲間の死を弔うのに、こういった埋葬という形が見られるのは注目すべきことだと思う。死を悼む気持ちは、人間だけでなく、多くの動物たちがもつものなのかもしれない。


参考と引用:ナショナルジオグラフィックス


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