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なぜ同じはずの景色が違って見えるのか : 人がフィルターを通して現実を見ること

海辺で潮風に吹かれながらハンモックでくつろぐ。。。とまででなくても、ハンモックに横たわるだけで脳は騙されて落ち着いた状態を保つ。そんなちょっと変わった脳の研究をしているのが、名古屋大学教授の川合伸幸氏で、ご専門は認知心理学だ。

横になった楽な姿勢をとると、脳はちょっと安心して怒りにくくなるという。川井さんは、『進化の過程でヒトの心がどう構築されてきたのか』、『ヒトの脳波で「仲間外れ」を分析できるか』など認知心理学の興味深い研究を続けている。

例えば3人のキャッチボールで数分間、ボールが回ってこない人があるとその脳には「痛み」を感じる領域が強く反応することが発見された。その後は数回ボールが来ないだけで、その人の古い記憶を思い出す領域が反応することも明らかにした。

心と現実 私と世界をつなぐプロジェクションの認知科学』では、 「プロジェクション(投射)」の認知科学について、興味深く説明されている。

なぜ同じはずの景色が違って見えるのか、という副題が表しているように、私たちは同じようなものを、それぞれ違った一定のフィルターを通して現実を見ている。

フィルターを通してモノを見るというと、なんだか色即是空のような話しだけれど、この本はあくまでも科学的な見地からその問いを深掘りしている。


『心と現実 私と世界をつなぐプロジェクションの認知科学』

ヒトは狩猟時代から集団で生活してきた。「集団から排除されると、生存することも子孫を残すことも危うくなる。仲間はずれを極端に恐れるようになったのでは」と分析する本は多いけれど、そこを超えて、心の投射という観点から捉えようとすると、その先は非常に奥深いものがある。


河合さんは『「脳のクセ」に気づけば、見かたが変わる 認知バイアス大全』という本も出しておられて、私たちが日常においていかにクセのある見方をしているかをユーモラスに説明しておられる。

さらに脳科学という見地から考えると『忘れる力』も重要だ。脳へ入力された情報は脳に入力された情報は「海馬の歯状回」へ先ず保存され、その保存期間(2~4週間)中に、その情報が何度も使われると、脳はその情報が「重要な情報」と判断して「側頭葉」の長期記憶に移動させる。

長期記憶のカテゴリーには次のものがある。
・エピソード記憶(固有名詞や出来事の記憶)
・意味記憶(理解したことの記憶)
・手続き記憶(動作に関する記憶)
・情動記憶(情動と結びついた記憶)

脳のメカニズムの研究はまだまだ発展途上にあるけれど、認知バイアスや忘れることの仕組みを考えると、なんだか面白いパーソナリティを持った機関にように思えてくる。


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