金利の力学
金利について漠然とした理解が蔓延する中、的確にまとめられた記事があったので紹介する。アメリカでは経済学をマクロとミクロの視点に分けて考察するけれど、政府の制作と金利の関係はマクロの分野になる。
金利は株式市場にだけ影響するわけではなく、住宅ローン、学資ローン、クレジットカード・ローンなど、多くの金利は政策金利に連動するということを知っておくべきだろう。
金利とインフレ
インフレーション(インフレ)とは、長期にわたり財やサービスの価格が上昇することで、これら財やサービス需要が供給を上回るときに起きる。
金利が下がると投資家は支出や借入を増やすが、景気拡大ペースが早すぎるとインフレが悩みの種になる。政府の方針によって金利が引き上げられると、貸出意欲が減退して需要が後退するため、これが結果として価格下落につながる。つまり金利とインフレは反対の方向に動くことになる。
一般的に金利変動は経済の好不況を占うため、株式市場は金利の動きに振り回される。金利が株式市場に影響する仕組みはこうだ。
1. 金利が上昇すると株式は下落傾向にあり、金利が低下すると株式は上昇する。
金利が低いと、企業は低コストで借り入れできるので、人員の拡大や新規事業への参入が可能になる。けれども金利が上昇すると、借り入れが難しくなるし、すでに借りている負債の管理にコストがかかるようになり、それが企業成長の足かせになる。
こうしたコスト増が売上高の低下につながり、ひいては企業価値に悪影響を与える。また、預金口座や譲渡性預金(CD)の金利が下がると、投資家は株式のような高利回りの投資を求めるので、一般的に金利低下は相場上昇の材料と見なされる。反対に金利上昇局面では、投資家は株式からより低リスクで安全なリターン先へと資金を移す。
2. 金利は債券に影響する。
伝統的な債券の大半は固定債で、満期までの利率が変わらない。例えば、年率3%の10年債を保有していれば、毎年3%という金利が変わらず払われる。だが、債券の償還前に金利が下がれば、既存債券の価値は上昇する。新たに発行される債券の金利は3%よりも低くなり、既存債に比べて魅力がないからだ。もちろん金利上昇局面はその反対で、新発債の金利は3%より高くなるので既発債の価値が下がる。
3. 投資家の期待がボラティリティをもたらす可能性がある。
この先金利は上がるのか下がるのかという投資家の見方が、相場を揺るがす。FRB(米国の中央銀行)のコメントやその他経済指標を受けて、投資家が金利上昇の危険性を予期して証券を売り始めると、短期的にボラティリティ(変動率)が上昇する。これは2018年や2021年にさまざまな局面で見られた。投資家はこの時もやはり、金利上昇の憶測から株式の売却に走った。いずれの場合も、FRBが実際に政策を変更しなくても、市場はこうした金利変更の期待に容易く反応してしまうのだ。
投資セクターと金利
株式市場と金利は逆相関というのは概ね正しいが、セクターによって異なる反応を示すことがある。金利が上昇すると、投資家は高配当銘柄や安全資産といわれる分野に目を向けがちになる。
負債調達への依存度が高いセクターは特に金利変動の影響を受けやすい一方、キャッシュ・フローがプラスで定評のあるセクターは、金利リスクの影響を受けにくいことも重要な点だ。
ハイテク・セクター:米国のETF『 QQQ』などに代表されるハイテク・セクターの株価は、金利と逆相関にある。とりわけ赤字企業ではその傾向が強い。ハイテク株式は将来の大きな利益期待の代わりに、今の赤字を許容するようなビジネスモデルを取ることで知られる。金利上昇期には投資家がそうしたビジネスモデルに我慢しきれず、ハイテク株から別のセクターへと乗り換えることがある。
エネルギー・セクター:エネルギー株はこれまで、金利と一緒に上昇するセクターとして知られていたが、この先は慎重に構えた方が良いだろう。グリーンエネルギーや代替エネルギー銘柄の台頭に加えて、一部の伝統的な石油企業は化石燃料への投資を停止する動きを進めており、過去のデータが必ずしも明白で信頼できるとは言えない。
金融セクター:金融株には銀行、保険会社、資産運用会社が含まれる。金融セクター全体で見ると金利上昇とは正の相関にあり、銀行株は金利上昇による最大の恩恵を受ける。銀行は金利上昇に伴い、貸出金利を引き上げられるのがその理由だ。
不動産投資信託(REIT):REITは通常金利と並行に動く。金利が上昇するとREITの価格も上昇し、金利が下がると下落する。これは、金利上昇期には景気が拡大しているから。景気拡大期には一般的に、REITの組入資産である倉庫や企業の賃貸オフィスといった、企業が事業拡大を続けるうえで必要な不動産の価格が上昇する。
生活必需品セクター:生活必需品には、食品、飲料、化粧品、洗顔用品など日用品の製造と販売を手掛ける企業が含まれる。このカテゴリーの株式は、その安定性と高配当からディフェンシブ株として知られる。一般的にこのセクターは金利上昇に対してまちまちな反応を示す。金利が上昇してもコストに容易に転嫁できる企業もある一方で、景気拡大期にはもっと高成長な投資機会を投資家が求める恐れもある。
参考記事: Money Insider
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