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【SCC2021開催レポート】極限のメンタルで戦う他領域に越境してメンタルを学ぶ

先日、一般社団法人スポーツコーチングJapanが主催する毎年恒例のカンファンレスSports Coaching Conference2021が、完全オンラインで開催されました。
ラジコン世界王者の広坂 正美氏と、ピアニストでメンタルトレーニング研究家の大木 美穂氏、元ラグビー日本代表の野澤 武史氏による、極めて異色のコラボにて実施されたセッション「極限のメンタルで戦う他領域に越境してメンタルを学ぶ」をレポートします。

まずは、

本番のかなり前から(ぶっちゃけSCJメンバーの誰よりもログインが早かったです笑)配信がスムーズになるようテストして準備をしていただいていた広坂さん。
ドイツからの参戦ということもあり、若干のタイムラグがありながらもテンポよくトークを展開していただいた大木さん。
カメラとご尊顔の距離調整を案内し切れずに本番を迎えてしまい、サムネの顔サイズ感に思いのほか差が出てしまいました野澤さん。。

最高のセッションをありがとうございました!

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イントロ

ゴール:メチャメチャ尖った登壇者の話からヒントを得て、自分の現場で一つ実践してみる!

ゴリさん(野澤氏)のメンタルに対するイメージ:大事だって言う割に時間は割かれていない/胡散臭い人がいる/修行っぽい・・・


※以下、敬称略

メンタルに対する認識や見解

広坂:メンタルは目に見えない。身体部位で表すなら「頭」。フィジカルとも密接なため重要度は50:50。両輪で機能させるもの。

大木:フィジカル・技術・メンタルの3軸は共通してる。音楽には「アート感」もある。
ゴールは違えど一発勝負の世界で結果を出すという部分で見れば近しい。
フィジカルとメンタルは密接、とても納得。緊張して体がこわばるとか。

広坂:アート感はラジコンも近い。レースは作品。ミスをミスと感じさせない技術が必要。
その積み上げの先にある作品ごとの0.1秒の差。その差で勝ち切る確率が高い。こういう部分にもメンタルの影響はあると思う。そこに行き着くためには、そのための練習をするしかない。

ゴリ:ラグビーの練習だと「ラストワンチャンス」。後がない場面想定で練習すればするほど、考えて工夫するようになる。

メンタルをパターン分けする

ゴリ:要素3つにまとめてみた。「1.ハイパフォーマンス(ゾーンに入る的な)」「2.不動心(アクシデントに動じない的な)」「3.レジリエンス(失敗しても元に戻す的な)」

大木:同じく3つに分けてみた。「1.集中している状態(注意力が一点に集まっている)」「2.集中していないor意識が飛んでいる状態(注意を向ける所が定まっていない)」「3.意識できている状態(自分の演奏とオーディエンスにも注意力が向いている)」音楽では3が理想。スポーツなどでもここは通じる部分があるのではないか。

大木:もう一つ。「狭い↔︎広い」「内側(自分)↔︎外側(環境)」で状態を4つに分類できる。理想は、これらをスイッチ(行ったり来たり)できること。これを目指してトレーニングすることが大事。

広坂:ラジコンもかなり近い。「一点集中」と「分散集中」。究極の部分。1時間瞬きしないくらいの勢いでプレーするので、たまには気を抜かないと無理。(注意力を一点から分散させる等)。意識的にスイッチさせるというよりは、自然とできるよう体に備わっている状態を練習で作らないといけない。

どう鍛え、養うのか

広坂:「分散集中」は、同時に「風などの環境」「対戦相手」「対戦車」を見るイメージ。分散されるとパワーは弱まる。一点に集中させるパワーを維持しつつ分散させるのが究極。
フィジカル面が力んでいると絶対にできないし、脳のストレージも100%使っていると、ここには到達できない

【もぐらたたきゲーム】これを両手でやって100点を取りにいく練習をした。後半は2匹同時に出てくるので、注意力の強度を保ちつつ分散させないと100点は取れない。

【流れ星探し】あの広さでほんの一瞬しか見えない流れ星を探すのも良いトレーニング。10分に1回くらいしか流れないので、その時間分散集中させ続けるのってとても大変。力を抜いて感度を高めて。

ゴリ:流れ星は都会だと難しいので、
下北沢や目黒で芸能人を探せばいい!】力を抜いて感度を高めて歩いてね。笑
オールブラックスも守備から攻撃に転じる瞬間、全員が違う場所を見ている。一箇所だけ見ると勝てない。分散集中に非常に近い。

イップスって?

大木:緊張状態がパフォーマンスをあげる瞬間は存在するが、その後に急に落ちてしまう。緊張によりこわばったりして。その部分がイップスに関係しているのではないか。緊張を緩めるアクティベーションや呼吸などを取り入れて、良い状態を探す練習も必要ではないか。

広坂:年齢を重ねるとともに身体能力も変わるし脳も進化を続ける。このギャップがプレーに支障をきたすのは間違いない。トレーニングのやり方を常に模索するのはどの分野も同じだと思う。若い時と同じことをやっていてもダメになる。頭と体がリンクしなくなる。それが自信を失わせてしまう。指導者としては選手の技術や体力レベルに合わせた練習をさせてあげないといけない。

ゴリ:ユースでの抜擢で失敗したことがある。本来の実力と抜擢の意図、メンタルのズレが生じ、イップスに近い状況を生んだのかもしれない。「あれ?」「あれ?」の積み重ね。

大木:究極の「あがり」なのかも。自分へのプレッシャー、実力と難易度の差、過去の失敗へのトラウマなど。これらが重なり絡まったもの。

質問「ルーティーン」について

大木:鍵盤の前に着いたら「ハンカチを使って鍵盤を拭く」間に、自分の心身の状態を言葉にして静寂の状態を作ることを実践している。ルーティーンは目的が大事。
「これをやればうまくいく」はゲン担ぎ
意図した状態に身体を近づけるのがルーティーン。

広坂:100個くらいある笑。
基礎中の基礎は「ウォーキング」と「ランニング」。ちゃんとした身体を作ること。良い血流や高い柔軟性。目が見えて頭が冴える。これらが揃わないと、最後に踏ん張りが効かない

質問「メンタルトレーニングの成果を感じる時は?」について

大木:トレーニングを始める前の状態を整理し、beforeでは感じなかった感覚をafterで感じられるかどうか。あとは練習と本番の差を埋めていくことが目的の一つとしてあるので、より近づいたということを認識できるかどうか。

ゴリ:練習と本番でいうと、「良い練習ができた」のに「試合で勝てなかった」ケースがあった。「良い練習=ミスがない練習」だった。ラグビーは×を△にするスポーツ。ミスが当たり前に起きるもの。強度や難易度が間違っていた。これが選手の中でのズレにも繋がってしまう。。。

広坂:端的に、「結果が残った時」が「成果を感じる時」。勝つか負けるかの結果でしかない。

共通する部分

ゴリ:メンタルとフィジカルがかなり密接な関係性であるような?メンタルは頭の中で起こっていることだと思っていた。
お二人の話を聞くと、良い習慣や良い身体が良い心理状態を生んでいることがよく分かる。

さらに、「メンタルだけを高めていく」ということは成立しないように感じてきた。その一部分だけ切り取るのではなく連なっているように見える。

指導者として。コーチとして。

大木:指導者の声かけはメンタルにおいてとても大事。特に本番後にどんな声をかけるのか。何に対し声をかけるのか。「内的な要因」か「外的な要因」なのか。「変化するもの」か、「しないもの」なのか。
成功した時には「変化しない内的な要因」と「プロセス」を褒め、失敗した時は「変化するもの」に対し指摘を行い、改善させていくことが大事。

広坂:僕にはコーチがいなかった。コーチがいる環境は羨ましい。試合で負けた時ってとてもナイーブ。そんな時にそばにいてあげられるようなコーチって素晴らしいし、そうありたい。寄り添うこと。

広坂:僕は弟子に「あれをやれ!これをやれ!」と言わなかった。それだと僕は超えられない。今後も壁を乗り越えてもらうために自分で考える力をつけないと、勝ち続けることは不可能だと思ったから。
示したのは、取り組む姿勢。勝って喜ぶ、負けて悔しがる様。そしてラジコンでひたすら一緒に遊んだ。「ラジコンがとても楽しいものである」を認識してもらった。プロは辛い。でも楽しければ続くから。おかげさまで弟子は世界最強。笑

ゴリ:コーチとしての姿勢。背もたれのような。何かアクション起こすときは、それを支えてあげられるような存在でありたい。

大木:メンタルにおいても元々強い人はいない。どうしたら強くできるか。コーチも学びながら実践してほしい

広坂:厳しい練習をすれば強くなるわけではないけど、そこは人による。厳しさと優しさのバランスが大事になる。

ゴリ:自分を変えられる、柔軟でいること。かつ、普遍的な部分がある、芯があるような。毎回話が変わる人だと困る。

クロージング"登壇者の学び"

広坂:分野が違えどほとんど言っていることが一緒だったし、理解共感ができた。掘るほどに同じところに行き着くような気がした。

大木:「もぐらたたき」と「流れ星探し」のトレーニングが面白かった。笑
理論は分かっていたけど、理解しやすいトレーニングとして非常に参考になった。あ、「芸能人探し」もです。笑
具体的なのっていいですよね。

ゴリ:フィジカルの重要性とバランス。メンタルだけを抜き出して語るのは難しいと改めて思った。あとは指導者の姿勢の重要性を再認識した。

編集後記(筆者:SCJ中村亘)

「メンタル」というテーマは学術的にも研究が進んではいるものの、現場レベルでどう育んでいけばいいのか、そもそも何から学べば良いのか、セッション担当である私自身も迷っていました。

そこで思ったのが、全然違う分野で、かつ、結果を残している人たち同士でトークしてもらうことによって、何か分かるかもしれない、というシンプルな考えから生まれたこのセッション。

予想を遥かに超えた学びに溢れたセッションとなりました。

「違う分野のプロたちが、同じことを言っている。」

であれば、それが本質に近いのではないか。そんな気がしてなりません。

そして、制限を設けなければ永遠に話し続けるんじゃないかと思うくらいに3名の登壇者が楽しくセッションされていたのが何より印象的でした。幸せな時間でした。

広坂様、大木様、ゴリ様。
素晴らしいセッションをありがとうございました!

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