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ヨーロッパ文化教養講座(2023年日本映画 「ゴジラ-1.0」鑑賞記)

2024/07/25
ゴジラ映画で涙が出たのは初めてだった。

ゴジラ映画ではあるが、ゴジラは主役ではなく、第二次世界大戦敗戦の後遺症から抜けきれない人々が、前を向くために破らねばならない「壁」の象徴として描かれていると思った。

主人公敷島浩一(演 神木隆之介)は、敵前逃亡の負い目という「壁」を、ゴジラを退治するために駆逐艦で出航する元海軍兵たちは、自分たちは祖国のために何もできなかった負い目という「壁」をゴジラを退治することで克服できたと思う。
それが、この映画の1番感動したところだった。

その「壁」ができてしまった原因である、戦中の指導者たちの悪政に対する怒りが、映画全体に感じられ、監督の主張が静かに、しかし強く胸に迫る。

現実は、戦後にゴジラは出現しなかった。

そして、心理的な「壁」を外国人(=進駐軍)が東京裁判で取り除いたかに見えた。
しかし、その「壁」を自らの手で取り除けなかった我々は、次の世界大戦に巻き込まれるのは必然ではないかと、残念ながら思っている。


日本が生んだ特撮怪獣映画の金字塔「ゴジラ」の生誕70周年記念作品で、日本で製作された実写のゴジラ映画としては通算30作目。
「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズをはじめ「永遠の0」「寄生獣」など数々の話題作を生み出してきたヒットメーカーの山崎貴が監督・脚本・VFXを手がけた。

タイトルの「-1.0」の読みは「マイナスワン」。舞台は戦後の日本。戦争によって焦土と化し、なにもかもを失い文字通り「無(ゼロ)」になったこの国に、追い打ちをかけるように突如ゴジラが出現する。ゴジラはその圧倒的な力で日本を「負(マイナス)」へと叩き落とす。戦争を生き延びた名もなき人々は、ゴジラに対して生きて抗う術を探っていく。

主演を神木隆之介、ヒロイン役を浜辺美波が務め、NHK連続テレビ小説「らんまん」でも夫婦役を演じて話題を集めた2人が共演。戦争から生還するも両親を失った主人公の敷島浩一を神木、焼け野原の戦後日本をひとり強く生きるなかで敷島と出会う大石典子を浜辺が演じる。

そのほかのキャストに山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、 佐々木蔵之介ら。2023年12月にはアメリカでも公開され、全米歴代邦画実写作品の興行収入1位を記録するなど大ヒットを記録。
第96回アカデミー賞では日本映画として初めて視覚効果賞を受賞するという快挙を達成した。第47回日本アカデミー賞でも最優秀作品賞ほか同年度最多8部門の最優秀賞を受賞した。

2023年製作/125分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2023年11月3日

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