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ヨーロッパ文化教養講座(2022年アメリカ映画「TAR」)

2024/07/05
クラシック音楽ファンとしては、外せない映画なので、封切りと同時に映画館で観た。そのときの感想は、「面白かったが、良くわからない」だった。

最近、二度目の鑑賞をして、わからない部分は残りつつも、やはり映画としては傑作だと思った。

クラシック音楽ファンとしては、
1.冒頭のター(演 ケイト・ブランシェット)の対談シーン
2.ターのドイツ語を交えながらのリハーサルシーン
3.マーラーの第5のダイナミックなターの指揮
4.ジャクリーヌ・デュ・プレを彷彿とさせる、オルガのエルガーのチェロ協奏曲
5.実家に帰って、古いビデオテープで、バーンスタインの演奏と話を聴きターが涙するシーン
6.クライマックスの東南アジアでの演奏シーン

クラシック音楽要素を除いても、サスペンス・ホラーとして、
1.冒頭のプライベートジェット機でターを見ながらLINEをしていたのは誰か?
2.ターが、オルガを追って廃墟に入ったあと、何者かに追われて転倒負傷するシーンはどこまでがリアル?地下に降りたはずなのに何故か部屋には外光が注いでいるようだった。
3.自宅のメロトローンが自動的に動き出したり、耳の中で音が鳴ったりするのは、ターの心理状態なのかリアルなのか?
4.結局、ターを陥れたのは誰(もしくは、誰たち)なのか?

ターが女性ではあるが、権威主義者の「セクハラおやじ」であるシーン
1.ターがオルガが便座に座っているときに、足下をのぞき込むシーン
2.ターが、養女を苛めているこどもを脅すシーン
3.ターは、結局育児も家事も全くぜず、パートナーのコンマスに任せっきりにしていること
4.副指揮者のベテラン男性をクビにするシーン
5.献身的に仕えてくれた、副指揮者候補の女性秘書を保身のために、昇進させなかったこと
5.自殺した女性若手指揮者を糾弾するメール

などなど、どのシーンも印象的でこれからも記憶に残るだろう。
それも、主役のケイト・ブランシェットの演技力の賜物と言えるだろうが。

「イン・ザ・ベッドルーム」「リトル・チルドレン」のトッド・フィールド監督が16年ぶりに手がけた長編作品で、ケイト・ブランシェットを主演に、天才的な才能を持った女性指揮者の苦悩を描いたドラマ。

ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命されたリディア・ター。天才的能力とたぐいまれなプロデュース力で、その地位を築いた彼女だったが、いまはマーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんなある時、かつて彼女が指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは追い詰められていく。

「アビエイター」「ブルージャスミン」でアカデミー賞を2度受賞しているケイト・ブランシェットが主人公リディア・ターを熱演。2022年・第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、ブランシェットが「アイム・ノット・ゼア」に続き自身2度目のポルピ杯(最優秀女優賞)を受賞。また、第80回ゴールデングローブ賞でも主演女優賞(ドラマ部門)を受賞し、ブランシェットにとってはゴールデングローブ賞通算4度目の受賞となった第95回アカデミー賞では作品、監督、脚本、主演女優ほか計6部門でノミネート。

2022年製作/158分/G/アメリカ
原題:Tar
配給:ギャガ
劇場公開日:2023年5月12日

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