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ヨーロッパ文化教養講座(1942年イタリア映画「郵便配達は二度ベルを鳴らす」ルキノ・ヴィスコンティ鑑賞記)
2023/01/18
個人的採点は、★★★
(★★★は、再び観たいとは思わないが、退屈せず、観ていた時間は楽しめた作品)
Filmarks: 3.2 (263レビュー)
モドローネ伯爵ルキノ・ヴィスコンティ監督の初長編作をWOWWOWで鑑賞した。
まず、驚いたのが、公開が1943年イタリア王国ということ。
第二次世界大戦の敗戦国イタリアでは、ファシスト党のムッソリーニ政権が崩壊した年なので、撮影はいつかはわかないが、よくこの時期に公開できたのだと思った。
同名の作品を、リメイクなのか、見た記憶があったが、筋書きは全く覚えていなかった。
舞台は川沿いのトラットリア。
行政の中心はフェッラーラ(行きたい都市の候補の一つ)なので、ポー川沿いだとわかる。
トラットリアの主人ブラガーナ(演 ファン・デ・ランダ)は、いつも椿姫の「プロヴァンスの海と陸」を口ずんでいる、初老の肥満体だが金はある。
かなり年下の美人妻、ジョヴァンナ(演 クララ・カラマイ)は、ブラガーナと、お金のために結婚し、今はトラットリアの台所で一日中こき使われている。
そこに風来坊で文無しの、ジーノ(演 マッシモ・ジロッティ)が、立ち寄り、一目でジョヴァンナとジーノは恋に落ちる。
この3人のシーンは、BGMが不気味で、観客はすぐに、「ああ、この2人でこの主人を殺すんだな」と解る。
ジョヴァンナが使っている肉切り包丁だとか、ジーノのひげそりの鋭い刃が目に焼き付く、凶器は刃物かな?と思う。
交通事故を装って殺したあとは、2人の関係性に変化ができてジーノがフェッラーラの若い踊り子(と、いっても多分娼婦)と浮気したり、警察も他殺ではないかと疑って捜査を続けたりと、話は続く。
2時間ちょっとの映画だが、白黒で、音質も悪く、CGもなく、といった、かえって今にない新鮮な感じと、ヴィスコンティ監督の演出や画面づくりが上手いのか、全く冗長性を感じなかった。
この映画でヴィスコンティ監督が何を言いたかったのか、また、題名の意味は何なのかは、残念ながら良く解らないが、
ジーノの風来坊気質が、ジョヴァンナの妊娠を知って突然変化し、荒削りで、自由な魅力が無くなってしまったことが、とても印象的だった。
また、ヴィスコンティ監督が、バイセクシュアルだと知っていると、ジーノと旅芸人スパニョーロ(スペイン人の意味)の友情が恋愛関係に見えてくるのも興味深かった。