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どうしていろんなカエルが田んぼで暮らすか 1

1.はじめに


 水田の生き物というと,トンボ,ホタル,そしてカエルをあげる人が多いだろう.しかし,どの水田にもホタルがいると限らないように,水田ごとに生息するカエルの種は異なり,カエルのいない水田すらある本稿では,主に本州の水田地帯に分布するカエルについて7回に分けて解説する.

 両棲類は,今から3億8千万年ほど前に肺魚の祖先から分かれて出現した.4本の足があるところが肺魚とは異なっている.その後,両棲類の祖先の一部は,羊膜を持ち乾燥に絶える卵を産むように進化し,爬虫類やほ乳類が誕生した.両棲類は忠実に水辺での生活を守っている.

現生の両棲類は,有尾(サンショウウオ)目,無尾(カエル)目,無足(アシナシイモリ)目からなる.日本には外来種も含め有尾目3科6属35種・亜種と無尾目5科16属47種・亜種が生息する.残念ながら日本に無足目は分布していない.カエルと同じ両棲類である,イモリや小型サンショウウオも水田を利用するが,カエルほど気づかれてはいない.『田んぼの生き物リスト』(桐谷編 2009, 2010)には,有尾目12種と無尾目29種が含まれている.我が国に生息する両棲類には日本列島で進化した固有種が多い。その進化の道筋を解き明かすことは興味深い。

 両棲類は一般に水中に産卵し,幼生期には水中で鰓呼吸をして生活するが,やがて変態して四肢が生え、肺呼吸を行う幼体(成体と同じ形態だが,性的に未成熟な状態)となって上陸する.陸上生活を行うための変態は,生活史上の大きなチャレンジで,このときに死亡する個体も多い.特に,カエル類はおたまじゃくしの時期は藻類を中心とした雑食であったのが肉食に変化することや,頭の横にあった目が前方に移動するなど昆虫の変態に匹敵する大仕事である.

 カエルは日本でもヨーロッパでも,人々にとって身近な存在で,民話などに登場する.ところが,近年多くの種で個体数が減少し,絶滅の危機に瀕している.世界的には,評価対象となった6,000種のうち32%の種が絶滅危惧種に指定されている(IUCN 2008).日本でも,38.2%(対象種76種中29種)が絶滅危惧種とされている(環境省2018).世界的な危機の原因としては,開発による生息場所の消失,水の汚染,乱獲,気候変動,そしてカエルツボカビ病の蔓延などが考えられている.中でもカエルツボカビ病は朝鮮半島が起源で,最近になっておそらくペット取引を通じて,世界に広まったと考えられている(O’Hanlon et al. 2018).

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