あの先輩にインタビュー! ~環境科学研究科 松八重一代先生~ (後編)
こんにちは。東北大学サイエンス・エンジェル (SA) の やま です。本記事は「あの先輩へインタビュー!~環境科学研究科教授 松八重一代 先生~」の後編です。(前編はこちら)
女性研究者ならではの、妊娠、出産、産休などについて、松八重一代先生にお話を聞きしました。
出産前後のお仕事はどうしていましたか?
やま)松八重先生は現在小学生のお子さんがいらっしゃるとお聞きしたのですが、出産前後には産休や育休など取られたのでしょうか。
松八重先生)出産一ヶ月前まで働いて、出産後は三ヶ月くらい休んでから仕事に復帰しました。私の場合は、幸いにも病気などもなく予定通りに日が運びましたが、今思うと余裕のないスケジュールでしたね。産休や育休は命のかかったお話ですし、一人ひとり体質も違えば環境も違うので皆が同じようにはいかないですよね。これに限っては、健康に産んでくれた親に感謝です(笑)
やま) ぎりぎりまで働いていらっしゃったのですね。妊娠中はお仕事をセーブしたり、できること/できないことに制限があったりしましたか。
松八重先生) お腹が張って受診したこともありましたが、研究室での研究は特に大きな問題はなく、変わりなく過ごしていました。ただ、東北大に勤めながら東京の大学で非常勤講師として講義を担当していて、仙台−東京間の新幹線移動など出張が多かったのは大変でしたね。講義は私を含めて2人で担当していたので、産休や育休にかぶる時期はもう一人の先生に担当していただいて、なんとか休まずに担当分の講義をやりました。もう一人の先生が理解ある方で良かったです。講義を受講している学生たちには「妊婦だからその辺で倒れてたら病院に連れて行くように!」など半分冗談を言いながらやってましたね。
やま) 長距離移動は身体への負担も大きそうですね。他の先生との調整もあって、講義スケジュールなど上手くやりくりされているのは流石です。理解のある先生方でよかったです。
子育てと研究を両立するのは難しい?
やま)出産後三ヶ月のお休みを経て仕事に復帰なさったとのことですが、お子さんはどうされていたのですか?
松八重先生) 東北大の学内保育園(※)に預けていました。出産直後のタイミングにちょうど保育園の定員に空きが出ると聞いて、「そのタイミングなら入園できるよ」とのことだったので、入園しました。もともとその時期に復帰したいとぼんやり考えていましたが、いざ自分が復帰するタイミングに定員の空きがなかったら困りますしね。出産後のスケジュールは大忙しでしたが、保育園に空きがあったのは、これも運が良かったのだと思います。
学内保育園なので、保護者が皆さん東北大の教職員や学生のお子さんです。だからこそ、自分と同じような女性研究者とママ友として情報共有できたり、留学生のお子さんも多いかグローバルな環境だったりしました。
※学内保育園 東北大学の教職員・学生が利用できる託児施設 。東北大学には現在3園あり、合計250名の未就学児が利用可能。
やま) 学内保育園は大変ありがたい制度ですね。同じような境遇の女性研究者と出会えるというのも魅力的です。
保育園を利用しても、学会(※)や講義などで出張する際、帰りが遅くなってしまう日や家を空けなくてはならない機会があると思うのですが、そのような場合はどうしていらっしゃったのですか?
※同じ分野の学術研究を目的とした人たちが、研究成果を発表し、議論する場。コロナ禍でオンライン開催が多いですが、元々は人が集まる実地開催がほとんどでした。
松八重先生) 夫は東京で勤務しており、平日の多くは単身赴任状態なので、出張で家を空けるときなどは母に家へ来てもらったり、子供を実家に連れて行って面倒をみてもらっていました。日帰りの出張で、帰りが遅くなるときは、ベビーシッターを依頼していました。東北大の場合はベビーシッターの金銭的な補助を少しいただけます。ただ、これについては、他人に家の鍵を渡すということに抵抗を覚えて、最初は少しだけ躊躇しました。でも長くお世話をしていただける方に巡り会えたおかげで、子供が小学校にあがるまでほぼ毎月シッターをお願いをしておりました。いずれにせよ、私の場合は子育てのために、学会に参加できないことはありませんでした。
やま) 周りの方や制度の助けを借りながら、お仕事と子育てをどちらもバリバリなさっていたんですね。
松八重先生) そうですね。学会についていうと、国際学会ではお子さんを連れていらっしゃる方も少なくありません。キッズスペースが用意されているし、海外の研究者と話していたら「私の子供だよ」って紹介されることもあります。
やま) それは面白いですね!私が参加した国内学会ではお子さんを連れている方を見たことないです。世界水準で見ると、日本は子育て中の研究者支援はまだまだといったところでしょうか...。日本でも大きな学会だとキッズスペースを用意しているところもあるようなので、今後の推進に期待です。
読者の皆さんにメッセージをお願いします!
やま)最後に、進路選択に悩むnote読者の皆さんにメッセージをお願いします。
松八重先生)「やったら大変そうだからやめておこうかな」など将来に対する漠然とした不安を理由にして、やりたいことを諦めないでほしいです。健康上の理由とか、環境が許さない場合は仕方ないこともあるけど、周りに助けてもらうことも必要だし頼ってもいいんです。周りに助けられながらも、自分が納得のいく選択ができればいいと思います。
また、自分の取り組んだことのない分野の仕事や、取り組むことによる明確なメリットが見えない課題であっても、「これはやっても無駄かな」など考えない方が良いと思います。その時には、将来どう役に立つかはわからなくても、どこかで役に立つかもしれません。失敗したらその時はその時です。無理だと思うことをやって、その時の経験が将来の自分の糧になります。失敗は誰しも必ずするものだから、立場や責任が大きくなってからするよりは早めにしておいた方がいいかもしれませんね(笑)。
やま) プラベートな内容を含んだ踏み込んだ質問まで丁寧に回答くださり、ありがとうございました。
現在の職に至った経緯から、結婚・出産・子育てなどプライベートなことまで、お話をお聞かせくださいました。人によって環境や体質も異なるので「全員が必ず」という訳ではないですが、周りの協力を得ながら子育ても研究も充実させている先輩が身近にいることを知って、インタビュアーの私も勇気をいただきました!
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また、読者の皆さんがお話しをお聞きしたい先生がいらっしゃったらリクエストもお待ちしています。
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編集後記
研究でご活躍されているだけでなく、インタビューを快く受けてくださる人柄の良さや分かりやすく話を伝える力の抜群な松八重先生は、私の憧れです。通常では質問しづらいプライベートなお話も聞くことができて、とても貴重な機会になりました!(^^) (やま)
東北大学サイエンス・エンジェル
次世代の研究者を目指す中高校生に「こんな女性研究者もいるんだ!」「理系って楽しい!」という思いを伝えるため、2006年に結成。年度毎に学内で公募され、総長に任命された 東北大学の自然科学系10部局に所属する女子大学院生が、中学・高校での出張セミナーや科学イベントで科学の魅力と研究のおもしろさを伝えている。メンバーは宇宙・自然・ロボット・環境・ヒトや動物の身体のしくみなど、それぞれの専門分野で日々研究中。
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