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【後編】AI Scientistとは...? SAのDXチームが調べてみた!
こんにちは!
東北大学サイエンス・アンバサダー(SA)、DX (Digital Transformation; デジタルトランスフォーメーション) チームのさら、ひろみ、ちひろ、わかなです!
前編に引き続き、人工知能が自分で研究してしまうという「AI Scientist」についてお話ししていきます!
前編をまだ読んでいない方は、こちらから!
3. 論文の執筆
続いて、「AIによる科学論文の執筆」というテーマについて、ちひろがお話ししたいと思います。
研究者は新しい発見をしたとき、その内容を「論文」という形で発表します。この論文は、他の研究者が読んで同じ研究を再現できるように、実験の方法や結果が詳しく書かれています。最近、AIを使って科学論文の執筆をサポートしようという試みが進められています。
3-1. AIによる論文執筆の目的
AIは、大量のデータや研究の結果を整理することが得意なので、論文に必要な情報を効率的にまとめることができます。また、AIは他の論文も分析して、研究に必要な情報を探したり、適切な表現を提案したりすることもできます。これにより、研究者は短い時間で質の高い論文を書くことができるようになり、時間と労力の節約になります。
3-2. 自然言語処理の役割
AIが論文を書くときには、「自然言語処理」という技術が使われています。これは、AIが人間の言葉を理解したり、処理したりするための技術です。大規模言語モデル(LLM)と呼ばれるAIが、たくさんの文章データを学習して、どのような言葉が続くべきかを予測したり、新しい文章を作ったりすることができるのです。
3-3. AIによる論文執筆の方法
「AIを使って論文を書く」というと、実験データを入力するだけで文章が自動的に生成され、論文がすぐに完成するように思えるかもしれません。しかし、実際にはもう少し複雑です。AIが論文を書くためには、「研究の動機や目的」「実験の方法」「結果や考察」といった章ごとに、どんな内容が必要かをAIに示す必要があります。その後、実験データをAIに取り込んで、どんな結果が出たかや新しい発見についてAIが理解し、それを元にして文章を組み立てるようにしています。
3-4. AIによる論文執筆の長所と短所
AIを活用した論文の執筆では、データ整理や情報収集が効率化され、短時間で質の高い論文を仕上げることができるという長所があります。また、正確なデータを提案することができるため精度の向上も期待できます。
一方で、完全自動化ではないため、研究者自身が重要な内容や考察を補う必要があります。また、AIが間違った情報を引用したり、特定の視点に偏った文章を提案する可能性があるため、結果を慎重にチェックすることも必要です。
3-5. 「AIによる科学論文の執筆」まとめ
AIが進化することで、論文執筆のプロセスはますます効率的になるかもしれません。さらに、AIがより正確に文献やデータを分析できるようになれば、科学者が短期間でたくさんの研究を行えるようになる可能性もあります。
しかし、AIを使って論文執筆が簡単になることで、研究者の「考える力」が衰えるのではないかという懸念もあります。AIがすべてを提案・整理してくれる環境では、独自の視点を持つことや、論理的に深く考える能力が発達しにくくなるかもしれません。そのため、「人間が主体的に考える力を維持・発展させるためのバランス」を取りながら上手にAIを活用していくことが今後、重要になってきます。
4. 論文の査読
次に、「AIによる科学論文の査読」について、わかながお話ししたいと思います。
科学論文は、研究者が自分の発見や研究の成果を、世界へ向けて発表するために書くものです。その論文の成果が本当に新しい発見なのか、正しく実験や考察が行われているかを確認するには、専門家がしっかりと内容を吟味する必要があります。この作業は「査読」と呼ばれますが、これまでの査読には多くの時間と労力がかかっていました。そこで、AIを使って査読を効率化しようというアイデアが「AIによる科学論文の査読」です。
4-1. AIによる論文査読の目的
AIによる論文査読は、効率よく、公平に論文の評価を行うことが目的です。人間がたくさんの論文を短い時間で読むことは難しいため、AIがその作業を手伝うことで、査読を早めることができます。また、人によって評価の基準がばらつくことがありますが、AIは全ての論文に対して同じ基準で公正に評価をすることができます。
4-2. AIによる査読のやり方
AIを使って論文を査読するときには、AIが論文を読み込み、いくつかの基準にしたがって評価をします。具体的には、論文の強みや弱み、全体の貢献度などにスコア(点数)をつけ、つけた点数をもとにして、「アクセプト(受理)」または「リジェクト(却下)」を決定します。さらに、より査読を正しく行うために、他の査読結果を参考にする、AIによる査読を繰り返し行う、一度決定した査読結果を見直すといった工夫も行います。
4-3. AIによる査読の長所と短所
AIによる査読には、人間よりもはるかに早く、たくさんの論文を査読できるという長所があります。さらに、査読の結果にばらつきが少なく、公平な評価ができます。
一方で、AIによる査読には短所もあります。今のAIモデルでは論文の中にある複雑な図や表の意図を十分に理解することは難しいと考えられます。また、研究の内容や論理に問題のある、質の低い論文を受理してしまったり、逆に質の高い論文を却下してしまったりするといった、判断のミスを起こすことがあります。判断のミスは人間が査読をしたときにも起こりますが、AIが査読をしたときには特に、人間が査読をした場合には受理しないような、質の低い論文を受理する頻度が高い傾向にあります。
4-4. 実際、AIによる査読をどう活用したら良いのか?
AIを使えば、評価基準を統一しつつ、短い時間でたくさんの論文を査読することができます。この長所をうまく活かすためには、まずAIで論文をざっくりとふるい分けし、それから人間が時間をかけて評価を行うという方法が効果的かもしれません。それだけではなく、論文を書く人自身が、AIに文章の良し悪しや論理的なミスをチェックしてもらい、よりよい論文を書くためのフィードバックをもらう手段として活用するという方法も考えられるでしょう。
4-5. 「AIによる科学論文の査読」まとめ
DXチームで「AI Scientist」について学習するまで、AIがどうやって論文の査読を行うのだろう?と疑問に思っていました。実際に調べてみると、AIに繰り返し査読を行わせたり、AI自身に査読の内容を反省させたり、様々な工夫を凝らして、これまで人間が行ってきたように査読を行わせる仕組みがあることがわかりました。近年、AIに関する技術は大きな進歩を遂げています。これからAIのモデルが改善されていくにつれて、AIによる査読の質はどんどん上がっていくでしょう。実際にAIによる査読をどのようにして活用すべきかについては、私たちがよく議論していく必要があると思いますが、AIによる査読の長所と短所を理解し、AIを上手に活用することで、研究者がより早く、より質の高い論文を発表できる環境が整っていくかもしれません。
5. まとめ
以上が「AI Scientist」の紹介になります。いかがでしたでしょうか?
AIに、研究のアイデアを出すところから論文の査読までやってもらおうというのは、とても面白い取り組みだと思います。
DXチームには様々な研究活動を行っているメンバーが集まっていますが、それぞれがAIの世界に興味を持ち、AIについて少しでも詳しくなりたいと思って、今回のテーマに取り組んでみました。
本記事の作成にあたっては、橋本先生、西先生からフィードバックをいただきながら、メンバーで協力して「AI Scientist」について学び、記事の内容を相談し合う貴重な機会を得ることができました。
奥深いAIの世界について、皆さんにも興味を持っていただけたら幸いです!
6. プロジェクトの感想
最後に、このプロジェクトを通して感じた私たちの感想をご紹介します
さら
はじめはAIという言葉を聞き身近に思いつつもどのように活用したらよいか方法がわかりませんでした。しかし本プロジェクトで活動するにあたり皆さんとAI Science について理解を深めていくにつれて、自分も日常で活用したいという思いが強くなりました。これから自分の日常生活や研究活動でもメリット、デメリットをしっかり理解した上で上手に活用していきたいと思います。
ひろみ
私は普段薬学研究科で脳の研究をしています。現在私の研究に直接AIが関与するということはないですが、脳とAIについて研究しておられる研究者の方々は身近にたくさんいらっしゃいます。例えば、マウスの脳波を測定してAIに情報を読み込ませることでリアルタイムに脳活動を反映した絵を描いてくれるといった研究もあり、AIの世界はとても奥深いと感じます。今回はAIについて少しでも詳しくなりたいと思い、DX班に参加しました。このプロジェクトを通して、AI Scientistがどうやって新しい研究のアイディアを考えるのか、そしてそのアイディアに基づいて実験を行うのかについて論文を読み、資料にまとめる作業をしました。私はアイディア生成の担当でしたが、AI Scientistが過去のデータを使って新しいアイディアを提案する仕組みが面白かったです。何度も繰り返してアイディアをブラッシュアップさせていくという過程は人間が泥臭く行うものだと思いましたが、AIscientisによる全自動化システムはスマートで効率的だと思いました。今後AIを自分の武器の一つとして研究や日常生活に取り入れ、上手く付き合っていきたいと思います。
ちひろ
「AI」や「AI Scientist」という言葉に少し難しそうな印象を持っていましたが、活動を通じて、AIを活用する可能性を知ることができ、とても良い機会となりました。AIを使った論文執筆やそのほかのAISientistでは、多くのメリットがあるものの、まだ人の手が必要であり、結果を鵜呑みにせず確認する必要性があることを知りました。これらを理解した上で、AIを自分の「武器」の一つとして正しく活用し、上手に付き合っていきたいと思います。
わかな
AI Scientistの仕組みを理解することで、AIを研究活動に利用するメリットや弱みを学ぶことができて非常に有意義でした。特に、AIの特性を理解し、AIの強みを活かしつつ弱みを補う方法を考える重要性を認識しました。AI Scientistの技術自体はまだ発展途上という印象で、論文査読などの応用範囲に限界はありますが、自分の研究分野でどのように活用できるか考えていきたいと思います。今回の学習を通じて、なんだか難しそうだと思っていたAIの活用に対する心理的なハードルが下がったので、今後はAIを上手く活用していきたいです。
7. 謝辞
本プロジェクトは東北大学西羽美准教授に対するGoogleのexploreCSR 2022, 2023 プログラム(https://research.google/programs-and-events/explorecsr/)から資金上のサポートを受けて実施されました。
深く感謝いたします。
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