21 地震に備えるとは
サイエンスエッセイ 21
地震に備えるとは
日々能登の窮状が報じられ、何とかしたい、何とかならないのかと心を締め付けられている人も多いのではないだろうか。
おそらくできることは全部なされているだろう。それでもこの状況だ。
ここでは少し引いて考えてみよう。災害列島日本では毎年のように何らかの自然災害が発生し人々が避難する。その先は公民館や学校だ。特に学校の体育館が多い。そもそも体育館は天井が高く冷暖房効率が悪い。人が生活するようにはできていない。そこで生活させられるのだから、そもそも無理がある。試しに避難でなく体育館に宿泊してみてみよう。冷たく固い床にまず辟易するだろう。
毎年のように言われるのに、なぜ避難施設が整備されないのか。費用の問題か。もちろん、避難所の整備よりすべきこともあるだろう。では避難所の整備はどれくらいに位置づけられるのか。
予想される南海トラフの大地震が東海地方を中心に発生すると死者は32万人余と想定されている。中でも静岡県は死者10万9千人、負傷者9万2千人と予想される。負傷者より死者の方が多いのだ。国は2014年に公表した減災計画の中で、2023年までの10年間に死者数を8割減らすとした。2024年を迎えた今、想定死者数2万人余という報道はない。
さらに2019年の最新報告では、発災1か月後に断水している人口は450万人、うち東海地方は220万人とされている。能登の窮状をみるにつけ、この数字の意味するものの恐ろしさを実感する。
いつ発生しても不思議ではないとされる地震対策がこんな状態である。
起きてから「全力で救援を」では遅い。起きる前に「全力で対策を」が必要なのだ。