![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/44879311/rectangle_large_type_2_2863229249176d7821821c27c791c0c5.jpg?width=1200)
どこに訴えるべきなのか?~GIGAスクール構想の現実~
弊校でもGIGAスクール構想の準備が着々と進められている。
その中で、非常に憂慮すべき案件が発生している。
弊校GIGAスクール構想で、生徒1人1台端末につながる無線アクセスポイント設置場所のことである。
弊校は、以前から一般教室と一部の特別教室に無線LANを設置していた。モノは5,6年前の無線アクセスポイント。現状は本体の低スペックとサーバー自体のキャパシティの少なさから、頻繁にネットワーク遮断が起き、ノートパソコン10台も繋げると恐ろしくトラフィック低下が頻発するもの。
今回のGIGAスクール対応で、高規格Wifiアクセスポイント(SISCO社製)に替わる。伴って高規格LANケーブルと新サーバーの設置工事が入っている。
非常に憂慮すべき案件は、「高規格wifiアクセスポイントの設置場所」のことである。何と「今まで Wifiアクセスポイントを設置した場所だけ置き換えて設置作業が終わったこと」である。
図書室、理科室、家庭科室、美術室、多目的室、体育館などのいわゆる特別教室の大部分は「今まで Wifiアクセスポイントを設置した場所」ではないので設置無し。ということである。
つまり、インターネット環境で全員タブレット端末が使える場所は一般教室とほんの一部の特別教室だけ。
ちなみに、昨年5月に地方公共団体教育委員会からGIGAスクール関連の調査依頼で校舎内全てのLANソケット有無の調査をして、今まで、Wifi環境が無い場所を伝えている。(当然、この時はWifiアクセスポイントが無い場所、LANソケットが無い場所にも新規開設だと信じている)
弊校の所在地の地方自治体はChrome Bookを導入する。
ご存じの通り、Chrome Bookは、ソフトウエアの大部分がクラウド運用を前提としたマシンであり、ネット環境下でその真価を発揮するマシンである。このままでは、フル活用にほど遠い。
そもそも、COVID19で導入が前倒しとなったGIGAスクール構想。昨年5月頃の文部科学省、経済産業省のYouTube会議は、かなりの熱量で発信された。
ここで、今一度、GIGAスクールの「GIGAの意味」を掲載しておく。
「Global and Innovation Gateway for All」の略で、「多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する」ために、創造性を育む教育を全国の学校現場で持続的に実現させることを目的にしたもので、以下を柱として教育分野のICT化を推進するものである。
(1)国公私立の小・中・特別支援学校などの学習者用パソコンの1人1台配備を目指す
(2)クラウド活用のできる高速校内通信ネットワーク環境を整備する
これとは別に、GIGAスクールで使用する情報端末(タブレットPC)の運用理念については「デジタル・シチズンシップ」とよばれ、運用ルールとしては、これまでの「情報モラル教育」の枠を遵守しながらも、より日常的な実装活用を目指したものである。タブレット端末を「特別な教具」と扱うよりは「鉛筆やシャープペンシルのような文房具」として扱うことを前提としている。
想像に難しくないのは、私たち大人(最早大人だけでは無い)が、交通機関や街角で日常的にスマートフォンを使うことと同じ風景が、学校内で出現すると言うことだと考えている。子どもたちがタブレット端末を片手に、教室を移動する。その日の委員会活動や部活動などのスケジュールを確認する。学習面では調べ物をしたり、先生にレポート提出したり、仲間と学習課題の進捗状況をチャットで報告しあったりするようになるということ。
当然、これは授業中だけにとどまることはない。休み時間や放課後、あるいは部活動の場面でも子どもたちが学校内の思い思いの場所でタブレット端末を使って、学び、自由自在に仲間とつながることになる。
このような「日常実装される文房具としてのタブレット端末」を支えるのは、インフラとしてのWifiアクセスポイントや高規格サーバーなのだけれど、(弊校の場合)このままでは、無理だと考えている。
一般教室だけのWifiアクセスポイントの場合。次のような事が起こると想定する。
タブレット端末を持つ生徒は、まず教室に入って回線をつないで、友達にチャットメールに資料を添付して送信する。通信が終わったら、タブレットを置いて、教室外に出る。そこで友達に会う。
「さっきチャットに送ったけど、わかった?」
「えっ!まだ見てない」
(慌てて教室に戻って端末を開いて確認して、再び教室を出て)
「わかった。大丈夫。間に合うよ」なんだか意味分からない!
記述した文部科学省の当初の高い熱量が市教委から施工業者に行き渡るまでに、すっかり冷めていることを実感している。
もう一つの危惧がある。それは、現場の教員の中には「GIGAスクールなんてどうせうまくいかない」とか、「俺は、使う予定ないから関係ない」という方々が少なからずいる。
もし、このままハード面の環境が整わないならば、これら、「GIGAスクールどうでもいい派」は、「ほら、やっぱり駄目だろ」となる。
地方公共団体教委の5月の調査依頼は何だったのか?本当に、調査内容をきちんと読み解いて、各学校の実態に合わせた予算措置と仕様書合議(この辺が各学校と地方行政でやっていないと思われる)そして、業者発注しているのか。このあと、補正予算的に「無線アクセスポイント増設分予算」などが措置されるのであれば話は変わる。しかし、新年度には到底間に合わない。(ちなみに、2020年暮れに新型コロナウイルス暫定予算として200万円の臨時予算がついたが、これはGIGAとは別。)
弊校の場合、「これまでwifiルーターがある場所に置き換えておしまい」としか考えられない。
以上のこと、弊校だけでは無く、日本の公立学校に起きている可能性が高いのではないだろうか。現段階でGIGAスクール構想の意義すら周知できていない現状で、大部分の現場教員は自分の学校でどのようなGIGAスクール構想に向けた対応がなされているか知らない。
弊校では、GIGAスクール支援員のgoogleEducation講習会も開始され、ソフト環境の準備は、進んでいる。生徒用タブレットは2月中旬に届く。
しかし、校舎内全ての無線LAN環境は無い。このままだと「タブレットを使うのは一般教室だけです」という、最低最悪の謎ルールが出現するだろう。
そして、一部の先生だけが細々と活用する。大部分のタブレット端末は鍵のかかった厳重なロッカーに格納されて時が過ぎる。
もう一つ、この問題は、「GIGAスクールなんてどうせ無理派」とは真逆の「GIGAスクールで、アレもこれもやってみたい派」が完全にモチベーションを失う。こちらの方が、より深刻な事態を招く。なぜなら、学校現場(特に公立学校)は従来通りの慣例主義が未だまかり通る。COVID-19は、行事精選などこれまでの学校のあり方を根本的に変える事態となり、これから「働き方改革」「ブラック校則緩和」などよい方向に転換する気風があるが、それすら、「COVID-19終息したら元通り」の感覚が根強い。
新進気鋭の、新たなチャレンジを試みるやる気のある教員モチベーションが、また下がる。
以下、余談ながら。
先般「小中学校教員採用倍率低下」に関する記事を読み、「長時間労働」「ブラックな校則、部活動、行事」などを改善し「職業としての公立学校教員の魅力度を上げる」ことを重点にして、採用倍率低下問題に対応する意向が論説されている。一方で、このようなこととは無関係に「純粋に教育に携わる意義を感じている教員希望者」が必ずいる。想像するに、労働時間など様々な課題はあっても、例えば「With COVID-19時代のニューノーマル」を自ら教育の現場で実現したい人もいることと思う。(だからこそのICT活用なのだから)
だけれども、
そもそも、国家大事業のGIGAスクール構想でさえ頓挫しそうな学校現場にはやっぱり魅力が無いのかな。と考えてしまう。