脊髄損傷の排便障害を少し深堀り
脊髄損傷の方の排便障害を具体的に記載したいと思います。
実際には損傷レベルと、損傷程度で色々な状態がありますので、鵜吞みにはしないようにご注意ください。
大きくは、2つに分類します。
①腸輸送の速度の遅延
②便の排出困難
①の腸輸送については、直接的に脊髄損傷が原因というよりむしろ、元々の身体の状態に起因することが多いと感じています。
もしくは、身体を動かさない生活、寝たきり状態、体幹を動かさない(回旋なども含め)により、機械的な動きが少ないことも腸輸送に影響があります。
同時に、気持ちが落ち込んでいる場合にも腸輸送が悪くなることもあります。
腸内にガスが貯留すると、ガスにより腸蠕動が悪くなります。単純に風船に空気が入りすぎて、腸が蠕動運動をして収縮しようとしても収縮できずに腸の動きが悪くなってしまいます。
ガス抜きについては、別に記載しておきます。
*受傷直後は脊髄ショックという症状により腸が動かなくなるため、刺激性下剤を使用して、便を排出する必要があります。
自分の腸輸送を確認する機器はあるのですが、日本では保険適応されていないため医療機関では検査することができません。
簡単に検査する方法はいくつもあり、トウモロコシを多めに食べて、何時間後に排出されるか、もしくはイカスミを食べて確認ということも可能です。
早い人は24時間程度で排出されますし、通常で36時間~48時間ほど、遅い人だと4~5日後ということもあります。
排便の頻度は、この腸輸送が最も参考になると思います。
腸輸送が4日以上の方に、週に3回や4回の排便をしても便は溜まっておらず、少ししか出ません。
便が柔らかくなければ週に2回の排便でも便失禁はせず問題はないこともあります。
②の便の排出障害です。
これは、脊髄損傷による特徴的な障害です。
直腸に溜まった便を適切に知覚できないということにも起因するのですが、単純に腹圧がかけられない、トイレでの座位姿勢(前かがみ)が保持できないなどがあります。
これができないので、摘便が必要ということになります。
たまに病院で摘便をしないという噂話を聞くのですが、便は出ません。便秘になっているので、必要です。
排便ケアを検討するときに、この2つを分けて考えることが必要です。
便が出ないという時には、何が原因なのか、この2つを深堀りして考察していくと適切な方法が見つかるような気がします。