大喜利合同誌ExT vol.3の感想
待ちに待った3巻を、ついに入手しました。
三ル貝さんが主宰となって制作が行われた、大喜利合同誌ExT(以下、ExT)のvol.3です。どれほど待ち望んだことか! 大喜利大好き、出版物大好きな私にとっては本当にどストライクな逸品です。
大喜利天下一武道会の東京予選初日、入れ替わりのタイミングで三ル貝さんから直接購入し、ウキウキしながら帰宅。しかしその後体調不良やら別のnoteの執筆やら、諸々の都合があってなかなか手をつけられませんでした。
それをやっと読むことができたので、今回もお一人お一人の作品について感想を述べていけたらと思います。
前巻の感想はこちら。
キョウさん
トップバッターはキョウさん。元々ボドゲ勢だった氏がボケルバを知り、大喜利にのめり込んでいく様が描かれています。
本当に大喜利を楽しんでいる様子が伝わってきてめちゃくちゃ良かったです。生大喜利を通じて、何となく世界が明るくなっていく感覚は私にもあったので、細かな部分は違えど、かなり共感しました。
私が唯一ご一緒した、白pponグランプリでのお話も。あれも1年前か、と思って時の流れの速さに愕然としました……。
首上オープンさん
ほのぼのした作風のキョウさんから一転、いきなり1頭身の首上さんが出てきて驚きました。しかも話の勢いも急転直下!
「面白くなる」と一念発起して、何故か粗品のYouTubeに出た話(そういえば出てたことだけ知ってるけど未だに見ていないかも……)から始まり、そこからの首上さんは至って順調、というわけでもないようで……。
とはいえ、そういったエピソードも持ち前の明るさでカラッとした笑いに昇華されていました。
2連続で生大喜利の楽しさを存分に伝えてくれる作品が続いて、そうそう、vol.1のときもこういうのを読んで参加を志したんだっけ……と懐かしさに浸ってました。
ゆかりそめ大明神さん
「ゆかりそめ大明神劇場」と銘打たれた一次創作。「劇場」というだけあって、ゆかりそめさんのワールドが全開です。4コマ漫画の連作かと思ったら、そういうわけでもないようで。
触れたものの記憶を読み取る能力を持つ高校生「サイコメトリー・スピアーズ」のお話。勿論大喜利も話の核として登場します。
一次創作なのでネタバレは特に避けますが、後半の畳みかけも含めて、読み終わったらアレに思考が囚われること請け合いです。
エイトさん
引き続き 狂気 独特の世界観。エイトさんの作品は「大喜利漫画に出てきそうな架空大喜利プレイヤー列伝」と題された4コマ漫画。
「出涸らし大喜利」などでも絵回答を存分に発揮されていますが、そのセンスがほとばしっています。中でも「ネット大喜利を、やりすぎている人」は、これ誰かに怒られるんじゃないかとすら思ってしまう問題作(褒めてます)。
どこかで聞いたワードも沢山登場して、ニヤリとさせられました。
汁さん
汁さんの作品は、自らがこれまでに出してきた絵回答の再現イラスト集。漫画作品を描こうとされたものの断念するに至ったそうなのですが、絵回答縛りの大会「OSTT画王」チャンピオンという実績があるだけに、登場するイラストは珠玉の作品揃い。
どれも絶対に実物を見てもらったほうが面白いので上手く書けないのですが(『ピーマンの被り物をして「和解」のメッセージをうたう小学生』なんかは字面だけでもかなり面白いですが)、本当に全部ツボでした。
ささくれメーカーさん
vol.2に引き続き登場となったささくれメーカーさん。今回は一次創作でした。
大喜利でウケないことに悩むお嬢様と、メイドの橘さんの物語。ささくれさんのあの画風も織り交ぜつつ描かれています。お嬢様と大喜利って何で親和性高いんですかねぇ。
これも一次創作なので詳細は書かないでおきますが、「あ!!」となる展開でした。語彙力!!
お嬢様と同じように大喜利で悩んでいる方にとっては、救いになる作品かもしれません。
何島さん
何島さんの作品は、お馴染みのオリジナルキャラクター「こいつ」に大喜利をさせてみる、というもの。僅か2ページですが、なかなかに濃密です。
2ページなので内容にもあまり踏み込めないのですが、何島の発想は明らかに何島にしかない奇抜さがあって、それが惜しみなく注ぎ込まれているように感じました。「こいつ」のセリフだけ手書きなのも良い。
辺野目えのんさん
辺野目えのんさんの作品は、大喜利との出会いからボケルバの学生サポーターになるまでを描いたエッセイ的作品。シュールな作品が多い中で、清涼感に溢れています。
生大喜利デビュー以降、様々な事情でブランクが空いてしまったものの、その後ボケルバに来店したことがきっかけで一気に熱中し始めたという辺野目さん。その話を読んで、やっぱりボケルバの店舗化は偉大な出来事だったんだなぁと感じました。何しろ私も間接的にその恩恵を受けた人間なので……。
そういえばボケルバ側の方による作品って初なのではないでしょうか。これを機にボケルバデビューされる方が増えることを願うばかりです。
くま骸さん
くま骸さんの作品も、これまでの大喜利歴について描かれたエッセイ的作品。ギュッとして8ページに濃縮されています。
くま骸さんにはあまり絵のイメージが無かったので、まずそこに驚きました。
生大喜利は2023年から本格的に始められたくま骸さんですが、散々界隈でイジられている通り、デビューはかなり前の話(「経歴詐称疑惑」についてはご自身でも触れられています)。元々は北海道でのライブ「札幌オーギリング」でも活動されていて、この漫画ではその頃の話も読むことが出来ます。貴重! そして及川広大さんはやっぱりスゴい。
作品のラストでは、未優勝ながらこれからも坂を登り続けていく、という強い意志が描かれていますが、恐らくこの作品の入稿後に、くま骸さんはダブルス総当たり会やボケルバのミニトーナメントで優勝を果たしています。苦悩されている方が成果を出すのを見ると、こちらまでグッと来てしまうんですよね。登り続けていくところを見たい、と思いました。
チビタダンサブルダンスさん
チビタダンサブルダンスさんも、ご自身の経歴を描いた作品を寄稿。漫画自体初挑戦とのことでしたが、それを感じさせないゆるーい雰囲気が伝わってくる内容でした。
作中でライトオンキューさんが「チビタさんは、いるだけで会場が明るくなる」と仰っているのですが、その明るさは誌面上でも、言い回しや感性から存分に感じられました。
かと思えば「面白いと言ってもらえたのが嬉しくて、その気持ちを持ち帰りたかったから打ち上げを辞退」といった、ちょっとセンチな心境もありありと描かれていて、全体的にお人柄が滲み出ているなぁと感じました。まだお会いしたことはありませんが……。
島さん
Jナカノさんの同人誌『アマチュア大喜利プレイヤー列伝』のイラストも担当されている島さん。この本では「生大喜利成果報告」と題し、2022年に行われた大会「答龍門CLASSIC 2021-22」で優勝された際のお話を寄稿されています。
構成が優れているのはもちろんのこと、特に印象に残ったのはメンタリティについての描写でした。
緊張や不調に襲われて汗をかかれているシーンが多く、そうか強い人でも緊張はするよな、と安心できたというか。歴が長い大先輩を前にすると、緊張どころか萎縮してしまうこともしばしばあるのですが、歴の長い方々でもそういう経験はあった、と考えれば、今の自分がそういう状態に陥るのもまあしょうがないか、と思えました。
あと、揺れているウォーリーさんが可愛いです。
三ル貝さん
トリは当然、主宰の三ル貝さんです。
実はこのExT3は発刊時期が遅くなったそうなんですが、怪我の功名と言いますか、遅くなったことで描けたであろう様々な情報や、三ル貝さんの輝かしい実績の振り返りも行われています。
ただ、一番の見どころは三ル貝さん流・お題作りの仕方、でしょう。詳細は実物を読んでいただきたいのですが、不定期で開催されている「大喜利Passionate」の裏話として記されています。(私含め)お題作りで悩んでいる方は是非読んでみてください。
終わりに
読み始めるまでに時間はかかってしまいましたが、手をつけてからはあっという間。3巻も最高でした!
今回はいつも以上にシュールな作品が目立ったように感じますが、その分経歴振り返りエッセイとの対比が生まれていて、振り回されつつも楽しく読むことができました。
過去2回のnoteとも重複しますが、本当に大喜利への愛があるからこのような作品が出来上がるんだろうなと思います。愛のかたまり。主宰の三ル貝さんや寄稿者の皆さんには本当に頭が下がる思いです。
当然4巻への期待は高まるわけですが、どうか三ル貝さんには無理なく過ごしていただきたいなと思います。読者としてはいつまでも待つ覚悟ですので……。
あとは何より、この3巻が多くの人の手に渡れば、続刊の可能性も増すと思うので、これを読んで少しでも興味を持たれた方には、是非購入を検討してもらいたいです。メロンブックス通販は勿論、在庫次第ではありますが三ル貝さんから直接購入することもできます。方法はいいからとにかく買え!そして読め!