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【2022年3月号】映画感想メモ(あの頃ペニー・レインと、THE BATMAN-ザ・バットマン-など)

※ 本記事の内容は、あらすじの解説やネタバレを目的としたものではありませんが、感想を述べるため、一部のシーンについて言及することがあります。映画をまだご覧になっていない方は、予めご了承ください。

【1】 ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋(2019)


久しぶりにコメディが無性に観たくなったので、U-NEXTで視聴。タイトル通り、ストーリーは「ありえない」ですが、この現実と乖離したストーリーを時々欲しくなります。精神的に疲れている時に観たくなる傾向があるので、多分少し休むべきなのかな…。セス・ローゲン、アダム・サンドラー、マーク・ウォールバーグのコメディ映画にはいつも助けられています。


【2】 ナイル殺人事件(2022)


ガル・ガドットの熱烈ファンに誘われ、劇場で観た作品。ケネス・ブラナーがアガサ・クリスティの人気小説の再映画化した作品は『オリエント急行殺人事件』に引き続き2作目になります。正直オチは何となく序盤に予想できてしまいましたが、ナイル川という珍しい舞台設定や、映像美は非常に迫力があります。キャストの1人エマ・マッキーは存じ上げませんでしたが、Netflixのドラマ等に出演しているとのことで、今後に注目。


【3】 あの頃ペニー・レインと(2000)


少し歳上の女性に魅力を感じる思春期の男子の様子が、巧みに描かれていると思います。ペニーは、主人公のウィリアムとってどこか秘密主義で、追っかけたくなる存在です。一方、そのペニーは他の男性に恋をしている=自分の内面を開示しています。この三角関係、胸が苦しいです…。登場人物が音楽に没頭する様子、恋への陶酔、薬物を摂取する描写など、映画全体を通して「中毒性(物事にのめりこむ様子)」がキーワードになっていた様に感じます。


【4】 THE BATMAN-ザ・バットマン-(2022)


個人的に「バットマンシリーズ」が好きな理由として、その「等身大性」が挙げられます。ビームや、超能力による派手なアクションシーンはなく、素手で戦う様子や、他のヒーロー映画では見ない、表情や感情を表に出すところなど、人間味を感じるのです。だからこそ、脚本や暗闇の追及等、アクションシーン以外の部分が、より重要になる効果もあると思います。バットマンシリーズは各作品において「格差」がテーマになっていると頻繁に感じますが、今回も「孤児」に焦点が当たり、観客に問いを与えていたと思います。


【5】 言の葉の庭(2013)


2度目の鑑賞ですが、鑑賞後はやはり、雨が少し好きになります。本作は46分と比較的短い作品ですが、故に中弛みが一切なく、「感情曲線」なる物が存在するのであれば、終盤に向けて右肩上がりになります。人それぞれの悩みの性質は異なりますが、悩みを持つこと自体は、年齢に関係なく共通しています。「学生」と「社会人」の鉤括弧を除外すれば、公園の屋根のにおいて人間は対等だと思います。本作では、「葉っぱ」の描写が多いと感じ、『言の葉の庭』というタイトルは、言・葉・庭の3つのキーワードが全て重要だと感じます。主題歌は秦基博さんの「Rain」ですが、この楽曲は大江千里さんの楽曲をカバーした楽曲なので、是非オリジナルも聴いていただきたいです。


【6】 赤い闇 スターリンの冷たい大地で(2019)


飢饉などの演出が、残酷で観ていて非常に辛かったです…。映画全体を通して、昨今話題のフェイクニュースや、他国の人々の無関心について触れるシーンが多かったと思います。映画の時代性と比較し、現代はSNSが発達し、自分で情報を取ることができるようになったことは、本当に大きいなと思います。昨今のウクライナ情勢について、武力ではなく対話による一刻も早い平和的解決を強く願っています。


【7】 Swallow/スワロウ(2019)


映画館付近でポスターを見て、その独特な色彩に目を惹かれ、最近色彩の勉強をしていることもあり、そのまま視聴。終盤にかけて、冒頭の独特な色彩が失われているように感じたのは僕だけでしょうか。これは、主人公が何か自分を無理やり飾っていた色を取り除いていくかのように感じます。テーマの1つである異食症については、僕自身メディアを通して以前から存じ上げていました。映画サイトによっては、本作を「ホラー」や「スリラー」に分類していますが、実際症状の克服に悩む方もいるので、この分類については個人的に違和感を感じています…。


【8】 再会の奈良(2020)


本作は日中合作映画であり、日中国交正常化50周年の節目となる今年劇場公開となった作品です。個人的に、陳ばあちゃんが精肉店を訪ねるシーンが印象に残っています。確かこのシーンは公式の予告動画で観ることができたと思います。要チェック。言語を使わず、擬音のみでコミュニケーションを図るその様子は、国境を超えたスタッフ陣による作品だからこその表現だと思います。また、3人が1列になり歩き続けるシーンは、観客に約1時間半の体験を回想させる時間となっていると感じ、ショットと時間の使い方で人に思考させることができることに感心しました。


最後に


大学を卒業しました。

高校生の時に、映画の魅力に惹かれて、合計1,000本以上の作品を鑑賞しました。数多くの映画を通じて、他者の「視線」を体験し、「表現」を知り、「人生」を感じることができたと思います。

19世紀末に起源を持つ映画ですが、時代が進むにつれて、そのあり方も変化しています。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

そして、テクノロジーの発達により、あり方だけでなく、その内容や表現も変化しています。

映画とは何か?

映画批評家のアンドレ・バザンは、次のように述べています。

「映画」とは抽象概念ではないし、本質でもない。それは具体的作品をとおして芸術の域に達したものすべての総体である。

アンドレ・バザン『映画とは何か(上)』


映画は、作り手と観客が共に再定義し続ける存在、と言うことができるのではないでしょうか。

僕自身、映画の考察を投稿し続けること、そして短編の映像を作成することで、この再定義の営みに加わりたいと思います。


*2022年2月号の記事(チェックお願いします!)



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