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【共創】ヲタクが語る、「映画館」の魅力とは何か

今日は映画作品ではなく「映画館」について、1人の映画ファンとして言及したいと思います。

一般社団法人日本映画製作者連盟によれば、2021年12月時点で全国には3,648スクリーンが存在します。

昨今は映画館=シネコン(1つの施設内に複数のスクリーンがある映画館)をイメージする人が多いと思うので、大体1つの映画館にいくつスクリーンがあるかを想像すれば、映画館数は概算できます。

映画の起源は「映画」の定義により諸説ありますが、北野圭介によれば以下のようです。

映画史の慣例にしたがって、1895年にフランスのリュミエール兄弟がパリのグラン・カフェでスクリーンに動く映像を上映したのを映画のはじまりとしたい

北野圭介『ハリウッド100年史講義: 夢の工場から夢の王国へ』


映画館の売上高はコロナ禍で大きく減少し、更にストリーミングサービスの台頭により、人々の鑑賞スタイルはここ数年で大きく変化していますが、今日ふたたび多くの観客が映画館に足を運び、週末は文字通り満席状態です。

これは、映画館にはそこにしか存在しない魅力があることの裏付けではないかと思うのです。

本記事では、上映開始「前」「中」「後」の3つの時間軸に分解して、映画館の魅力を、映画を1,000本以上鑑賞した1人のヲタクの目線で記したいと思います。

ちなみに、僕は普段映画館には1人で行きます。

好きな座席は、スクリーンの中心と目線が並行になる位置で、混雑状況により左右後ろの通路側を選択します。

尚、映画を最高のコンディションで楽しむ(体験価値向上の)ための投資は惜しまないタイプです。

普段モノの消費には関心がないので、つくづく「コト消費」人間だなと思います。


【1】 上映前


日常を過ごす間、仕事など目の前の事象に必死になっている僕にとって、映画館は唯一「空間を俯瞰できる居場所」なのです。

僕は普段、映画館の後方の座席に座ります。

すると、必然的に空間全体が視野に入り、その場を俯瞰することになりますよね。

僕は入場開始と同時に劇場に入りますが、部屋の中にはポップコーンの甘い香りが広がっており、既に何人かが着席しています。

席に座ると、次々と人が入場して来て。

その中には、中年の夫婦や親子、友達、カップル、僕のようなお一人様など、色々な人がいて、空間は多様性に満ちています。

きっと、1人1人様々な期待をして、映画館に来たのでしょう。

ある人は半年待った映画の上映を心待ちにしていれば、ある人は初デートでドキドキしていたり、ある人は久しぶりに子供と外出してワクワクしているかもしれません。

映画上映とは、観客の存在により成り立つ一種の「共創的な営み」である、と僕は考えています。

例えば、映画で感動し涙する時、その感情は映画の内容によるものであることは勿論ですが、周囲の観客が鼻をすする音など、他者がもたらすものでもあります。

つまり、映画を映画館で鑑賞する、という行為においては「他者(=観客)」の存在が重要なのです。

観る映画は同じでも、一緒に観る観客が全員同じであることは恐らく二度となく、映画館で鑑賞するという体験には再現不可能性がある、と言うことができます。

毎度「今日はこの方々と映画を鑑賞するんだな」と思う頃、上映が始まります。


【2】 上映中


映画館における映画鑑賞は、観客席で観る時点で明らかに客観的な行為であると同時に、体験(感覚)としては主観的であることが、ポイントだと思います。

つまり、体験は鑑賞であると同時に、巨大なスクリーンと暗く涼しいあの空間により、スクリーンの中の世界は観客の視界を覆い、両者は融合していくのです。

映像を撮影するカメラのレンズを人間の「目」だと仮定すると、ある意味僕たち観客は、スクリーンの中の世界を直接的に観ていると言えます。

僕は批評家ではなく1人の映画ファンなので、プロの批評家達が「主観と客観」について、どのようなマインドで映画を鑑賞するのか、是非機会があれば聞いてみたいと思います。

また、ストリーミングサービスと映画館の決定的な違いは、この融合による「没入感」だと思います。

確かに、ストリーミングサービスは非常に便利で、僕自身よく利用します。

ただ、どちらが良くてどちらが悪いということではなく、映画を観るという同じ体験においても、その性質は異なります。

ストリーミングサービスの良さが、好きな時間に、好きな作品を、好きなだけ観ることができる「手軽さ」なのであれば、「映像への没入感」の観点ではやはり映画館に分があります。


【3】 上映後


僕は、映画館を出た後の時間が好きです。

特に、映画が16時頃に始まり、映画館を出た頃には辺りが暗くなっているのがベストです。1人で行くレイトショーも好きですけどね。

中でも、僕が好きなのはミニシアターを出た後の時間。

昨今のシネコンの多くは、大型商業施設内に建設されることが多く、確かにそれ自体は便利で、商業的にも理にかなっていると思います。

一方で、ミニシアターは商業施設と独立していることが多く、僕は個人的にこちらの方が好きです。

なぜなら、鑑賞後はゆっくりサントラを聴いて、散歩がしたいのです。

まだその映画の中にいて、すぐ現実には戻りたくないのです。良い映画を観た後は尚更ね。

『花束みたいな恋をした』の八谷絹(きぬ)の言葉を借りれば、「まだ上書きしないで(中略)余韻の中にいたいんだよ」です。

これも、映画館独特の没入体験によって得ることのできる感覚と言うことができるのではないでしょうか。

ちなみに、僕は全国ほぼ全てのミニシアターをGoogleマップに登録しています。

ミニシアターについては、以下の書籍『そして映画館はつづく あの劇場で見た映画はなぜ忘れられないのだろう』がおすすめです。


各劇場のオーナーや配給関係者が、「映画館」の歴史や意味について語る本です。


最後に


22歳の今、映画館の魅力を改めて言語化することができて良かったと思います。

「映画館の魅力は?」と聞かれると、どうしても鑑賞する間に着目しますが、上映の前、中、後の「体験の流れ」で捉えると、自分でこれまで気づかなかった映画館の魅力に触れることができました。

以上、先日平日夜に映画館を訪れた際、ふと思って書いた記事でした。


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