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At Sundown (When Love Is Calling Me Home)

「アット・サンダウン At Sundown」は、ウォルター・ドナルドソン (Walter Donaldson)が1927年に作曲したフォックストロットのスタイルのリズムの曲で、ジャズスタンダード。「愛が私を家に呼ぶとき When Love Is Calling Me Home」という副題がついているをはじめて知った。

作曲者のウォルター・ドナルドソンもまた同世代のほかの作曲家と同じように多作な人である。短めのフレーズが印象的なように思う。歌詞も情緒があって、メロディが短いからこそ映えるように思う。「アット・サンダウン」の歌詞も美しくて、内容は「夕暮れ(sundown)には家に帰って愛を持ち寄ろう」というもの。最初の「 そよ風も夕暮れには愛のため息をつく。鳥たちも夕暮れには羽を休めるのさ。」というフレーズがとくに好き。わたしとしてはリズムギターの名手たちが録音している曲という印象がある。

録音

いろんな録音があるんだけどさしあたりリズムギターの名手が残した録音を。
Manny Klein & His Orchestra (NY February 22, 1946)
Manny Klein (Trumpet); Babe Russin (Tenor Saxophone); Skitch Henderson (Piano); George Van Eps (Guitar); Artie Shapiro (Bass); Jackie Mills (Drum)
マニー・クラインのバンドの録音。インスト。ここでは歯切れのよいリズム・ギターだけではなくコード・ソロも聴くことができる。素晴らしい…。

Steve Jordan (Virginia May 14, 1972)
Steve Jordan (Guitar); Billy Goodall (Bass)
リズム・ギターの名手スティーブ・ジョーダンとビリー・グッダルのデュオ。ここで聴けるギターはとんでもなく気持ちがいいですな。名演!

補論【リズム・ギターの名手たち[1]】

1930年代1940年代のジャズ界においてはギターはリズム楽器として極めて重要な位置を占めており、数々の名手たちが誕生した。フレディ・グリーン、ディック・マクドノフ、カール・クレス、エディ・コンドン、アル・ケイシーなど枚挙にいとまがない。ここではリズム・ギターがどう受け継がれてきたのかを少しだけ見てみる。といっても本当に少しだけ。

最初にスイング時代に有名になったギタリストの一人としてエディ・ラング(Eddie Lang)をあげることができるだろう。ジョー・ベヌーティ(Joe Venuti)とのコンビは、いまでもそのスタイルの金字塔となっている。ラングはそのスタイルからさまざまに影響を与えた人物。ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)にも影響を与え、またシカゴ・スタイルやカンザスシティ・スタイルのジャズにおけるリズム・ギターに対するラングの影響は計り知れない。

ジョージ・ヴァン・エプス(George Van Eps)は、父親のフレッド・ヴァン・エプス(Fred van Eps)の影響からバンジョーも弾いていた。かつてジャズ評論家のリチャード・ハドック(1985)はラングの演奏を「これほどの技量を持つギター奏者に馴染みがなかった …[略]…表情の豊かな応答ができ、バンジョーをはるかにしのぐ柔軟性がある…[略]…バンジョー弾きのなかには、本気でギターの勉強をはじめる者まで出た」と評している(p. 267)。まさにヴァン・エプスも、ラングの演奏をラジオで聴き、バンジョーからギターに転向したうちの一人だ。それから少し経ち、13歳の時にはすでにラジオでギターの仕事をするようになる。多くのセッションに参加し、それぞれの録音で素晴らしいリズム・ギターの録音を残している。こうしたジョージ・ヴァン・エプスのセッションでの貢献は、かれをシカゴ・スタイルのジャズを代表するリズム・ギターの名手として名声を与える。

同時にジョージ・ヴァン・エプスはリズム・ギターのインストラクターとしても名高い。彼が教えたギタリストの一人にアラン・リュースがいる。リュースは1935年にジョージ・ヴァン・エプスの後任としてベニー・グッドマン楽団に在籍。2拍目と4拍目を強調するような通常のスタイルではなく、4つの拍でしっかりとリズムを弾いてバンドを支えている。このスタイルがシカゴ・スタイルの特徴となっていく。またこの時期にリュースはリズム・ギターだけではなくとくにコードでメロディを奏でるようなスタイルを確立している。

そんなアラン・リュースからギターを教わったのがスティーブ・ジョーダン(Steve Jordan)である。もちろんドラマーの方ではなくギタリストの方。ちなみにフレディ・グリーンもアラン・リュースからギターを教わっている。実際にジョーダンは、アラン・リュースやジョージ・ヴァン・エプスから影響を受けた演奏をしていて、4つの拍でしっかりとリズムを刻む演奏からコード・メロディまで幅広く演奏している。

そういったリズム・ギターの系譜にはもちろんバッキー・ピザレリ(Bucky Pizzarelli)がいる。もうどこから説明すればいいかわからないがエディ・ラングから数えたら、第三世代と言えるだろう。ピザレリが使用した7弦ギターはまさにかつてジョージ・ヴァン・エプスが開発したものだったし、かれの演奏もそうした影響が伺える(バッキー・ピザレリのスタイルは、さらにハワード・アルデンやジョン・ピザレリに受け継がれさらに発展する)。

現在活動しているジョナサン・スタウト(Jonathan Stout)は、フレディ・グリーンよりもアラン・リュースから影響を受けている。アラン・リュース風のコード・メロディはもちろん、スイング時代の4つの拍でしっかりとリズムを刻む演奏も行なっている。同時にスタウトはジャンゴやチャーリー・クリスチャン(Charlie Christian)からも大きく影響受けている。

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しゅみお
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